のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『ええほんのえ』

2007-01-14 | 展覧会
『もーちゃん えっちゃん ええほんのえ』/伊丹市立美術館 へ行ってまいりました。



チラシ ↑ からもご想像いただけると思いますが、これはもう理屈抜きに楽しめる展覧会でございます。
絵本原画展でございますから、作品が親しみやすいのはもちろんのこと。
のみならず、館内には楽しいしかけがいろいろ施されておりました。

「元永定正」「中辻悦子」という名前だけ聞いても、ピンと来ないかたも多いかもしれませんね。
実を申せばのろは来ませんでした。
しかしナンセンス絵本の大傑作『もこ もこもこ』『もけら もけら』『カニ ツンツン』の作者と
ブラチスラヴァ世界絵本原画展でグランプリを受賞した『よるのようちえん』の作者といえば
皆様 ア~ とうなづかれる所でございましょう。

ようちえんには だれもいません  
みんなうちに かえりました

そっとさんが かおをだしました  
そっとさんは きょろきょろりん

すっとさんも きました
すっとさんは すっとんとん  ・・・


と続く『よるのようちえん』。
地下にある、この作品の原画を集めた展示スペース(くれぐれもお見逃しなきよう)は
照明がかなり落とされた暗い空間で、原画のフレームだけがスポットライトで照らされております。
中央にはかわいらしい椅子がぐるりと半円に並べられ、壁ぎわにはお道具箱が。そう、夜の幼稚園なのです。
時折、暗い室内に すっとさん や そっとさん や おっとさん や もっとさん や じっとさん の
不思議でひょうきんな姿が、ぱっと現れては消えます。
こういうしかけは、やりようによってはたいそう小賢しいものになってしまう恐れがございます。
しかし本展においては、へんなものたちの生活を そっと 覗いているような
作品の秘密めいた雰囲気と相まって、なかなかに素敵な演出となっておりました。

2Fの展示室も壮観でございます。
床には絵本からこぼれ出て来たような、カラフルな「しかく」達が列をなしております。
展示室内の赤い扁平な敷物は、よく見ると
元永氏の絵本によく登場する、何だかよくわからないかたち氏 ではございませんか。

そうした演出が邪魔にならぬのも、氏の作品が演出に負けぬ強い個性を放っているからこそでございます。
もけら もけら でけ でけ で始まりずばらば で終わる
絵本『もけら もけら』(山下洋輔 文 いや、文っていうか)、
あほらしげでありながら永遠すら感じさせる『もこ もこもこ』、
小さなマルたちがひたすらころがり続ける『ころ ころ ころ』などの原画が集結し
元永氏の自由でヘンテコリンな感性が炸裂しております。

この度、『もこ もこもこ』が30年も前に出版されたものと知りまして
その時を超えた斬新さにウームと唸ったのろ。
元永氏がかの前衛美術集団具体美術協会のメンバーでいらっしたことも、この度はじめて知りました。

「他人の真似をするな、今までにないものをつくれ」がモットーであった「具体」。
のろが生まれる前のこととて、もちろん直接には存じないのでございますが
数年前に兵庫県立美術館で催された「具体」回顧展は、たいそう素晴らしいものでございました。

あそこに端を発していたのか、と思いますと
氏の作品の色あせぬ斬新さにも大いに納得がいくというものです。

と いうわけで



行ってらっさいませ。