のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『鑑定士と顔のない依頼人』

2014-01-03 | 映画
うわあキュッヒルさん!
禿げたなあ!
眼鏡は?
コンタクトにしたんですか?

というわけでNHKの「ニューイヤー・オペラコンサート」を見ているんですが
そんなことはさておき。

新年最初の映画は『ブランカニエベス』にしようと思っていたのです。
しかし『鑑定士と顔のない依頼人』を見やすい時間帯に上映するのが今日までということに気づきまして、予定を変更してこちらに行くことにしました。

映画『鑑定士と顔のない依頼人』公式サイト

うーむ。
原作は未読ですが、映像的センスのある監督ならぜひとも映画化したくなるに違いない、そう思わせる筋でございました。映画としての完成度は高いと思います。
ただ、お話がいかに巧みに織り上げられていたとしても、どの登場人物にも肩入れできないような作りの作品というのは、正直しんどい。まあこれは人によりけりのことではありましょう。しかしワタクシの場合は悪玉にせよ善玉にせよ、好感を持って見ることのできるキャラクターが作中に一人でもいるかどうかが、その作品を楽しめるか否かをけっこう左右するんでございます。そしてこの作品においては、残念ながらそうしたキャラクターが一人もおりませなんだ。

とりわけ、物語のキーであり、準主人公とも呼べるクレアというお嬢さんなんですが。
ワタクシは初めから、そししてお話が進んでからも、彼女のことがまっったく好きになれず、彼女が泣き叫ぼうが失踪しようがトラウマを告白しようが、心情的にはまるっきりどうでもよいこのよっちゃんでございましたので、せっかくのミステリーにもいまいち引き込まれませんでした。役者さんが悪かったわけではございません。ただ、彼女の言動のほとんどあらゆる点が鼻について、好感はおろか同情する気にすらなれなかったのでございました。

役者といえば、主人公のヴァージルを演じるジェフリー・ラッシュはワタクシの好きな俳優の一人なんでございますが、この映画に関しては、この役はラッシュさんじゃない方がよかったんじゃないかのう、と思ってしまう時がちらほらございました。演技がどうこうではなく、役柄として。ヴァージルが鑑定士及び競売人として仕事をしているシーンは、どれもたいへんよかったんですけれどもね。そりゃもう、ずっとそればかり見ていたいくらいでございました。
いっそ彼がバリバリとそして淡々と、日々の仕事をこなしつつコレクションを築き上げて行き、あるときふと自分がいかに孤独であるかに気づいて憂鬱に落ち込むものの、やっぱり俺にはこれしかねーやと気を取り直して再び仕事に精を出しつつコレクション構築にいそしむ、といった内容の映画だったら、ワタクシはかな~り楽しめたことでしょう。

そんな話じゃ起伏がなさすぎるって。
いいんです。ジェフリー・ラッシュが埃をかぶった骨董品たちをゆったり見回しながらよどみなく査定して行くのやら、緊張感の中にも時折ユーモアを覗かせてオークションを小気味よく進行して行くのやら、相棒のドナルド・サザーランドと舞台裏で気さくな会話を交わすのやら、孤独に浸って、とはいえ心安んじて、愛おしいコレクションを眺めるのやらを見ているだけで、ワタクシは充分満足でございます。

巧みに織り上げられたお話、と冒頭で申しましたが、ミステリーではありながらもある意味期待通りに進むので、さしてカタルシスはございません。ただ、振り返ると細かい伏線があちこちに張られておりましたので、2回鑑賞するとよりいっそう楽しめる作品ではあろうと思います。

ワタクシは1回でお腹いっぱいでしたけれども。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