超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

SHOCKING/つしまみれ

2012-02-09 22:58:34 | 音楽





つしまみれのニュー・アルバム「SHOCKING」を聴く。




これは、完全なるコンセプト・アルバムですね。
というか思った以上にコンセプチュアルな出来だったので
正直評価はしにくいです(汗)。好きは好きなんですけどあまりにも毛色が違いすぎる。
でもその点を含めてすっごくつしまみれらしいアルバムなんじゃないか、とは感じましたね。
完全に振り切れた内容になってて
それは食に対するドラマと感謝。生命を頂くっていうことの意味。が、大きく一枚で描かれていて
こういう作品は完全に初なんじゃないかって思うのと同時に、聴き終えたあと確かに生命の恵みに、
自分の中に入って消化されていく食材に対して感謝したくなるような。
まんまと乗せられたな、って思うような。
そんな正規の意味ではないけれど、一つのコンセプト作品としては名盤と言えるんじゃないか、っていう
つしまみれとしてではなく食を表現する作品としてとても優れている、そんな作品。

気が付けば表現もどんどんストレートになって来ている印象で
それと同じく更にオルタナに傾向している印象もあって。
そんな二極化されたアルバムにもなっていると思うんですけどポップソングには留まらず
ヒップホップやプログレ音楽の要素も吸収して実験的な作風にも果敢に挑戦しているアルバム
相変わらずそのチャレンジングな姿勢が面白いなー、と思うんですけど
しかしテーマがほぼ食事関係なので
イマイチその凄さが伝わらないんじゃないか、って危惧もあるけれど
そんな器用貧乏な部分も含めてつしまみれなんじゃないかなー、とも思うので
その点では実にらしいアルバムとも言えそうですね。
単純にノレる曲は少ないですけど
その分紐解いて噛み締められる曲が増えてる印象の作品です。

コンセプト・アルバムって世の中には沢山ありますけど、まさか「食」って言う
人間の根本的なテーマを描くコンセプト・アルバムって正直聴(聞)いた事がなくて
それに加えて食うために働くって部分まで描いてる訳だから
ストイックなオルタナ精神を凄いって思うのと一緒に評価は正直されにくいって懸念もある。
一歩間違えば変な解釈を持たれかねないギリギリのテーマ設定ですけど
不思議と前述のように素直に食に対する感謝が生まれてて
それはそういう力がこの作品にはあるって証明にもなっていて。自分の中で、ですけど
それってやっぱ真摯にテーマに取り組んでるからなんだろうなって思うので
考えてみれば本当に生真面目なバンドでもあるんだと。
ライブでモッシュやダイブしてるキッズ的には恐らく微妙なアルバムだろうけど
個人的にこのメッセージは受け取りたいな、って今は思いますね。
全体的にメロディがシンプルなので
その点だと割とサクッと聴ける印象もあったりして、何気にバランスの考えられてる作品、だとも。





個人的には現時点ですっごく好きなアルバムなんですけど
人によって大きく評価の分かれる作品なのであんまり鵜呑みにはしない方がいいかも。
それでもやっぱり最後まで聴き終ると、今日食べた食事に対する感謝と愛情が生まれているっていう。
そんななんとも形容のし難いいびつな傑作ですね。
「Road of Girl」のリフがめちゃめちゃ格好良いのでそこは是非聴いて欲しいところです。



Follow the Stars/PERIDOTS

2012-02-09 06:29:09 | 音楽





PERIDOTSのニュー・アルバム「Follow the Stars」を聴いた。





前作は個人的に大好きな曲が多々あったんですが
やや負の方向に偏りすぎた内容でもあった為、今作がよりタカハシコウキらしい
PERIDOTSとしての作品らしいアルバムだと思います。
憂鬱な感情を歌うロックはいっぱいあるし、先駆者に比べるとありふれてるイメージもあるんだけど
彼の場合はそこに偏り過ぎないというか、現実的だけど現実的だからこそ歌える希望もちゃんと歌ってて。
そんな本質が一枚目以上に上手く出ている一枚目以上に一枚目らしいアルバムって印象
正直長年待ち焦がれた傑作がついに!って感触で
個人的にすっごく嬉しい。
まあとはいえ前作は前作で凄く好きなんですけどね。トータリティを考えるとこちらに軍配が上がるかな、と。
一つ一つの楽曲のクオリティが高くてずっと聴き続けていられるような、そんな作品に仕上がってます。

サウンドとしては前作のようなロックサウンドを前面に、って感じではなく
割と素朴っていうかポップな印象が際立つアルバムでもあるんだけど
それによって歌の上手さが異常に目立ってる感覚もあって。
どんな曲歌っててもめっちゃ上手いんですよこの人。
震えるような声なのに、力強さもあって、でもその中で繊細さが光ってたり中毒性だらけの歌声で
例えば気持ち寂しい気分の時とかに聴くと劇薬のように作用する音楽だし
その沁み込む感覚も今回は更に強まった気がする。
楽しい曲も悲しい曲も
全部ひっくるめて一つの媒体で鳴らしてる感覚といいますか
より人間らしさが前面に出た歌と詞は噛み砕いて味わうのにも適した度量があって。
正しく長く聴ける傑作ってフレーズが似合うアルバムですね。
そんな形容詞は時期尚早かもですけど、きっと飽きにくい作品ではあると思います。ここまで濃密なのは凄い。

PERIDOTSは立ち位置的にマイナーなユニットって部類に入ると思うんですけど
このアルバムの曲たちを聴いてると不思議とそういう閉鎖的な雰囲気は感じなくて
むしろメジャーっぽいテイストも含まれてるなって思えるんです。
誰もが気に入るようなメロディ
誰もが気に入るようなフレーズ
それは思った以上に馴染みやすいもので、あんまり人を選ぶ作品って印象はこのアルバムにはなかった。
ただ、あまりにも誠実過ぎてあまりにも剥き出し過ぎて打算に欠けてるって見方も出来そうですけど
やっぱり自分が好きなのってそんな正直者の本心だったりするので。
そんな純粋な音楽や人間に対しての想いが詰まってる作品、
しばらくはヘビロテしそうな雰囲気ですね。





「君がたったひとりで泣くとき
 僕もたったひとりで泣いてる
 じれったいほど分かり合えない世界で
 君が躊躇して悔しがって
 僕も反対側で怯える
 それをいつか知った時
 ふたり笑えるのに」 (Smile)

アルバムではこの曲と「異常気象」が特に出色の出来だと思います。純真なメロディもまた胸を打ちます。