のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『最後のジェダイ』

2018-05-06 | 映画
なぜ唐突に『最後のジェダイ』なのかと申しますと、半年前に書きかけて放置していた記事をスター・ウォーズの日(5/4)に合わせてUPしようと思ったもののイラストが間に合わなくて今日になってしまった、というだけの話でございます。


さておき
SWに関してはルーク三部作至上主義者をもって自認するのろさん、メナス→攻撃→復讐→覚醒と鑑賞して来てその立場はますます固まる一方だったんでございますが、『ローグ・ワン』が思いのほかよかったものですから、つい新たなる希望を抱いてしまったわけです。
そんなわけで、期待と不安を胸に『スター・ウォーズ エピソードVIII 最後のジェダイ』を観てまいりました。

「うん…まあ…許そう」というのが鑑賞直後の感想でございました。
少なくとも前作『フォースの覚醒』よりはよかったです。ワタクシの中では『覚醒』が全シリーズ中最低点でございましたので、相対的に本作の評価が甘めになっているかもしれませんけれども。
古い酒の風味をなるべく損なわずに新しい革袋に入れようとする製作陣の頑張りは伝わってまいりました。また、ストーリーのためにキャラクターが犠牲になった点がないわけではないにせよ、酷評するほどのものではなかったと思います。
ただ、もはやディズニー傘下のいち商品となったこのフランチャイズに、センス・オブ・ワンダーを期待すること自体が間違っているのかもしれないと思ったのも確かでございます。

↓↓↓↓↓↓ 以下、ネタバレ話 ↓↓↓↓↓↓







よろしかった点とよろしくなかった点を挙げていきますと。

●よろしかった点

・レイアの衣装の改善
前作と違って体型を隠すストンとしたシルエットに、指導者らしい威厳と気品のあるデザイン。むしろなぜ始めからこういうのにしなかったのか。

・デス・スターが出てこない
ホッとしました。

・反乱軍の内紛
今までになかった展開で、新鮮に感じました。人命第一とするレイアの言い分がもっともである一方、危険をおかした攻撃を仕掛けて大貢献したのに評価されないポーの苛立ちもわかる。大局的には仲間なのに、戦術面で真っ向からぶつかり合ってしまうというもどかしさ。ひとつの行為が「崇高な犠牲」なのか「取り返しのつかない損失」なのか。いっそこれを中心に据えて話を組み立ててくれてもよかったのに。

・フィンとローズの冒険
レヴューを見るとけっこう不評のようですが、私は終始楽しかったです。2人とも地味ながらも素朴で好感の持てるキャラクターですし、胡散臭さ満点のデルトロもよかった。アウトローの存在って大事ですなあ。また後述しますように、細かいどんでん返しが多くて登場人物をいまいち信用しきれな所のある本作において、この2人の誠意は疑う余地のないものであり、キャラに肩入れしながら観たいワタクシにとっては一種の安心要素でございました。
ただ、最後の告白とキスは蛇足であったと思います。いくら何でも唐突すぎました。ローズがフィンのことを英雄だと思ってとても憧れていた、という所をもっとしっかり描いてくれていたら、この展開にもそれなりに感慨があったかもしれませんが。

・ヨーダが元気そうで何より
フランク・オズも元気そうで何より。

・マズ・カナタのタフババァっぷり
前作から割と好きなキャラクター。

・C3POも元気そうで何より
いかなる時も決して空気を読もうとしない彼のことを、ワタクシは心から愛しております。もっとも今回に限ってはルークの目配せに何事か感じ取って口をつぐんでいたのかもしれませんね。ルークに代わって言っておきましょう、「ありがとう3PO」。
なおこちら↓の記事によると、この目配せシーンは当初脚本になかっく、ルークはただ3POの前を通り過ぎるだけだったのだそうです。「3POは長年の相棒なのに(無視するなんておかしい)」というマーク・ハミルの指摘により、目配せが追加されたのだとか。GJでございます。
Mark Hamill insisted on changing a moment in Last Jedi

・終盤の盛り上がり
とりわけ反乱軍が基地に追い詰められてからの攻防でございます。なにせ絶体絶命感がございましたし、銀河のあっちこっちに広げた風呂敷をきちんと畳みにかかっているのもよかった。最新兵器にオンボロ戦闘機で立ち向かうという展開も熱い。それだけに主力の兵器に一矢も報いることができなかったのはいささか残念ではありました。
でも正直申しますとね、集中砲火の雨あられの跡にルークが立っているのを見た時、この映画の全てを許す気になってしまいました。のろさんもチョロいもんだ。ついでに白状しますと、R2D2がルークにあの「助けて、オビ=ワン・ケノービ…」のホログラムを見せた時は、あざといと思いながらもホロリと来てしまいました。ああ、チョロいぜ。
ルークの最期については百点満点大絶賛とは言えませんけれども、まあ、あれでよかったかなと。何かにつけて純朴でくそまじめだったルークが最後の最後でトリッキーな振る舞いをして去っていくというのも、ヨーダの教えの賜物かもしれませんて。また振り返ってみると「ヒーローの不在」というのが本作のテーマのひとつであったようですから、ルークの退場の仕方もこのテーマに即して作られたのでございましょう。

