(1)米国と中国の覇権争いの対立の影響を受けて自由主義陣営では米国主導の多国間協定が相次いでおり、米国バイデン大統領主催の民主主義サミットが開催されて海洋進出を強める中国包囲網を敷いている。
日米豪印クアッドはインド、太平洋の自由航行、平和、安定を目指して、米英豪オーカスで太平洋軍事同盟を強化し、G7は持ち回りでサミットを開催して今年は広島サミットが開催され中国の力による現状変更問題が焦点のひとつだ。
(2)米英豪オーカスでは米国と豪が豪の原子力潜水艦の建造に向けて協力する協定を打ち出し、すでに仏と豪が進めてきた原子力潜水艦建造計画を一方的にホゴにするもので、これに仏が反発して米仏関係でも波風が立った。
さらに仏マクロン大統領は中国習主席の要請に応じて訪中して、台湾情勢について「欧州は米中いずれにも追随すべきでない」(報道)と発言してこれまでの米国の台湾擁護姿勢に「追随」しない考えを示して中国に配慮した姿勢をみせて、中国の台湾解放への軍事関与が懸念される中で仏の姿勢が国際批判を浴びている。
(3)日本で開催された軽井沢G7外相会合でも仏外相は釈明に追われて、G7広島サミットでもこの問題でのG7の結束が問題になりそうだが、G7、自由主義陣営の対中国包囲の連携を強化したいバイデン大統領は関係修復をはかるべく仏マクロン大統領と電話協議をして「台湾海峡の平和と安定の維持の重要性」を確認した(報道)とされる。
(4)が、そこまでで、そのあとマクロン大統領が発表した声明では「台湾には直接言及せず」(報道)メディアも「台湾を巡り(米仏)2人のリーダーの声明は異なっていた」と報じた。
仏には上述したように豪を巡る原子力潜水艦建造計画の米国の横取り問題が念頭にあり、そもそも仏は伝統的に米国主導の自由主義国、陣営連携には外交上一定の距離を置く独自の姿勢、方針が強くあり、中国とも経済的なつながりを重視して等距離外交を目指すマクロン外交もうかがえるものだ。独メルケル前首相も在任中は経済優先で中国重視政策を進めた。
(5)冒頭例のように中国の海洋進出による一方的な現状変更、米国との経済対立の中で米国は多国間協定を進めて中国包囲作戦を展開しているが、すべての自由主義国が米国主導、意図のそれに従うことでもなく、それぞれの事情、背景、目的もあり、異なり、中国の軍事力を背景にした海洋進出による現状変更、台湾解放の軍事関与に対して結束できればこしたことはないが、そうでないからといって独自の外交方針、姿勢が否定されることでもない。