のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

When you're evil

2013-08-16 | 音楽
送り火の支度




とは全然何の関係もない話でございます。

先日のノミ話でvoltaire(ヴォルテール)と名乗るミュージシャンについてちと触れましたけれども、それで終わりにするのもなんだか悪うございますので、もうちょっときちんとご紹介しておこうかと思ったわけです。
といっても『Devil's Bris(悪魔の割礼)』というアルバム1枚しか持ってないんですけれども。
ワタクシが購入したのは発売13周年記念盤とかで、何とご本人のサイン入りカードがついて来ました。

voltaire氏がどんなミュージシャンかと一言で申しますと、ゴスなシンガーソングライターでございます。
別に世の中を風刺したような曲を書いてらっしゃるわけでもないのに、何でこの芸名なのだろう、と思いましたら、本名の一部(ミドルネーム)がvoltaireなのだそうで。ちなみに『カンディード』の作者であるヴォルテールは本名ではなく、ペンネームでございます。本名はフランソワ=マリー・アルエ。いやはや、どうも可愛らしすぎて、かの喧嘩っ早い皮肉屋には似合わないようでございますね。

さておき。
ワタクシは別にゴス音楽のファンではございません。
クラウス・ノミが好きでも80年代カルチャー全般に興味があるわけではなく、クラフトワークが好きでもテクノファンなわけではなく、フランシス・ウォルシンガムが好きでも政治的タカ派を支持しているわけでは全くないのと同様でございます。要するに、ものごとをピンポイントで好きになる傾向があるのでございます。

で、ゴス好きでもないのろさんが、voltaire氏の10年以上前に出たアルバムを購入するに至ったのは、その中の『When You're Evil』という一曲がのろさんのピンポイントなツボにすっぽりとはまったからでございます。

何がいいって、歌詞がいい。
悪役loverの心をわしづかみでございますよ。




勝手に訳してみました。
国内版は出ていないようですし、商業目的ではないのでフェアユースの範疇だと思いますが、怒られたら引っ込めます。

When the Devil is too busy
悪魔は忙しすぎ
And Death's a bit too much
死神ではちょっとやりすぎって時には
They call on me by name you see
俺にお呼びがかかる
For my special touch
俺の特別なタッチを求めて

To the gentlemen I'm Miss Fortune
殿方にはミス・フォーチュン(「ミス・幸運」と「ミスフォーチュン(不幸)」をかけている)
To the ladies, I'm Sir Prize
ご婦人方にはサー・プライズ(「素晴らし卿」と「サプライズ(驚き)」をかけている)
But call me by any name
だが好きなように呼んでくれ
Any way it's all the same
いずれにしても同じこと

I'm the fly in your soup
俺はスープの中の蝿
I'm the pebble in your shoe
お前の靴の中の砂利
I'm the pea beneath your bed
お前のベッドのえんどう豆(アンデルセン『えんどう豆の上に寝たお姫様』から)
I'm a bump on every head
全ての頭にできたこぶ
I'm the peel on which you slip
お前が滑って転ぶ皮
I'm a pin in every hip
全ての尻にささるピン
I'm the thorn in your side
俺はお前の心配の種
Makes you wriggle and writhe
そのためお前は身をよじる


And it's so easy when you're evil
それもこれも簡単なことさ、邪悪な者にとってはな
This is the life, you see
これが人生ってものさ、そうだろ
The Devil tips his hat to me
悪魔も俺に挨拶するよ
I do it all because I'm evil
それもこれも俺が邪悪だからさ
And I do it all for free
全部タダでやってやるよ
Your tears are all the pay I'll ever need
報酬はお前の涙で充分さ

While there's children to make sad
悲しませるべき子供がいるなら
While there's candy to be had
取られるべきキャンディがあるなら
While there's pockets left to pick
すられるべきポケットがあるなら
While there's grannies left to trip down the stairs
階段を転げ落ちるべき婆さんがまだ残ってるなら
I'll be there, I'll be waitin' round the corner
俺はそこにいる、すぐそこに
It's a game, I'm glad I'm in it
これはゲームなんだ、参加できて嬉しいね
'Cause there's one born every minute
カモはいくらでもいるからな(注:以前の訳から訂正しました 11/3)

*繰り返し

I pledge my allegiance to all things dark and dire
俺は忠誠を誓う、全ての暗く恐ろしい者どもに
And I promise on my damned soul
俺の呪われた魂にかけて誓う
To do as I am told, Lord Beelzebub
指令通りにやることを。ベルゼバブ様も
Has never seen a soldier quite like me
俺ほどの戦士はご存知あるまい
Not only does his job, but does it happily
仕事をこなすだけでなく、喜んでやるのだからな

