のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

藤田嗣治展3

2006-06-16 | 展覧会
6/12の続きでございます。

最後のセクションには、戦後フランスに帰化し、かの地で没するまでの作品と
フジタ自身が作り、使った、身の回りのものものが展示されております。

作品のモチーフはパリの風俗や戯画化された動物、基督教、そして子供たち。
画面は再び、華麗な描線と淡彩で飾られます。
描線はいっそう緻密に、鋭くなり、以前よりも立体的・写実的な表現を伴っております。
写実性を高めている一方、なにか夢の中の風景のような、幻想的な雰囲気を漂わせる作品群は
いわくいいがたい不思議な魅力を放っております。

本展の広告塔となっております『カフェにて』
あの、斜視の眼差しで、こちらを見るともなく見ているお嬢さんの絵も
この時期の作品でございます。




絵付けしたガラスびんやタイル、自作の帽子や道具入れなどの日用品が、一番おしまいの展示室に並べられております。
手先が器用なフジタ、身の回りのものをいろいろ自分で作ったのだそうです。
いわば、手すさび、でございましょうが
いかにも自由な筆致で描かれた装飾-----多くは、小さな子供たち-----は、本当にかわいらしく
画家の軽やかな遊び心が感じられます。

彼の波乱の半生に付き合った鑑賞者にとっても、最後にほっ と一息つける展示でございました。


ええ、ところで
京都国立近代美術館の常設展といえば
「いいんだけど、わりといつも同じもの」
という感が否めないのでございますが
今回はちょっと変わりばえがあって、面白うございましたよ。
特に立体部門がよろしうございました。
こちらにもフジタの作品が出ておりますので、
ぜひ常設展示の方へも足をお運びくださいまし。




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4 コメント

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Unknown (ササイ)
2006-06-19 11:42:44
TBありがとうございます。

とっても展覧会の感想を自由にそして知的に書かれていて素晴らしいですね。時代背景や技法なんかももっと知りたいと思って勉強中なんですが、なかなか捗りません
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いらっさいませ。 (のろ)
2006-06-19 21:21:27
ササイ様、コメントありがとうございます。

&、つたない文章を読んでくだすってありがとうございます。

文才皆無でございますので、もー 必 死で書いております。

技法については、藤田自身が秘密主義だったらしいので、探るのは容易ではないかもしれませんね笑。

時代背景といえば、かのモンパルナスのキキの自伝に、まったく普通の登場人物、即ち知り合いの1人として藤田嗣治が描かれていたのを思い出しました。

『モンパルナスのキキ―エコル・ド・パリ追想』というタイトルです。あの時代の雰囲気がじかに伝わってくるような本でございましたよ。(残念ながら、もはや絶版です。長岡京市図書館に一冊あるようです、とりあえず。

入手は難しいかもしれませんが、こちらに ↓ 関連記事がございますので、ご参考にどうぞ。



http://charlottefrancais.blog12.fc2.com/blog-entry-164.html

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Unknown (サンクチュアリ)
2006-08-27 15:28:06
母国の為に描いた戦争記録がにより、日本を離れる事になったなんて皮肉ですよね。

だが、その事により藤田さんの更なる才能を開花できたのだともいえると思います。

生誕120年の今となってやっと認められた。

本人が生きていたらと・・・



藤田嗣治展行って来ました。

やはり、乳白色の色彩には引き込まれました。



ところで、藤田さんの唯一の弟子で竹谷富士雄さんという画家をご存知ですか?



私は竹谷さんの絵を紹介しています。

藤田さんの迫力のある絵とは対照的に優しい雰囲気の絵を描く画家です。



よろしかったらご覧になってください。
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いらっさいませ。 (のろ)
2006-09-01 08:43:23
サンクチュアリ様、はじめまして。

藤田が戦争記録画という分野に才能を費やさねばならなかったこと、

そのために糾弾されねばならなかったことは

無責任な言い方をすれば「時代の悲劇」ですが、

時代の潮流と個人の運命という構図において、

異常な時代に起きた一過性の出来事として扱ってはならない重みを持っていると思います。



しかし描き続けることが許されたという点において、

藤田はまだしも恵まれていたのではないでしょうか。

キルヒナーのような人がいたことを考えれば。



恥ずかしながら、竹谷富士雄さんのお名前は存じませんでした。

筆致にも色彩にも、対象をいつくしむような優しい感情のこもった

温かい絵をお描きですね。
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