全体的に、新旧のキャラクターを共に真っ当に扱っていると感じました。前作と違って「何でそーなるの??」と思う箇所がほとんどありませんでしたから。観る側がこのシリーズのキャラ設定に慣れて来たというのもあるかもしれませんけれどね。頑張りすぎて近視眼的になってしまうレイは、評議会への不満をつのらせるアナキンやすぐイラつきがちだったルークのように「未熟な天才」の系譜を受け継いでおりますし、ポー&フィンもそれぞれ違った方向に無鉄砲ながらも成長の兆しを見せ、これからの展開が期待される所でございます。
例の問題児に関しては、のちほど。


●よく分からなかった点

・レイの出生の謎
結局「たまたま天才だった」ってことでいいんでしょうかね。誰の血筋ってわけでもなく。カイロ・レンが「お前の両親は無だ」みたいなことを言っておりましたけれども、それが事実なのか、あるいはレイの心を挫くためにテキトーなことを言っただけなのか判然としませんでした。

・スノークとは何だったのか
いやほんとに、何だったのか

・洞穴シーン
『帝国の逆襲』のオマージュでしょうか。でもよく分かりませんでした。あの洞穴の機能も、何故レイがあそこに行けば両親のことが分かると思ったのかも。


●よろしくなかった点

・小動物がでしゃばりすぎ
ポーグってんですか、あの鳥みたいの。そりゃ可愛いことは可愛いんですけれども、イウォークと違って話の筋に絡んでくるわけでもないのにやたらと画面の中央に出張ってくるので、うるさかったです。何でこんなに推してくるんだろうと思いきや、ショップにグッズがずらーりと。ああはいはい。

・演出が所々ださい
レイが「暖かさ…冷たさ…」とフォースの感覚を挙げていく時にいちいち島の自然風景を挟んでくるのですとか、レイとカイロ・レンの遠隔会話の描き方ですとか。あとスノークの司令室の「ジャジャーン!悪者!」みたいなデザイン、もう少し何とかならなかったのでしょうか。

・アクバー提督
ええっ、あんな最期?!中の人(声)の逝去に合わせたのかもしれませんけれども、古参のキャラクターをあんなにもあっさりと退場させてしまっていいのでしょうか。せめて散り際の台詞くらいは欲しかった。この点についてはHISHEの「こうだったらよかったのに」版の方がずっとよろしいと思います。いや本気で。

How Star Wars The Last Jedi Should Have Ended


・細かいどんでん返しが多すぎる
クリストファー・ノーランみたいのやりたい!という製作陣の熱い想いは伝わって来ましたけれども。Aと思いきや実はB、ところがどっこいCだった!といった展開がちょこまかと続くので、しまいにはもういいから普通に進めてくれよ、という気分になりました。また、登場人物を信用しきれない展開というのはサスペンス映画ならいいと思いますけれども、スター・ウォーズではあんまりやってほしくないことではありました。とりわけ、ルークに関しては。

・ファズマ弱すぎ
この人、いる必要あるんでしょうか?
今までのストーリーでファズマが果たして来た役割の全てを、モブキャラのそれに置き換えても何ら支障はないような気がするのですが。前作でも本作でも、彼女が特別な地位にまで上り詰めた背景を匂わせるものが全く何一つ描かれておりませんし。あのハックス・ザ・ヘタレ将軍ですらその必要性を最高指導者スノーク自ら説明してくれているというのに、ですよ。メタリックな甲冑でいかにも凄そうないでたちにしては、とりわけ指導力や統率力に優れているふうでもありませんし、前作では本拠地の真っ只中にいながら、たった数人の敵に脅されただけで抵抗も見せずあっさりシールドを解除してしまう体たらく。かといって白兵戦でとんでもなく強いのかといえばそうでもないどころか、防具のない一介のストームトルーパー(フィン)にすら勝てないことが本作ではっきりしてしまいました。目下のところ、何のためにいるのか分からない登場人物ナンバーワンでございます。ほんとの話、単に「ブライエニー(ゲーム・オブ・スローンズ)の人が出てる」という話題作りのためだけに動員されたキャラなんじゃないでしょうかね。

・同じことの繰り返しを予感させるエンディング
IMDbのレヴュー欄で『覚醒』に怒りと共に☆1を付けたファンは大勢いらっしゃいます。その中の1人がこんなことを書いておいででした。「もと反乱軍が今では支配者側で、もと帝国軍が反乱する側になってる、みたいな話の方がよかったのに。これじぇ同じことの繰り返し」
そうなのです。そうなのですよ。「シスの暗黒卿を頂く強大な悪の帝国」対「ジェダイの騎士に率いられた善なる反乱軍」という構図が変わらない以上、キャストが若返ろうがデス・スターがグレードアップしようが、結局ルーク3部作の焼き直しにならざるを得ないではございませんか。ですからこれは本作のよくない点というよりも、むしろあんなふうに話を始めてしまった前作の罪ではあります。それにしたって、もう少し何とかならなかったのかしらん。所々で旧作からの決別を感じさせる部分があっただけに、最後の反乱軍の生き残り勢揃いショットで「安心して!これからもおーんなじことやるよー!」と宣言されたような気分になりました。


