のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

1月24日

2011-01-24 | KLAUS NOMI
今年のNHKニューイヤーオペラコンサートでは「あなたの声に我が心は開く」を聞くことができました。
黒豆とかまぼこでボトル598円のワインを飲みながらうすぼんやりと番組を見ていたのろではございましたが、この曲が来た時には思わずTVの前に正座いたしましたとも。
しかしあれでござますね、やっぱり最後は轟音とピコピコ電子音の入り交じったフェードアウトで締めくくられないと何かもの足りませんね。
何のこっちゃとお思いの方はこちらをご覧下さい。

Klaus Nomi on TV Party


というわけで

本日は
クラウス・ノミの誕生日でございます。

話はまたちと遡りますが、去年の年末美術館「えき」京都で、生誕100年を迎えたキューピーちゃんの歴史と展開を辿る展覧会誕生100年 ローズオニール キューピー展 というものが開催されておりました。今ではマヨネーズとご当地グッズの販促が専門職みたいなキューピーちゃんの様々な側面を見ることができまして、なかなか面白い展示でございました。
ピエロやカウボーイ、水兵さんなどいろんな衣装を着たキューピー人形も展示されておりまして、アクリルケースの中にずらりと並んだ面々を眺めながら、ワタクシは思ったわけです。
ここには何としてもノミキューピーがいるべきであると。
つまり、こういうのが。



まあ、実物のかわいらしさには到底かないませんけどね。

そも、ヤツほどキャラクター化しやすい人もいないではございませんか。スリー・ポイント・ヘアに黒いクチビル、そして巨大なボウタイさえあれば、いや、ボウタイすら必須ではなく、あのヘアスタイルとクチビルさえあれば、それだけでもうまごうかたなきノミの出来上がりでございます。ちょうど長いもみあげとびらびら付きのジャンプスーツさえ備えていれば、それが猫であろうと熊であろうと亀であろうと「エルヴィス・プレスリーの真似をしている◯◯」になってしまうように。
しかも「レトロ風味のSF」というしっかりしたコンセプトが基本にあるので、そのベースの上でいろいろ展開することが可能でございます。そう、オペラにロックにテクノポップにマレーネ・ディートリッヒの持ち歌と、ジャンルも曲調もあんなにもバラバラな曲を収めたアルバムに統一感を待たせることができたのは、「遠い星からやって来た小さな宇宙人NOMI」というコンセプトと、それを演じきるヤツの存在があってこそでございましょう。

やはり映画『ノミ・ソング』でマン・パリッシュらが語っているように、メジャーデビュー以降、そうしたもともとのコンセプトを顧みない売り出し方をされたというのはまことに残念なことでございます。アングラ時代のライブ映像に見られるようなレトロSF路線で展開することができていたら、今も昔もアーティストとしてもっと真面目に評価されたのではないかしらん。

ところで先日劇場にて往年のフランス映画『地下鉄のザジ』を鑑賞したのでございますが、ノミが生前、他のどの国よりもフランスにおいて高く評価されたということに、この映画を見ていて何となく納得がいきました。画面いっぱいに繰り広げられる、わざとのわざとらしさと申しましょうか、型にのっとりつつそれを極端に誇張して崩す、という大真面目なおふざけ精神は、ノミ的スピリットに大いに通じる所があると思われるからでございます。

でも案外、本人に聞いてみたら「アーティストとして見られようとゲテモノとして見られようと、楽しんでもらえるならそれでいいよ」と言ったかもしれませんね。例のはにかんだ笑顔を見せながら。

そんなわけで
お誕生日おめでとう、クラウス・ノミ。




ところで本当は↑のようなキューピーを、実際に作りたかったのですよ。しかしノーマルなキューピー人形をどこで入手したものかわからぬままに今日を迎えてしまいました。キューピーノミを作りたい作りたいと思っていたら、夢にまでキューピー人形が出てまいりました。
いや、出て来てほしいのはそっちじゃなくて。



