のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

怪優忌

2006-11-23 | 映画
キンスキーの命日ですって。
死ぬんですね、あんな人も。
ああ、のろがキンスキーって言ったらクラウス・キンスキーのことでございますよ、もちろん。

生涯で200本以上の映画に出演したとも言われるキンスキーですが
のろが観ましたのは、その内の9本だけでございます。

殺しが静かにやって来る (リンクできませんでしたが ↓ こちらも見てね)
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/06/ae6e7f1b63dbd61bc49362e53c9fdf0f.jpg


クロールスペース
B級ホラー映画でござます。最初から最後までB級テイスト満載(笑
ひとりロシアンルーレットを繰り返すキンスキーがナイスでございます。
最低映画館~クロールスペース(CRAWLSPACE)
クロールスペース/きまぐれムービーシアター第144回


上海異人娼館 チャイナ・ドール 
寺山修司監督作品でございます。
ぼかしがいっぱい入ります。
猥雑で哀切な詩情はよろしいんでございますが、ご家族でのご鑑賞は決してお勧めいたしません。

メインはヘルツォークがらみの6作品。

アギーレ・神の怒り
フィツカラルド
ヴォイツェク
ノスフェラトゥ
コブラ・ヴェルデ
そして
キンスキー、我が最愛の敵






『キンスキー~』は、俳優の死後にヘルツォーク監督が製作したドキュメンタリーでございます。
本作のパンフには翻訳家の柳下毅一郎氏が、キンスキーのキンスキーたるエッセンスを
ぎうっと凝縮して見せたような名文を寄せておいでです。
ちと ご紹介いたしますと。

天上天下唯我独尊、かつて陽の下を歩いた映画俳優の中で、クラウス・キンスキーほど傲慢で、乱暴で、卑怯で、自己顕示欲が強く、人を人とも思わぬものはいない。男はぶちのめし、女は押し倒す。自分が画面の中央に映っていないカットは存在しないも同じ。当然監督の言うことなど聞きもしない。世界でいちばん偉いのはクラウス・キンスキーであり、その名は神に等しいものなのだから。金さえ積まれればどこへでも行くクラウス・キンスキーは世界中を放浪して大量に敵をこしらえ、作るのと同じ数だけ、映画を破壊し、破壊王キンスキーとして誰もが恐れるようになったのである。・・・(中略)・・・ヘルツォークとキンスキー。映画史上もっとも強烈なエゴを持つ二人は、最強コンビとして五本の映画でタッグを組むが、それは文字通り取っ組み合いの格闘でもあった。恐るべき戦いをヘルツォークの側から描いたのが『キンスキー、我が最愛の敵』である。・・・キンスキーは乱闘シーンでエキストラの頭に穴を開け、なんの理由もなくテントに向けて銃をぶっぱなす。あるいは舞台に立つと満場の観客を全て敵にまわし自分がキリストだと言い放つ。だが、その姿はどう見ても救世主ではなく悪魔のものだ。

ちなみに柳下氏は『解凍!ヘルツォーク』にも、力強くテンポのよい文体のキンスキー讃を寄せておいでです。

のろのお宝でありますこのパンフ、映画の中で監督自身が語るエピソードも載せられております。

監督談:
『アギーレ 神の怒り』の撮影作業が終わる頃、インディオの人たちが私のために、キンスキーを殺そうかと申し出て来たことがありました。その時、私は「とんでもない。私にはまだ撮影に彼が必要なんだ。彼を私に残してほしい」と、その申し出を断ったのですが、彼らは真剣でした。もし、私が望んだら、彼らはキンスキーを殺していたでしょう

私とキンスキーは一緒にいると危険でした。私はただ怒りっぽかっただけで正気だったと思いますが、彼を急襲し、家に放火することを本気で考えたことがあります。当時、彼の飼っていたシェパードがたいへん用心深かったお陰で、実現できませんでしたが。そう言いながら、私達はしかるべき瞬間には、いつもお互いを探し求めていたのです

私は白髪の1本、1本にキンスキーと名付けています


キンスキーとヘルツォークについてはこちらさま ↓ もご覧下さい。
写真も沢山。
━ヴェルナー・ヘルツォークの世界 - 『梁塵秘抄』 または ”わしふぃーるど” - 楽天ブログ(Blog)


『キンスキー~』が公開された折、関西のミニシアターではヘルツォーク作品の特集上映が催されました。
題して「ヘルツォークに狂う」。
その時のチラシが ↓ これです。



実に素晴らしいチラシでございますね。
枕の下に入れたいくらいです。
マリオ髭をたくわえたの監督の首を、今まさに切り落とさんとしているのはキンスキーです、もちろん。


そんなわけで
殺しても死にそうにないキンスキーの、今日は命日です。

お近づきになりたいかと問われれば
ウ~ン と深く考え込まざるをえませんが
この人もういないのか、と思うと
なんとも寂しうございます。


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