で、問題のあの人。
ええ、前作でベイダーのコスプレイヤーとして華々しく登場したカイロ・レン君なんですが。本作を見てある意味すっきりいたしました。「ああ、こいつはこういう路線で行くんだな」というある種の諦めがついたと申しましょうか。



そう、見方を変えればいいのです、きっと。ワタクシがアナキン三部作を好きになれない理由はひとえに主人公たるアナキンの堪え難いうっとうしさゆえなわけですが、あれとても「かたくなな師匠とポッと出のガキンチョに振り回されるヤング・オビワンの冒険」として鑑賞すれば、結構見られるような気がしますもの。
というわけでワタクシ、どうやら「レイ三部作」と呼ばれるらしいこのシリーズのことは「ドジっ子シス見習いカイロ・レンのわくわくはらはら失敗日記」として鑑賞することにしました。奴は悪役としての素質はゼロに等しいですが、独り立ちして頑張っているのに挫折してばかりのぼんぼんとしてみれば、まあまあ悪くないキャラでございます。むしろあまりのダメさに応援してやりたくなるほど。その点、何でも割と簡単にクリアしてしまうレイより主人公向きであるとすら言えるではございませんか。

それにしてもスノークのおじいさんはあっさりと天に召されておしまいんなりましたし、カイロ君はあのとおりのヘタレでしょう。次作ではもっとちゃんとした悪役を立てていただきたいものですけれど、どうなるこってしょうねえ。
どうです、実は生きてたボバ・フェットが全ジェダイへの復讐を胸に登場とか!笑
あるいは、実はィリス・オランの身体を乗っ取った後も脳移植を繰り返して生きながらえ、ついには裏社会のドンとして君臨するに至ったビブ・フォーチュナが全ての黒幕だったとか!!
といってもあの人けっこう間が抜けているし、根が小悪党で意外と極悪なことはできないたちみたいだから無理だろうなあ。絶対ツメの甘さで失敗して死んじゃうタイプ。だがそこがいい。

冗談はさておき、次作の監督はJJエイブラムスと決まっているようですから、もとより悪役には期待できません。フィリップ・シーモア・ホフマンやベネディクト・カンバーバッチを迎えてすら、せいぜいあの程度の悪役しか描けなかったJJさんですもの。きと悪役の影が薄くてオマージュまみれで一本調子で、とはいえ無難でソツがなくてアクション満載でそこそこ楽しめる作品が出来上がって、全世界で大ヒット!グッズばか売れ!続編決定!ってことになるんだろうなあと、そして『覚醒』や『最後』に何やかやと文句を言っていたオールドファンたちも半ば義務のように劇場に足を運んで、うっかりグッズをかっちゃったりするんだろうなあと今から予想がつきます。そしてそういうファンがいるかぎり、ディズニー様は遥か彼方の銀河系からあの手この手でミルクを絞り続けるんだろうなあと、うっかり買ってしまった800円もするちゃちなボールペン(ストームトルーパーのついてるやつ)を横目に思うのでございました。

ちと横道に逸れてしまいましたが、冒頭に申しましたように、本作は色々と不満な点はあるにせよ、決してできの悪い作品ではないと思いますし、むしろ前作であれだけ酷い条件を並べられた所からよく頑張った方だと思います。「フォースは魔法じゃない!」とお怒りの方もいらっしゃるようですが、旧作から十分魔法だったと思いますよ。手を触れることなく相手の首を絞め、念力だけで宇宙船を持ち上げ、手から稲妻ビームを放ち、他人の心を操り、テレパシーで通信しって魔法でいいでしょうよ、もう。

それにね、キャストのインタヴューやら、グーグルでよく検索されているキーワードに基づいて質問に答えて行くオモシロ企画のクリップなど、本作に合わせて公開されたYoutube上の様々な動画で大いに楽しませて頂きましたので、全てをひっくるめて良しとしようと思います。とりわけマーク・ハミルのユーモアとサービス精神溢れる受け答えが最高すぎて。さすがはジョーカーさんの中の人ですよ。こういう類の動画は次作でも、またハン・ソロのスピンオフでも沢山出回ることになるのでしょうけれども、そこにマーク・ハミルが出てくることはないと思うと寂しいですね。

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1 コメント

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Unknown (報告)
2023-09-08 07:49:54
SWのファンサイトやってます。零細ですし
少数の方達と楽しくやりたい、そういう運営なので此方で宣伝する気は到底ありません。
結構な頻度で長文で「何様な文章だ」と抗議的な文で貴方様の此方のブログURLが貼られたり
「読んで下さい」と恐らく管理人成り済ましで
URLが貼られて非常に参っております、今迄黙っておく気でしたが流石に今のネットマナーが酷い為すみませんがブログに無断転載禁止、関係は一切無い等の一文を注意書きして頂け無いでしょうか。
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