アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

奄美・加計呂麻島の旅④

2019-01-02 21:55:43 | 小さな旅
    海宿5マイル、最後の朝食も、びっくりするようなおいしさ、というのではなく、しみじみしたおいしさを感じるご飯でした。安心して食べられるご飯って、ありがたいなと改めて思いました。

    このハンモック、なかなか寝心地いい。海宿の前の海ともお別れ。

     宿を出て、集落内にある巨大なガジュマルを見物。成長すると次々に枝らしきものが出てきて、地面に到着し、養分を吸って生き続けるのだそうです。ケンムンという妖怪が棲むという伝説があるののも頷けます。重なった枝は洞みたいになっていて、何かいそうな気配濃厚です。赤い車はホンダのビッツ。7日間乗り続けたレンタカーです。赤い車に乗ってみたかったので、うれしかった。

次いで訪れたのは瀬相港よりもさらに東に行った俵集落の小学校。こちらで、自然布の展示会を開いていると、海宿のスタッフたちにお聞きしたので寄ってみました。

    人口1900人というのに、加計呂麻島にはいくつかの小学校がまだ健在。こちらは6年前から休校になっていますが、再開のめどは立っていないのだそうです。いまは、木工作家や織物作家などがアトリエや展示場所として使っています。

    教室前の土間にいたカニ。この辺にいる沢蟹より大きい。

    芭蕉布の着物です。こちらでは、芭蕉を栽培して紡いで織っている作家・佐田亜矢さんと、麻やくずなど自然の草を採取して布を織っている方とのコラボ展示がおこなわれていました。ひときわ目立つのが、この芭蕉の古い着物なのですが、島の人にとっては古臭くて不要のもの。いまはほとんど捨てられていて残るのはわずかなのだそうです。

    麻と葛の織物。自然の光沢と色がうつくしい。

    こちらも自然布。右は琉球藍で染めたもの。本藍に近い濃紺が出ています。

    芭蕉の糸で織ったタペストリーは佐田さんの作品。島の植物で染色しています。

    芭蕉を採取して糸にする作業は冬行われるそうです。その芭蕉の糸をとるときにうたわれた労働歌がこちら。


    織物創作欲のむくむく湧き上がる展示でした。

    佐田さんの使っている織り機。

    こちらは初めてみましたが、枷にする道具だったかな。ののやというのは、佐田さんの屋号です。

    糸操り機は竹でできていました。


    佐田さんの作品いろいろ。左側のスカーフは、月桃の葉で染めたものだそう。実が赤いから、葉を煮出した液からも赤い色が出るようです。染めてみたい!

     展示見学後、小学校の裏手にある郷土資料館に、佐田さんが案内してくれました。館を開けてくださったのは、この地区の区長さん。彼は、この集落で生まれ育って、中学校卒業後集団就職で大阪へ。40年ほど働いたのち、10年くらい前に戻ってきたそうです。両親の面倒を見るため、彼のように退職後帰島する人もけっこういるということです。

     大きな籠の背負い方を、佐田さんが見せてくれました。

     編みめがうつくしい。この編み方のざるは、諸鈍の施設でもたくさん見かけました。

     籠好きには、うれしい展示。

     あるもので利用の精神、すばらしい。自転車の車輪でできた糸紡ぎ。

     桶を浮かせて水中を見る道具。

     昭和30年代まで使われていたというランプ。区長さんは、私たちと同年の生まれ。その彼が小学校の低学年の頃、やっと島に電気が引かれたのだそう。奄美大島が日本に復帰したのは1958年のこと。「本島から徐々にインフラ整備が行われたので、離島は後になった」と区長さん。石油ランプの掃除はこどもの仕事だったそうですが、「いやだったあ!」と。

     愛知の片田舎で大正末年に生まれた私の母からでさえ、ランプ掃除の話など聞いたことがありません。たぶん、彼女が生まれたときから電灯はあったとおもいます。戦後、インフラ整備が遅れた、という話を島で何気なく聞いていましたが、いま思い返してみると、戦前にも電気が全くひかれていなかったということです! この島は(たぶん沖縄やほかの島々も)、中央からずっと放っておかれたのでしょう。軍事拠点にするなどの利用はさかんにされたのですが。