I'm the fear that keeps you waked
俺はお前を眠らせない恐怖
I'm the shadows on the wall
俺は壁に落ちる影
I'm the monsters they become
その影から生まれ出る怪物
I'm the nightmare in your skull
お前の頭蓋の中の悪夢
I'm a dagger in your back
お前の背中に刺さったナイフ
And extra turn upon the rack
拷問台では追加のひと締め
I'm the quivering of your heart
俺はお前の心臓の震え
A stabbing pain, a sudden start
突然に襲う、刺すような痛み

*繰り返し

It gets so lonely being evil
邪悪でいると孤独がつのる
What I'd do to see a smile
どうしたら微笑む顔を見られるのか
Even for a little while
ほんの少しでもいいんだ
And no-one loves you when you're evil...
誰も邪悪な者を愛してはくれない...

I'm lying through my teeth!
な~~~んちゃんてな!
Your tears are all the company I need!
俺のツレにはお前の涙で充分さ

以上

And extra turn upon the rack(拷問台では追加のひと締め)ってのが実にいいですね。この拷問台というのはウォルシンガム話5でご紹介した人間引き延ばし機のことでございます。

他の収録曲は、元恋人の今の彼氏を殺して川床に埋めることを妄想する男の歌(Ex Lover's Lover)や、「頼むよ、上の階に住んでるうるさい馬鹿を殺してくれよ、お前俺の友達だろ」と迫る(The Man Upstairs )、恋人への猜疑心と嫉妬にのたくる男の歌(Snake)、妄想の恋人を妄想の中で殺したのちにおそらくは自殺する男の歌(The Chosen)などなどでございまして、要するに、ゴスです。「毎日が僕らの記念日みたいだ」と歌う2曲目の『Anniversary』だけは、なぜか5月の風のような直球さわやかラヴソングなのですが。

ご本人はこんな人。相棒の無言のツッコミが笑けます。




わっはっは。面白いあんちゃんです。
「北米版山田晃士」と思った人、手を挙げて。
この30秒足らずのラヴソング(?)も『Deil's Briss』に収録されております。

ご本人の言葉によると、彼の歌は「電気が発明されず英国の女王がモリッシーであるパラレルワールドのための音楽」なだそうです。Wikipediaによると音楽活動の他、コミックを描いたりアニメーションを作ったり小説を書いたりなさっているようです。
HPはこちら。

Voltaire | voltaire.net

うーむ、こういうの、好きな人は大好きだろうなあ。冒頭で申しましたように、ワタクシはとりわけゴス好きというわけでもございませんので、今の所『When You're Evil』以外の作品にはあんまりのめりこんでおりません。もっと何回も聴けば、より好きになるかも知れませんが。年を取るにつれ、そういうこともあるのだと分かってまいりました。
昔、ニック・ケイヴの『マーダー・バラッズ』というアルバムが出た時、テーマに惹かれて購入し、3、4回聴いたものの、あんまり好みじゃないやと判断して、洋楽好きの飲み仲間にあげてしまったことがございました。あれももう少し聴き込んだら、また評価も変わったかもしれないと思うと、ほのかに残念ではあります。
後日そのお返し(ということだったと思う)に、当の飲み仲間が菅井君と家族石...ではなくスライ&ザ・ファミリー・ストーンの『暴動』をくれました。「なんか好きそうだから」と。正直言いますと、これも3、4回以上は聴いておりません。久しぶりに聴いてみたら以外とよかった、というケースもあることですし、この機会にまた引っ張り出して聴いてみようかしらん。

さてもさておき。
他の作品はともかく、『When You're Evil』は文句なしにのろごのみの一曲でございます
のろさんのと同様、世界中の悪役loversの心もまたがっしりと捕らえたようで、youtubeにはこの曲と映画やゲームやアニメーションに登場する悪役の映像を組み合わせたクリップが、そりゃもうたくさんupされております。ざっと数えただけでも100以上。ディズニーの悪役のみをフィーチャーしたものだけでも、少なくとも20本ございます。また媒体は様々ながら、キャラクターとしてジョーカーさんのみをフィーチャーしたものは、さすがと言うべきでございましょう、少なくとも21本ございます。

こんなナイスな曲にのせて、ステキな悪役たちがその全身で生き生きと悪を表現しているのを見ますと、のろさんはもう世の中の憂さを忘れるほどに嬉しくなってしまうのでございました。

でも別にゴス好きってわけではないんざんすよ。


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