読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

『半島へ』

2019年12月17日 | 作家ア行
数多久遠『半島へ』(祥伝社、2017年)

航空自衛隊に在職していたという経歴の持ち主による北朝鮮ものの小説。

北朝鮮の現体制が内部の集団離反により崩壊寸前の状態にあるなか、日本政府は核弾頭の基地を事前に掌握し破壊することや拉致被害者を救出する作戦を実行直前の段階にまで練り上げているところへ、天然痘ウイルスを北朝鮮が持っており、それが生物兵器として使用されるのではないかという情報が入り、北朝鮮の研究拠点を強襲してウィルスを強奪する計画が実行に移される。

その研究所に到着し調査を進めるうちに研究所内に拉致被害者の日本人がいることが分かり、彼らとその家族の救出も同時に行うことになる。計画通り天然痘ウイルスを奪取し、研究所を破壊して、特殊な気球で、拉致被害者たちを脱出させようとするが、いざという時になって拉致被害者の一人の妻がウィルスを持って北朝鮮側に逃走してしまう。

ここからウィルスを持って逃げた北朝鮮軍と彼らとの追走劇になる。最初はジープで追っていたが、彼らがヘリに乗って移動を始めると、日本海に待機していた自衛隊のヘリによる追走になり、彼らが海辺の村に着陸してからは銃撃戦になって、やっとウィルスを取り返す。こうして、最も恐れていた難民を利用した天然痘ウイルスのパンデミックは回避された。

その後、北朝鮮の内戦は、クーデター派が独裁政権を倒して、新政府を樹立することになる。

主な登場人物は、天然痘ウイルス奪取作戦を実行する室賀たち陸上自衛隊の数人、今回の作戦を東京から指導している首相官邸危機管理センター、天然痘ウイルス問題を追っていた毎朝新聞の記者の桐生琴音たち・・・。

北朝鮮問題というのは、実際に現実の情勢が刻々と変わって、何が起きるか分からない対象であるだけに、リアルなものを描くのは、相当の知識と筆力が必要だと思うが、航空自衛隊に勤務していただけのことはあって、戦闘シーンなどは緻密に描かれている。

村上龍の『半島を出よ』に続くくらいに興味深い、北朝鮮ものの小説だ。

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