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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

『AI時代の感性:デジタル消費社会の「人類学」』④

2024年03月19日 | 現代の病理

『AI時代の感性:デジタル消費社会の「人類学」』(2023/9/2・ダニエル・コーン著),林昌弘翻訳)からの転載です。

 

 

 これらの現象が認知力に壊滅的な影響もたらすという研究調査はたくさんある。たとえば、スマホを持っていない人にスマホを持たせるという実験だ。この実験では三か月も経たないうちに被験者の計算能力は著しく悪化した。注意力が低下したのだ。また、被験者の「衝動的な態度」は、スマホの利用時間の増加にほぼ並行して顕著になった。

 スタンフォード大学の研究チームも、フェイスブックにIか月問アクセスできないようにするという実験を行なった。被験者は空いた時問を利用して、実験前よりも家族や友人と過ごす時問とテレビを視る時間を増やすようになった……。結果として被験者の幸福度は大きく向上し、実験終了後も被験者のデジタル機器に費やす時問は大幅に減少した。この実験を基にした研究によると、フェイスブックを一か月間利用しないと不安や鬱症状が抑制され、幸福感という観点から三万ドルに等しい利益があったという。

 ソーシャル・ネットワークの中毒性は、もはやタバコと同様に疑いの余地がない。両者の違いは、タバコは社会の敵と見なされているが、ソーシャル・ネットワークはそうではないということだ。

 デジタル社会は、映画『マトリックス』のように現実と仮想の区別がつかなくなるまで参加者を仮想世界に埋没させる。デジタル社会はそこで巻き起こる感情を客観視する余裕を利用者から奪い、彼らの批判的な精神を弱める。ソーシャル・ネットワークでは薬物やアルコールと似たような「デジタル版自制心解放効果」が働いており、利川者はしばしば日常の社会生活の規範から逃れ、さまざまな逸脱行為に走る。

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