のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

高野山行1

2015-09-01 | Weblog
ふと思い立って高野山へ行ってまいりました。
ふと思い立ったことなので下調べはほぼ無し。

行ってみればバスやケーブルカーの中ではいかにも観光地めいた音楽つきのアナウンスが流れ、お寺とお寺の間にはお土産屋さんとお茶所がぎゅうぎゅう詰まっており、コンビニなんぞもあり、ゆるキャラ「こうやくん」の看板が所々に立っており、お坊さんがたはお客をさばき慣れている、というか、さばき倦んでいる感じで、もう少し俗離れした所を期待していた身としては少々がっかり。
しかしまあ、循環バスは使いよく、公衆トイレはとてもきれいであって、要するに観光客が快適に過ごせるように整えられているというわけで、観光目的で行ったワタクシごときに文句を言われる筋合いはないこってございましょう。

遠出のおともには本が不可欠。あまたのつんどく本を尻目に、数日前に買ったばかりのハインラインの『夏への扉』、そして万がいち途中で読み終えてしまった時の予備として、遠藤周作の『沈黙』をカバンに入れます。変な組み合わせですが別に意味はありません。二冊とも「そういえば読んでなかった名作」というだけの繋がりでございます。

JRの最寄り駅から京都→梅田→難波まで出て南海電鉄に乗り換え。関西に20年いながら初めて乗った南海。ワタクシが乗った車両はきれいな青い座席でクッションの固さも程よく、乗り心地はいたって快適でございました。
しばらく市街地が続いたのち窓外の景色はだんだんと山がちになり、橋本駅で極楽橋行きに乗り換えてからは本当に山の中を進んで行きます。右手には鬱蒼とした木々がせまり、左手には深い谷を見下ろし、よくまあこんな所に鉄道を敷いたもんだと驚くばかりの山奥をごとごとと揺られておりますと、『夏への扉』をちょうど半分くらいまで読んだ所で極楽橋に到着。悪漢たちのせいで「ぼく」から引き離され、過去に取り残されてしまったピート(猫)の運命がものすごく気になる所ではありますが、ここで一旦本を閉じねばなりません。

真っ赤な車体が可愛らしい、二両編成の車両。

ホームからケーブルカーの乗り口まで、風鈴がたくさん吊り下げられております。
このケーブルカーというのがまあ、おっそろしい角度の傾斜をゴンゴンと上って行くんでございます。写真は高野山駅に着いた時に撮ったもの。いやどうです、この斜めっぷり!

改札を出ますと、はちすをかたどった何やらありがたげな器が置いてあります。蓋を開けてみると粒子の細かい茶色の粉末が入っておりました。塗香(ずこう)というもので、聖地に踏み込む前にこれを両手にまぶして身を清浄にするんだそうです。つまんで両手にもみこむと、スパイシーないい香りがたち上ります。いささか『注文の多い料理店』気分ではございます。


表へ出るとすぐバス乗り場があり、ちょうど一番遠い奥の院口行きのバスが出る所でございました。勢いで一日乗車券(¥830)を買って乗り込みます。
奥の院口から奥の院までの参道には、歴史的有名人やら作家やら大企業やらの供養塔やお墓やがぎっしり並んでおりまして、親切なことに参道入口にはお墓マップが掲示されておりました。織田さんやら豊臣さんやらはすっとばしてもいいけど、熊谷直実のお墓には手を合わせておこうかな…と思っていたのですが、周りの杉の木ばかり見ていたらいつの間にか通り過ぎてしまいました。

何せ素晴らしいんですもの、杉の木が。年月を経た大木がしんしんと空に向かって延びており、朽ちかけた株からは可愛らしい新芽が育ちつつあり、複数の株が根元で一体化したものや、大きな洞にこんもりとシダや苔を擁しているもの、幹の途中から別の木が生えているもの(↑右端)もございました。

根元には様々な種類の苔が豊かに育っております。


知人に勧められて尾崎翠を読んだばかりだったのろさん、苔たちのたたずまいにも何となく心惹かれます。



↓下の方に見えている赤いものはお地蔵さんの前掛け。ご立派なお墓や供養塔だけでなく、名も無き小さなお地蔵さんも無数にありました。


8月なかばの暑い盛りであったにも関わらず、杉木立の中はひんやりと涼しく、歩きづめでも汗が流れることはありませんでした。

ちいさなちいさなキノコを発見。

さて、奥の院の手前までやって来ました。橋を渡った向う側は撮影禁止でございます。なんせ聖地ですから。
なんでも、橋の所まで弘法大師さんが参拝者を迎えに来てくだすって、帰る時も橋までお見送りしてくださるんだとか。
こんなにお客さんが多いと弘法さんも大忙しだろうなあと思うほどの人出ではございましたが、遠慮する義理もないので、一応襟を正してお堂をぐるっと一巡し、誰へともなくお線香をあげてみたりなんぞいたしました。


次回に続きます。

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