のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『クリムト』

2006-12-11 | 映画
11/15の続きといえば続きでございます。

ええ、ええ、
観てまいりましたよ、シーレ。
じゃなくて『クリムト』

キンスキーJr. 出番はほんの少しなれど、好演でございましたよ。
映画の中のエゴン・シーレは
気取った神経質な身振りの、しかしどこか無邪気で子供っぽい雰囲気の青年として描かれておりました。
実際のシーレがどんな立ち居振る舞いをする人物であったのか、のろには知る由もございません。
しかしそもそも本作は、史実に基づいたいわゆる伝記映画では 全 然 ございませんで
19世紀末の画家クリムトというキャラクターに寄託した幻想小説のような趣の映画でございますから
登場人物に求められるのは実際のグスタフ・クリムトやエゴン・シーレという人物との整合性よりも
むしろいかに「クリムト っ ぽ い 」か、「シーレ っ ぽ い 」か、ということではないでしょうか。
そしてキンスキーJr.の「シーレ っ ぽ さ」は大いに及第点でございましたよ。






無遠慮な凝視と痙攣的な手つき。
全身骨格標本や病室の大きな鏡に、魅入られたように近づいていくさまなども、よろしうございました。
ちと、作りすぎな感は無いでもございませんがね。

ニコライ君、
異母姉ナスターシャ・キンスキー同様にたくさん光を集める印象的な瞳と
大づくりな顔のわりにはえらく華奢な手の持ち主でございます。
こういう表情豊かな身体パーツをフルに生かして、ホアキン・フェニックスに続く「ひとくせある若手」として
今後大いに活躍していただきたいものです。
がんばれ。


えっ
映画はどうだったのかって。
まあ
のろは シーレあるいはキンスキーJr. という目的がございましたから
97分間がんばって座っておりましたけれども。

けれ ども。


以上。




で、終わろうかとも思いましたが
ちと語らせていただきますと。

まあ その
のろには合わなかった、ということなんでございましょう。

内田百鬼園好きでテリー・ギリアム好きでシュヴァンクマイエル好きであるのろにとっては
「現実と夢の交錯/虚と実の交錯」という、映画のテーマそれ自体は(おそらくそれがテーマだったと思うのですが)
決して馴染みの浅いものではございません。むしろ愛好するものでございます。
しかし本作はその交錯の度合いが激しすぎたのか、はたまた監督の手法にのろが馴染めなかったからか
ついて行くことができませんでした。
上映開始からほどなくして、のろはすっかり監督から置いてけぼりをくったような心地になっておりました。

いやに細かいカット割りやぐるぐる回るカメラワークなど
視覚的にもつらいものがございました。
こうした見せ方をはじめ、演出における凝り方が
のろには残念ながら、ことごとく姑息で収まりの悪いものに感じられました。
衣装や調度はいたって豪奢で、画面の色彩も美しく、かつ
マルコビッチという、ヒーロー意外は何やってもはまり役な名優を迎えているにもかかわらず
映画全体としては奇妙に安っぽい印象を醸し出してしまっているのは
こうした収まりの悪い演出が故ではないかしらん と思います次第。

まあ
監督の意図を汲み取る感性がのろに無かったというだけのことやもしれません。
貴方にはひょっとしたら、お気に入りの一品になるやもしれません。
とは申せ
やっぱり1800円払うことはお薦めいたしかねます、ワタクシとしては。





最新の画像もっと見る

コメントを投稿