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8 コメント

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はじめまして (Grün)
2011-02-19 16:36:02
私もKlausNomi・美術品...大好物です。TV Partyの動画、たまらなく美しいですね。就寝前はTV Partyが日課です。あの少年のような笑顔と細い身体とキッチリしたコーディネート。他のNOMI動画には無い魅力がたまらないです。
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ようこそ (のろ)
2011-02-19 22:28:27
いらっさいませ、Grünさま。
お名前から察するにドイツ語に造詣のあるかたでしょうか。ワタクシはヤツとの出会いを契機に、5年前からぼちぼち勉強中の身です。

ノミのことを誉めてくだすっている文章を読むとたちまち幸せになってしまう当方、にこにこ顔でがくがく頷きながらコメントを読ませていただきました。
この動画はヤツのパフォーマーとしての顔と半プライベートの顔がひとつづきに収められているという点で、たいへん貴重なものだと思います。その「見かけとのギャップ」という単なる奇矯さを軽々と跳び越える、真摯にして澄んだ歌声も、また誇らしさと恥じらいのないまぜになった、きらきらとはにかんだ笑顔も、それぞれの方向において、本当に、たまらなく美しい。

先ごろ伝記の日本語版が発売された指揮者のカルロス・クライバーなんかもそうですけれども、いつまでも少年のような雰囲気を持った人というのは、時々存在するものなのでしょうね。実際に会ってみたかった、いや、遠目に見るだけでも、とにかく同じ空気の中に身を置いてみたかったと思うことしきりです。
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こんにちは (Grün)
2011-02-23 15:03:23
お返事ありがとうございます。

私は好きな音楽家さん・画家さんにドイツ語圏の人達が多い為ドイツ語には敬意...憧れのようなものがあります。
KlausNomiはその中でも特別な存在で知りたい事が沢山あるのですが日本では情報も商品購入も限界がありますね。。
ですので、のろさまのブルグはとても楽しく有り難く拝見しております。
KlausNomiの美しさが途絶えませんよう今後もご発信して下さいましたら幸いでございます。
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Unknown (のろ)
2011-02-23 23:55:46
>好きな音楽家さん・画家さんにドイツ語圏の人達が多い為
ワタクシもそんな所です。またワタクシの場合、自分自身が甚だだらけた性格のため、ピシッとしたイメージのドイツに憧れるという傾向もあり。
またいわゆるドイツ芸術にはグリューネヴァルトやデューラーから,クラフトワークやクラウス・ノミまで「...何でそこまで?」と思わず首をかしげたくなるような独特の生真面目さと徹底性があって面白いなあと思います。(そうしたものを期待する色眼鏡的視線がないとは申せませんが)

ノミについてはワタクシも知りたいことだらけですが、いかんせん四半世紀前に逝ってしまった人のこととて、新情報に出くわすことがなかなかありません。
しかしヤツへのオマージュや派生作品などの周辺情報も、手に入り次第ご紹介させていただこうかと。
最近、ヴィジュアル面でノミに対する敬意をはっきりと表明しているBlitzkidsというバンド(?)に出くわしましたので、詳しいことを調べたのち、またこちらでご紹介させていただきたこうと思っております。
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Unknown (やま)
2011-04-30 10:17:51
こんにちは、いつも拝見させて頂いております。

東京の中野にある「メカノ」というニューウェイブや電子音楽専門店にノミのTシャツが売っておりました事を報告させていただきます。
lighting strikeのPVのノミのイラストがあしらってあるとてもおしゃれなシャツです。もちろん、後ろで傘をくるくる回すノミも書かれております。
しかし、衣装が本家ノミと若干違います。
ほかにもメカノさんの店主の方はkraftwerkのDVDの紹介文を書いてらっしゃるので、kraftwerk関連、とてもすごいです。

ご存知かもしれませんが一応、お知らせさせていただきます。
Tシャツは白と紫です。
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いらっさいませ。 (のろ)
2011-04-30 23:03:08
やま様、コメント&貴重な情報ありがとうございます。

