勇人「シスプラス」 2巻読了。
超シスコンの兄貴と可愛くてほおっておけない三姉妹が織り成すサービス系コメディ!・・・なんですけど
そういう内容ではありつつ折角妹達の為に一生懸命作ったケーキを子供に恵んであげる兄貴の優しさよ。
でも別に達観している訳でもなくその後普通に落ち込んでしまう情けなさや
お金が足りないにも関わらずケーキを渡してあげるその人情なんかは
キャラ付けだとか設定だとか
そんなチンケな記号には留まらない人間らしさを感じる事が出来て個人的には好感触、
確かに一部やりすぎな面も見受けられるし困ったお兄ちゃんではあるけれど
その根底にはお人好しの血が色濃く流れているのも事実で
だからこそお邪魔虫のようでその実結構に憎めない性格してるなあ、って。勇人作品にしては
実にアグレッシヴに映るキャラクターではありますけど、その本質は何気に他と差異はないのかもなあ・・・と
そんな風にも感じる事が出来た、兄貴のキャラを好きになる事が出来た良好な新刊でした。
割と実験場、勇人なりの萌え漫画へのアプローチを感じさせる作風ですけど
読み終えてみればきっちり勇人さんらしい漫画になっている、って思えるのが実に良いですね。
全体的にお笑いの成分も多めで時にはクスクス以上に笑える場面もあったりと
ことコメディパートに関しても良質だと感じれた2巻目でしたね。
1巻の感想でも書きましけど、岡田あーみんの影響を受けてそうって個人的に思ってて
兄貴のキャラクターっていうのは何気に「お父さんは心配性」の佐々木父と結構に通じる部分がある
その意味でも幼少期にあーみん漫画を何度も読んでた身として
こういうテイストは懐かしかったし、
勇人さんなりの変化球と思いきや過去を振り返ってみれば意外とスタンダードな設定でもあるんですよね。
同時発売の「いろは坂」とは違ってコメディ成分多目だし感動成分は薄めだし
それでいてお色気成分が過剰に濃かったりもするけれど
でも、これはこれで古き良きホームコメディへのリスペクトが込められてるのかな、って思ったり
それでも最終的には良い話に持って行けるセンスだったりでこれはこれで正しいとも感じる
確かに同時連載で同じ事やってちゃ意味ないっちゃあ意味がないので
本当に自分的には「これはこれで」って感覚ですね。
それに、サービスの質も良いしね(笑)。色々とバラエティ豊かで楽しい新刊でした。
中でも最後の妄想女子の話は完全にギャグに振り切れてて一種の新境地だと感じました(笑)。
珍しく嫉妬する心奏ちゃんの姿も印象的だったし、この巻はとにかく姫苺が完全に調子に乗ってて
そんな暴走具合もまた面白い
その一方で何気に利益優先のメディアに対するアンチ精神が込められたネタも多数あったりして
そんな作中の主張なんかを読んでるとこれはこれで描きたかったテーマなのかな、って。
それでも分かってくれる、っていう顛末は
ある種のご都合主義的な要素も含んでたりするんだけど
でも、本音はきっと「こうであって欲しい」っていう願いから来てるんだろうなって考えると
それはそれである意味正しい描き方だとも思うんです。きっとこの方は最終的に人を信じたいんだと思う。
なんて勝手な推測を記述しつつ、あくまで私的に感じた事柄ではありますけど
そういう思想を念頭に置いて読むと
また見方も変わってくるような。お手軽なサービス作品に思えて
実は色々な趣が込められてる一種の力作である「シスプラス」、
「いろは坂」とは違って別に泣きも大きな感動もないんですけど、それでもこの作品「も」自分は好き
多少毛色は変わりつつこれもこれできっちり勇人作品だと感じれるのが何より大きいですね。
是非「いろは坂、上がってすぐ。」と一緒に優しくて可愛い勇人世界を味わって下さい!
ああでも、やっぱ兄貴が妹達の為に作ったケーキを子供にお金足りなくとも渡してあげるシーンは
読み返してるとちょっと涙腺に来る感じもするなあ(笑)。そして姫苺は確実に小学生越えてるだろ!
後は、やっぱり瑞希ちゃんが不安定可愛い(笑)。ここまでのギャップキャラも中々おるまい。