超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

シスプラス 2巻/勇人

2012-07-26 23:48:47 | 漫画(新作)






勇人「シスプラス」 2巻読了。






超シスコンの兄貴と可愛くてほおっておけない三姉妹が織り成すサービス系コメディ!・・・なんですけど
そういう内容ではありつつ折角妹達の為に一生懸命作ったケーキを子供に恵んであげる兄貴の優しさよ。
でも別に達観している訳でもなくその後普通に落ち込んでしまう情けなさや
お金が足りないにも関わらずケーキを渡してあげるその人情なんかは
キャラ付けだとか設定だとか
そんなチンケな記号には留まらない人間らしさを感じる事が出来て個人的には好感触、
確かに一部やりすぎな面も見受けられるし困ったお兄ちゃんではあるけれど
その根底にはお人好しの血が色濃く流れているのも事実で
だからこそお邪魔虫のようでその実結構に憎めない性格してるなあ、って。勇人作品にしては
実にアグレッシヴに映るキャラクターではありますけど、その本質は何気に他と差異はないのかもなあ・・・と
そんな風にも感じる事が出来た、兄貴のキャラを好きになる事が出来た良好な新刊でした。
割と実験場、勇人なりの萌え漫画へのアプローチを感じさせる作風ですけど
読み終えてみればきっちり勇人さんらしい漫画になっている、って思えるのが実に良いですね。
全体的にお笑いの成分も多めで時にはクスクス以上に笑える場面もあったりと
ことコメディパートに関しても良質だと感じれた2巻目でしたね。

1巻の感想でも書きましけど、岡田あーみんの影響を受けてそうって個人的に思ってて
兄貴のキャラクターっていうのは何気に「お父さんは心配性」の佐々木父と結構に通じる部分がある
その意味でも幼少期にあーみん漫画を何度も読んでた身として
こういうテイストは懐かしかったし、
勇人さんなりの変化球と思いきや過去を振り返ってみれば意外とスタンダードな設定でもあるんですよね。
同時発売の「いろは坂」とは違ってコメディ成分多目だし感動成分は薄めだし
それでいてお色気成分が過剰に濃かったりもするけれど
でも、これはこれで古き良きホームコメディへのリスペクトが込められてるのかな、って思ったり
それでも最終的には良い話に持って行けるセンスだったりでこれはこれで正しいとも感じる
確かに同時連載で同じ事やってちゃ意味ないっちゃあ意味がないので
本当に自分的には「これはこれで」って感覚ですね。
それに、サービスの質も良いしね(笑)。色々とバラエティ豊かで楽しい新刊でした。


中でも最後の妄想女子の話は完全にギャグに振り切れてて一種の新境地だと感じました(笑)。
珍しく嫉妬する心奏ちゃんの姿も印象的だったし、この巻はとにかく姫苺が完全に調子に乗ってて
そんな暴走具合もまた面白い
その一方で何気に利益優先のメディアに対するアンチ精神が込められたネタも多数あったりして
そんな作中の主張なんかを読んでるとこれはこれで描きたかったテーマなのかな、って。
それでも分かってくれる、っていう顛末は
ある種のご都合主義的な要素も含んでたりするんだけど
でも、本音はきっと「こうであって欲しい」っていう願いから来てるんだろうなって考えると
それはそれである意味正しい描き方だとも思うんです。きっとこの方は最終的に人を信じたいんだと思う。
なんて勝手な推測を記述しつつ、あくまで私的に感じた事柄ではありますけど
そういう思想を念頭に置いて読むと
また見方も変わってくるような。お手軽なサービス作品に思えて
実は色々な趣が込められてる一種の力作である「シスプラス」、
「いろは坂」とは違って別に泣きも大きな感動もないんですけど、それでもこの作品「も」自分は好き
多少毛色は変わりつつこれもこれできっちり勇人作品だと感じれるのが何より大きいですね。
是非「いろは坂、上がってすぐ。」と一緒に優しくて可愛い勇人世界を味わって下さい!






ああでも、やっぱ兄貴が妹達の為に作ったケーキを子供にお金足りなくとも渡してあげるシーンは
読み返してるとちょっと涙腺に来る感じもするなあ(笑)。そして姫苺は確実に小学生越えてるだろ!