ワタクシ西の方に生息していることもあり、教えていただいたお店のことは全く存じませんでした。電子音楽専門店とは、さすがは東京ですね。さっそくネット調べさせていただいきました。
店主さんは minimum maximum や tour de France 03 にも「神」への知的愛に溢れる文章を寄せていらっしゃるかたですね。minimum~の最後のラルフの挨拶はどう聞いても「ダンケシェン」じゃなくて「アウフ ヴィーダーゼーエン」ですぜ、とつっこみたい所ではありますが、本当の愛情に満ちたライナーノーツって読んで楽しいものですし、たいへん勉強になります。その上こんなお店まで切り盛りしてらっしゃるなんて、氏には大いにリスペクトを捧げねばなりますまい。

ノミの姿があしらわれたTシャツは、ロゴマークだけのものも含めて何種類か見かけたことがありましたが、Lightning~柄のものは初耳でした。傘くるくるノミまでいるとは嬉しいですね。あの白黒・シンメトリーな絵の中で嘘宇宙人が傘くるくる、という、厳粛さと馬鹿馬鹿しさのブレンド具合は実に素晴らしいものですから。
衣装がちょっと違うというのは、肖像権(権利者いるんでしょうか??)を気にしたからでしょうかしらん。
何にしても、ぜひともお目にかかりたいお品ではあります。当方、大型連休とは全く無縁な身ですが、暇を見つけて東京行ったろうかという気になってまいりました。レンブラント展もやってることですし。
しかしノミグッズなのに黒がないとはこれいかに。すでに売れちゃったのでしょうか。きっとそうに違いない。
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Unknown (やま)
2011-07-27 00:02:23
いつかノミTの件を書かせて頂いたものです。
こんにちは!

先日、YouTubeでKlaus Nomi動画を漁っていたところ、このような動画を発見致しました
http://www.youtube.com/watchv=aj7GwjVTArU&feature=related
きっと舞台だろうと思いますが、公開されたところがノルウェー?なところが興味深いと思います。
おそらくノミの歌を若者が演奏などをしながら口パク無しで歌うミュージカルだと思います。
没後30年近くたった歌手(マイナー)のことが未だにこのように広めている若者がいるなんて驚きでございます。

独りよがりな事を書いてしまいお目汚しをお許しください。
それではまた。

P.S歌手の「平沢進」さんが以前YouTubeのコメント欄で「日本のクラウスノミだ」と言われていましたがたしかに色々と共通点を感じます。
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お久しぶりです。 (のろ)
2011-07-27 22:53:37
やま様、こんにちは。
教えてくだすったリンク先ではなぜか「ページが存在しません」と言われてしまったのですが、Klaus Nomi - Angel of Suburbiaというタイトルのこの動画と同じものでしょうか?

http://www.youtube.com/watch?v=aj7GwjVTArU

うーむ、これはいいですね!
ワタクシ基本的には「ファンがノミっぽい格好して歌う」というのを見るのがあまり好きではなく、この動画もサムネイルで見かけた時は、ああまた”なんちゃってノミ”か、とはなからスルーしてしまっておりました。
いやどうしてどうして、これはなかなかのものではありませんか。歌も上手いし、歌い方もかなり似せてくれておりますね。何より、単なる真似ではなく、クラウス・ノミという素材をよく消化した上で彼ら自身のステージを作っている所が素晴らしい。Total Eclipseの所なんか、見ていてちょっと切なくなってしまいましたとも。

よいものを教えてくだすって、ありがとうございました。
この舞台、生で見たいなあ。

平井進さんというのは全然知らないかた...と思ったら、『パプリカ』のサントラ書いた人ですか!いや、あれはよかった。ああいう疾走感のある音楽は大好きです。とりあえずWikipediaの記事を読んでみましたが、なかなか面白いかたのようですね。今後の要チェックリストに加えさせていただきます。
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