アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

映画「豚と軍艦」

2023-01-26 22:53:00 | 映画とドラマと本と絵画

  しばらく前に、1961年公開の、今村昌平監督の「豚と軍艦」を見ました。豚と軍艦 - Wikipedia

  舞台は米軍基地のある横須賀。戦後15年たち、高度経済成長期に差し掛かるころなのですが、基地のある横須賀は、米軍相手の娼婦とその娼婦たちを組織するやくざ、中国系やくざ?や日系のやくざなどが利権を争っています。

  経営していた娼館に手入れが入り、資金源を失った地元やくざは、米軍の残飯を手に入れて養豚業をはじめます。長門裕之ふんするチンピラの欣太が主人公。彼は豚の飼育の役目を負わされます。彼の幼馴染み春子の姉は米兵のパンパン。春子も姉や母からパンパンになることを半ば強要されています。二人の家は、みすぼらしい掘立小屋。欣太と春子はお互いに好意を寄せていて、まずしくて汚れた生活から足を洗いたいと切望していますが、ふたりの夢は同じようにみえて違っています。

  欣太が望むのは一攫千金を手にすること、春子の望みは二人で堅気の仕事をしてつましく暮らすこと。

  やくざの組の古株が、分け前をもらおうと地元に戻ってきます。彼を邪魔に思う組長は、組員に命じて彼を海に沈めて殺します。しかしじきに古株のやくざは浮かんできて警察の知るところとなり、欣太とやくざたちはすきを狙って死体をそっと運びだします。ところがある晩、みんなで食べた餃子?の中から欠けた歯がごろっと出てきます。死体を埋めるよう頼まれた組員が、面倒くさがって死体を豚舎に放り込んで豚に食べさせたのです。やることが粗雑で無茶。彼らのありさまを描いた滑稽で、情けないエピソードの一つです。

  すったもんだの末、地元のやくざは争いに負け、頼みの米軍の残飯も手に入りにくくなります。しかも組の金は組員がごっそりネコババ。踏んだり蹴ったりの欣太とやくざたち。ラストに近いシーンでは、豚をぎっしり積んだやくざの数台のトラックが横須賀の街の真ん中で立ち往生。豚の中に潜んだ欣太の逆上で豚が逃げ出し、通りを歩く人々に構わず走り出し、追いかけるやくざたちを踏みつけにします。このシーンは圧巻です。街にあふれる貪欲な豚は、彼らそのもののようででもあり、彼らを踏みつけにする中国系やくざたち、あるいは置いてきぼりにする一般市民のようでもあります。

   そして、何回か写される海に浮かぶアメリカ軍の軍艦と娼婦と戯れる米兵の姿は、終戦直後の風景が15年たっても変わっていないことを表しているようです。

   映画の公開された1961年は、安保条約が改定された翌年。最近知人に借りて、立て続けに、マンガ「日米地位協定」、マンガ「知ってはいけない」、「本土の人間は知らないが、沖縄の人はみんな知っていることー沖縄・米軍基地観光ガイド」を読んだところ。安保条約と日米地位協定が、日本の法律を越える存在であることを、いやというほど知らされました。60年前にできたこの映画は、いろんな意味で見ておいたほうがいい映画だとおもいます。勉強になりました。ただし、古い日本映画のご多分に漏れず、発音が聞き取りにくいのが難点です。

 

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