     薩摩藩に支配されていた時代、奄美全域はサトウキビ栽培が強制され、島民の食糧を作る場所が次々にサトウキビ栽培地に替えられていたそうです。ひとびとは、薩摩藩の役人の目の届かない、山奥の密林のような場所でひそかに米や雑穀の栽培を続けていたそう。区長さんによれば、黒糖をちょっと舐めただけで罪人の刻印である入れ墨をされたとか。「植民地にはなるもんじゃないよなあ」とおっしゃいました。飢饉の折に食べられたのがなり粥。「なり」とは芭蕉の実を解毒して粉にしたものです。それで仕立てたおかゆは「まずかった。二度と食べたくない」と彼。  

      この地方の独特の行事「浜下れ」などのおりに持っていった、いわばピクニック弁当箱。これ、ほしい。
    
      昭和の中ごろまで作られていた、島の典型的な民家。屋根はかやぶきですが、この辺りより小さめで傾斜が急に見えます。

      こちらが内部。暖かい土地ですが、囲炉裏はあったそうです。この囲炉裏で煮炊きをしていました。それにしても狭い。江戸時代の落語に出てくる長屋の一軒分くらい。

      家の建築方法が写真で解説されています。台風の襲来を真っ先に考えての建て方でしょうから、全体は小さめで平屋があたりまえだったようです。

      区長さんや、8年前に島に移住した佐田さんから聞いた話は、なかなか興味深いものがありました。区長さんのように他県に出て働く島の人は昔から多いのですが、他の地方出身者のように、「〇〇県人会」というのはないのだそうです。かわりにあるのが「〇〇(学区)人会」。集落ごと、あるいは学区ごとの結束がつよく、鹿児島県人会はあるのでしょうが、みんな入っておらず、奄美大島出身者の会や加計呂麻島出身者の会はないのだそうです。ないからといって、郷土を思う気持ちが少ないのではなく、非常に狭い地域の「郷土」に対する思いが半端でないのだそうです。

     加計呂麻島は、集落一つ一つが離れていて、集落ごとに風景が違い、文化が違うのだそう。山を隔ててそれぞれが自給自足していた土地だろうから、集落ごとの特色が際立っているのかもしれません。

     俵集落を出て東に。瀬戸内町のガイドブック「まんでい」に載っていたドラム缶桟橋があるのは、木慈。ここで車を止め、森の中へ。ガジュマルを見に行くためです。

途中で一緒になった地元の女性が教えてくれたイチジクの原種。以前、アフリカにあるイチジクの原種、というのをテレビで見たことがありますが、かたちはそっくり。

      森の中のガジュマルはさらに幻想的。

      大木が二本、枝をさしかわしています。

      サトイモそっくりの葉の植物はガガイモ。芋がなるそうですが、かなりの毒だそう。


      ガジュマルのある森に行く途中の広い敷地は、何十年か前の台風でひどい痛手を被り、数軒あった家がすべて立ち退いた場所だそう。一見すると、土砂災害にあったというわけでもなさそうですが、立ち退かないといけないほどの理由が一個だけではなかったのではないかな、と思われました。離島にいることの不自由さが極限に達して退去を決意したのではないかと。

     さて、薩川を過ぎ、西端の集落実久に。こちらは諸鈍と反対に、源氏にゆかりのある土地だそう。日本の南の端の小さな島に、源氏と平家の流離譚がそれぞれ残っているとは、おもしろいことです。

     実久の海は、「実久ブルー」と言われるほど特別に美しい青色なのだそうです。島に到着以来ずっと曇り空しか見ていないわたしたち。ここで、ようやくかろうじて、青い色の海をみることができました。

     実久の集落には、サンゴの石垣があちことに残っています。


     よくできていて、うつくしい。

     石垣にたてかけてある長い棒は、サンゴの中にひそむハブをよけるためだそう。怖くて石垣のそばには近づけませんでした。

     実久の海を後に、薩川にもどり、この日と翌日の宿になるしびらんかに到着。こちらは、こじんまりした普通の住宅です。家の手前の低い石垣に貝がならべられていました。

     道を隔てたところに船着き場が。

   隣は薩川小学校。次の日は学芸会だと、宿の主人から聞きました。

   なんと校庭には奉安殿が。戦後取り壊さなかったのが不思議。

    小学校の斜め道向かいには中学校があります。

    こちらは閉校しているらしい。

     海から山に向かって流れているように見える川。


     海宿でテーブルに飾ってあった植物です。珍しい。

     この花もよく見かけました。

     宿の料理はもりだくさん。

     新鮮な魚料理を満喫しました。

     島で育ったシイだそうです。香ばしくておいしかった。

     


    




          

    



    









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