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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

グリーフサポートと死生学②

2024年05月12日 | 苦しみは成長のとびら
『グリーフサポートと死生学』 (放送大学教材・2024/3/20・石丸彦・山崎浩司著)からの転載です。


2)個人的・多様・アノミー的
 以上のとおり,グリーフを引き起こす喪失体験は死別に限定されないが,重要他者との死別は数ある喪失体験のなかでも最もストレスフルなものの一つであり,遺された者はグリーフに直面しやすい。その表出の仕方がきわめて個人的であるのが現代社会のグリーフの特徴であり,「哀の個人化(individualisation of moum・g)」(Winkle,2001)と呼ばれる。伝統社会が有していた服喪の儀礼の衰退や簡略化により,伝統的に形づくられた特定の型に則って悲しむという縛りが弱まり,現代社会では死別によるグリーフのあり方は個人に委ねられるようになった。
 つまり,私たちは伝統的な服喪の範から解放され,感じるままに多様に悲嘆する自由を得た。だが一方で,人の死に際していかに振る舞うべきか,いかに悲しみを表出すべきかといった規範の弱体化にも直面することになった。社会学者エミール・デュルケムは,近代化した社会において,社会規範が弱まり人間の行為や欲求を制御できなくなった状態を「アノミー(anomie)]と呼んだが,喪失を体験する現代人は,まさにアノミー的グリーフ(Walter,1999)に直面していると言える。模範なく個別多様に悲嘆する過程で,自らのグリーフが正常なのか異常なのかと不安に駆られてしまいかねないのが,現代社会におけるグリーフの特性の一つである。
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