(1)日本は検証のない国、しない国と書いてきたが、最たるものが政治でいまだに第2次世界大戦の検証もなく、政治家の一部には正しい戦争だったとの思いも残る。72年沖縄返還にともなう核持ち込みの日米密約は米国外交文書公開後も日本政府は存在そのものを否定している。
(2)日銀総裁を最長の10年務め4月に退任した黒田総裁は、自ら進めた大規模金融緩和を自賛して日本経済を回復させたと総括した。超低金利政策で政府の国債依存による毎年100兆円を超える予算を継続して支え、円安株高で大企業、富裕層の利益優遇で安倍元首相からは日銀は政府の子会社発言まであり、政府の金融政策に追随して政府の累計1200兆円の異次元の財政赤字に連続した大型物価高の副作用を残したまま退任した。
(3)この後を受け継いだ植田和男日銀新総裁は就任後初めての日銀金融政策決定会合後の記者会見で、90年代後半以降に実施してきた約25年にわたる日銀の緩和策を1年から1年半かけて分析、検証(レビュー)することを表明した。
(4)植田日銀総裁は日銀審議委員の経験もあり、初の学者出身の日銀総裁としてこれまでの日銀の金融政策のレビューから問題点を洗い出して、残された課題の黒田前総裁の金融緩和の副作用について対応策を示していくことになりそうだ。
学者出身の日銀総裁の信条として、これまで日本の政治、経済で不足していた、あるいはまったく実施してこなかった分析、検証による修正、見直し、反省に取り組む姿勢をみせたのは評価できる。
(5)こちらはどうか、政府は有事の際に海上保安庁を防衛相の下に統制する「統制要領」を決定した。台湾有事は日本の有事というのは地政学上考えられることであり、防衛省は南西諸島に軍備力を増強しており、一方尖閣諸島では中国公船の領海侵犯が日常化して海上保安庁が対策に当たっている。
(6)海上保安庁は警察機関であり、防衛相の指揮を受けることに「強い抵抗感があった」(政府関係者)といわれるが、「日本有事」となれば国として協力するのは必然のことであり、しかしだからといって軍事対応が必要かどうかについて防衛相に追随するだけの判断であってはならない検証力は持ち合わせなければならない。