アンティマキのいいかげん田舎暮らし

アンティマキは、愛知県北東部の山里にある、草木染めと焼き菓子の工房です。スローライフの忙しい日々を綴ります。

「エミリー・ローズ」

2013-01-14 15:10:38 | 映画とドラマと本と絵画
   だいぶ前に、レンタルビデオ店で安売りしていたので買ったDVD(コチラ→)。「衝撃の実話」というキャッチコピーに惹かれたのですが、ホラーみたいだし、聞いたことのない映画なので、なかなか見る気になれなかったものです。

    ふたつきほど前、やっと見ました。コピーどおり、「衝撃」的な話だったので紹介します。

    アメリカの片田舎が舞台です。たぶん70年代の頃のことだと思いますが、厳格なキリスト教徒の家に生まれ育った主人公・エミリーローズは、奨学金をもらって、念願の大学入学を果たします。親の反対を押し切っての自立。街での生活が始まります。

    大学の寮で、彼女はある夜突然幻覚に襲われ、すさまじい痙攣を起こします。以来、たびたび体に異常を感じた彼女は、精神科の治療を受けます。しかし、医学では治せないと感じた彼女は、実家の教区の神父に打ち明けます。

    本人同様、エミリーに悪魔が取り付いていると判断した神父は彼女に治療をやめさせ、教会の規定どおりのやり方(!)で、悪魔祓いの儀式をおこないます。しかし、結局エミリーは命を落します。

    エミリーを診察した精神科医は、神父を被告として告発。神父は、エミリーが襲われた幻覚が、ただの精神病の発作ではないことを、録音したテープや手紙で証明しようと試みます。

    たしかに、エミリーの痙攣も叫び声もただ事ではないのですが、精神病の症状としてすべて説明できる、と精神科医は主張します。

    裁判では、非常に良識のある判決が下されます。陪審員の提案に、裁判長が賛成する形で下されるのですが、この判決には感心しました。

    さて、映画で見る限り、私も、エミリーの発作も幻覚も彼女の身のうちだけで起こった出来事と当然おもいます。彼女は、街での大学生活でカルチャーショックを受け、神と家族への不信を抱き始め、そのことに対する後ろめたさが、いろんな形で彼女を内部から痛めつけたのではないかとおもいます。

    そして、神父に明かしてからは、お互いの強い幻想に飲み込まれ、二人して悪魔の像を頭の中で作り出した。

    素人の私のいいかげんな批評に過ぎませんが、こんなことは、今の心理学や精神分析学などで、もっともっと詳細にしかも的確に説明できる事柄だと思います。

    私が「衝撃」的だと思ったのは、彼女の発作や幻覚ではありません。実在したエミリーのモデルや神父、家族達が、本気で悪魔の存在を信じているらしいことです。どの人も、現代に生きるごく普通の人にみえるのに。

    そしてさらにおどろいたことには、このエミリーのモデルとなった少女の墓には、いまでも訪れる人が後を絶たないというのです。つまり、西洋には今も、悪魔がいると信じている人がかなりいるということ、それにおどろきました。そういえば、何十年も前、「エクソシスト」が公開されたとき、映画館でたくさんの人たちが失神したと聞いたことも、思い出しました。

    この映画の元になった事件は、1976年にドイツでおきたそうです。エミリーのモデルは、カトリック教会から「悪魔に取り付かれた」という正式の認定をうけていたとのこと。私の若い頃に、先進国のドイツで、同世代の女性が「悪魔付き」とみなされ、悪魔祓いをされたということに驚きを禁じえません。

    西洋の服を着て西洋料理を食べて、西洋の文物をたくさん吸収して西洋式の生活をしている私達ですが、根本的に理解していないことがたくさんあるんだろうなということを、あらためて気づかされた作品でした。    

            
コメント
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