後は、やっぱり瑞希ちゃんが不安定可愛い(笑)。ここまでのギャップキャラも中々おるまい。




いろは坂、上がってすぐ。 1巻/勇人

2012-07-26 09:23:09 | 漫画(新作)






勇人「いろは坂、上がってすぐ。」1巻読了。






読んでたらありえない量の涙が出てきた・・・(汗)。
久々に漫画を読んで号泣してしまいました。正直自分でも何でだろう?って思うんですけど
やっぱりその辺は理屈ではない本能に訴えかけるものがこの作品にはあるんでしょうね・・・。
ハートフルコミックなのは作者の傾向からして間違いないんですけど
この作品はその一歩先を進んでるといいますか
どの世代でも感動出来るような普遍的で質の良いお話ばかりが載っていて、
何だかんだ言いつつもストレートに泣けるお話はいつの時代も強くて心に沁みるなあ、と本心から思えた
ただ一度泣いただけではなく、もう次から次へと涙腺が決壊していくような
それくらい個人的には大泣き出来る漫画として読めてしまった、
渾身のホームランの連発を味わう事が出来た新刊でした。

正直な話、取り上げられてる題材は割とベタっていうか
誰しもが経験する思春期の過ちだったり若さゆえの生き急ぎだったり
どの題材も多分意図的に捻ってはいない
でも、逆に言えば奇を完全に衒ってないからこそガツンと沁みて来る節があって
ともすれば安いお涙頂戴になりがちなハートフルってジャンルですけど
不思議とその辺のいやらしさも感じず
素直に感情移入出来た
そんな今時珍しいぐらい純粋で泣けるお話をきちんと真正面から描けるその力量は素直に凄いと思う
ここまで泣いちゃうとはっきり言ってこの作者のポテンシャルを認めざるを得ないよなあ、と
個人的には強く思ってしまいました。こういうベタなお話ってごまかし効かないから
その点でも何気に正統派的な実力を持っている作家さんだなー、と
自分的には見直したりもしましたね。
この漫画はちょっと売れて欲しいかな、って思わなくもないです。密かに楽しみたい気持ちもあるけど。


この漫画がお涙頂戴になっていないと思う理由として主人公の雫の存在が大きくて
彼女は両親と兄を交通事故で亡くしてるって設定なんですけど
作中では一度も悲しそうな顔をしないし
常に健気に頑張ってる
その明るさがむしろ泣ける気持ちに繋がる・・・って考えると実に素敵な漫画だなあ、とも思う
要するに「泣き」に媚びている訳ではなく、純粋に登場人物達の温かい気持ちを伝えてる
そんなプリミティブで余計な色気がない純真さこそが一番の魅力だと感じれる
だからこそ素直に泣ける、っていう
そんな純朴な要素だらけなのが本当に素敵だと思えるコミック
「シスプラス」がお気軽に読めるコメディ色の濃い作品になってるのに対して
こっちは感動話中心のハートフル作品、って事できちんと住み分けが考えられてるのもよろしい
「シスプラス」が割と寄り道的な漫画だと考えると
このいろは坂は正に本領発揮、いや、元々の本領以上に突き抜けた出来に仕上がってる
正にザ・勇人さんって印象の作品で個人的には完全に大満足出来た至福のコミックでした。
泣いた、っていうのはあくまで個人的な出来事でしかない訳ですけど
同じように涙腺に来た人はきっと他にもいるんじゃないかな・・・。
というか、いると信じたい。
それくらいは堂々と感情移入出来た、正に感動路線のド真ん中を突けているお気に入りの新作でした。
基本的にお話にムラがなくどの話を読んでも安定してグッと来れるってのも凄いなと。

個々のエピソードでどれが好きか、っていうのは甲乙付けがたいんですけど
私的には冒頭の1、2話とピアノの先生のお話、それと悠のお話の最後のカットが大好きです。
特に大げさな仕掛けだったり物凄い不幸なバックボーンが用意されてる訳でもないんですけど
だからこそより一層心に沁みる
そんなほどほど感もこの漫画の魅力の一部なのかなあ、と。
基本的に物の感情を読み取れるって軸の設定から広がっていくお話が殆どで
私も割と物をいつまで経っても捨てられない程取っておく人間だからこそ余計に感情移入出来たのかも
一度は他者によって踏みにじられたピアノを弾くのが好きな気持ちを
同じく他者の賞賛によって蘇らせてもらえたピアノの先生のお話は自分でも驚くくらい、
即効で泣いてしまいましたね(笑)。時にはキャラをしっかり泣かせたりと
そんなメリハリ具合もまた良好だと感じれたこの1巻
また2巻でそんな優しさの波長に触れられるのが早くも楽しみです。良い買い物をしました。






いや、でもこの方の漫画でこんなにグシャグシャに泣くとは完全に予想外だったね。
基本まったりってイメージがあるので・・・。みんなみんなあったかくてホントに素敵な漫画でした。