超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

ゆりゆり/なもり

2012-07-25 22:41:11 | 漫画(新作)






なもり「ゆりゆり」読了。






タイトル紛らわしいですけど、別に「ゆるゆり」との関連性はございません
まあ有り体に言えば本格的な百合漫画、って事で「ゆるゆり」の百合の部分が好きな方向け
そしてギャグも殆ど無いのでまじめななもりさんのテイストも楽しめる、
割と「ゆるゆり」とは違った趣向の作品に仕上がってて
併せて読むとギャップ的に面白そう
んでも絵の柔らかさや雰囲気の良さは共通しているので全く違うと言う訳でもなし
良い具合に別境地の面白さを味合わせてくれるこれまた素敵な漫画に仕上がってて個人的には嬉しかったです。

「ゆるゆり」は半分おふざけ的な部分も強調して描かれてますけど
これは完全なるストーリー漫画で、しかも何気にリアリティのある設定や描写が多く
まるで青春時代をそのまま切り取ったかのような写実性が見事な一作
百合って言うのはある種の許されざる境地が故に
それを真剣にふざけないで描くと途端に通常の恋愛漫画以上にピュアに感じられるっていう
その百合漫画ならではの旨みもたっぷりと滲んでいて、正に百合漫画のド真ん中を往くようなストレートさ
そして思春期らしいイノセンスに完全に心を持っていかれる節もあったりと完成度は正直高い。
何よりも女子ならではの情念だったり文化も微妙に描かれてたりもするんですが
それでも絵柄や雰囲気が中立的ではあるので
普通に男子でも素直に読めちゃうその入り口の広さが素敵ですね。
理解出来ない人間にその良さを理解させる事が出来るこの食べやすさは間違いなく長所であり
案外普通にこれも一つの恋愛漫画として読めるんじゃないの、って思えるくらいは読みやすい作品でした。
萌え漫画としても少女漫画としても読めるそのグレー感覚もまた個人的に好みの部分です。


テーマ的にはどの作品も普遍的ではあるんですけど
描き方が丁寧なので普通に感情移入も出来るし時折涙腺も刺激されるし
ここまで編みこんだ様な作風もいけるのか、と感心しつつ
このテイストは森永みるくに近いというか
割とあの方の情感と温か味溢れる真摯な百合のテイストを正統に継承しているような出来栄えで
元々森永みるくのファンとしても似てる部分を多々垣間見れてニヤリとさせられましたね。
影響を受けている/受けてないは別にしても
きっと森永作品が好きならばこの作品も好きなんじゃないかなあ、と
そんな風に思える程度には本当に真面目に丹念に描かれている印象の作品で
ここまでしっかりとした作品だと思ってなかったので予想外
おふざけ込みのなもり漫画しか知らない人には個人的に是非読んでもらいたい誠意のある作品です。
と、いってもかくいう私自身同人をチェックしてなかったのでこれで初読みなんですが(笑
なんかなもりさんの別の顔を見ちゃった感じですっごく面白かったですね。
無理だとは思うけど、これもまた映像になったら楽しいのにな。
どの作品も愛情とピュアネスに満ちたキュンキュン漫画ばかりで常に至福だったこの新刊
また一人百合漫画界に新星が現れた感覚でこれからも追っていこうと思えましたね。
取り合えず、普通に漫画として面白かった事も付け加えておきます。

全部で五作品+四作品のアフターストーリーで合計九編入っているのですが
個人的には他人から押し付けられたイメージに悩む王子様の話と
不良がどんどん感化されていくお話がお気に入り
でも基本どの話も良かったりしますが
中でも心理描写的にはメモ帳での告白を目指したお話のよしのの複雑な乙女心、
そこが一番の見所だったかなあ、なんて思います。気づいて欲しいやら、気づいて欲しくないやら
何気に普通に読んでてドキドキしている自分もいたり、やっぱり恋愛漫画として面白い。
逆に言えば百合漫画としてしか楽しめない百合漫画は自分は好きじゃない。
そういった意味で形式だけではなくきちんと漫画としても面白いこの作品は自分の中でも響いたし
きっと多少毛色の違った恋愛漫画として読める入り口の広さもちゃんとあるな、と。
相変わらずの安定打作品でありつつ
所々ホームランもあったりと実に良い傑作集でしたね。
流れが丁寧なのできっと考えなくてもオートマティックに楽しめる、そんな作品
そしてそんな作品はきっと他の作品と比べてもタフなのは間違いない
割と興味本位で買った漫画でしたが結構な掘り出しものだった気もしてます。また数年後続刊出ればいいな!






それにしても最後の指輪は反則だ・・・(笑)。