旅限無(りょげむ)

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北京五輪の内と外 その壱百九拾七

2008-05-01 17:04:18 | チベットもの
■いよいよチャイナ本土に聖火が入りましたが、国内では絶対に抗議活動を許さない!と固く決心している北京政府は、手始めに香港への入国管理を厳格化しているそうです。しかし、外交関係と言うのは双務性を持っていますから、追い返された方の国でも相応の対抗策を講じますぞ。既に留学生たちが五星紅旗を林立させて傍若無人に暴れ回った国々では、あれこれとチャイナとの付き合い方を考え直しているようですからなあ。

■日本のマスコミの中には、長野市での聖火騒動をすっかり忘れてしまったかのように、追跡取材を止めてしまった所も多いようですが、その他のマスメディアも「何事もなく」終了した事にして済まそうとしている印象があります。本当にそうなのか?と疑って掛かって真相と伝えるのがジャーナリズムの使命だと思うのですが……。その点、積年の恨みが爆発した韓国では、聖火騒動の決着はなかなか着かない模様です。


ソウル警察庁は29日、北京オリンピック聖火リレーの会場周辺で暴力を振るった疑いがある中国人容疑者らの写真を確認し、その行方を追っていることを明らかにした。……聖火リレーのスタート地点だった松坡区・オリンピック公園前での聖火リレー阻止集会の会場に向かおうと自転車で移動していた40代の韓国人が集団暴行を受けている。警察は写真を精密判読した結果、こぶしや足、旗ざおなどを使い暴行を加えた疑いを持たれている容疑者3人のうちの1人が、釜山市内の大学に所属する中国人留学生だと特定した。残り2人についても釜山地域から団体で観光バスに乗り上京した事実を把握し、捜査担当チームを釜山に派遣した。

■合法的な集会に向かっているところを待ち伏せして集団で暴行!とは、一体、自分たちが何処に居ると思っているのでしょう?とは言っても、自国内でやったら一生を棒に振るのは確実ですが……。韓国内に、あれほど多くのチャイナからの留学生が居る!という事実にも驚かされましたが、同時に、受け入れ先となっている大学では、奇妙な「正しい歴史認識」を持ち込まれて対応に御苦労が多いだろうなあ、と想像した次第です。たかが聖火リレーで共産党ゲリラ気取りで「待ち伏せ攻撃」をするくらいですから、大学での日常生活でも担当者が持て余すような行動が多いのではないでしょうか?「愛国教育」恐るべし!ということなのでしょうなあ。


警察はこれまでの資料判読と目撃者証言などから、これら中国人に、暴力行為など処罰に関する法律のうち集団暴行の条項が適用される可能性が大きいとみている。これは3年以下の懲役や750万ウォン(約78万円)以下の罰金処罰となる。……聖火リレーゴール地点前にあるソウル・中区のプラザホテルに設置された防犯カメラ2台を分析し、戦闘警察隊員の頭にけがを負わせた容疑者のうち1人を特定した。27日午後5時20分ごろ、中国人100人余りがプラザホテル内でチベット独立の旗を持っていたチベット人5人を追いかけホテルに乱入した際、止めようとした戦闘警察隊員を暴行した疑い。

■「三つ子の魂、百まで」と申しますが、チベット人地域では有り触れた弾圧の光景が、しっかりと若者の脳内に刻み込まれているのでしょう。「戦闘警察隊員」の頭部を狙い、チベット人を「100人VS5人」で襲うというのも恐ろしい話ですが、ホテル内でも執拗に追い回すとは、実に念が入ったことですなあ。警察官を標的にするのですから、韓国を完全に属国扱いしているとしか思えません。まあ、自国の公安警察官に手を出したら国家反逆の重罪ですからなあ。韓国だからこそ起こった狂気の事件なのでしょう。韓国の怒りは尤もです!

■チベット人を袋叩きにしようと100人余りが追い回す!こういう光景は是非とも日本でしつこく放送すべきでしょうなあ。子供は親の背中と行為を見て真似て育つのですから、親(国)がチベット人に何をしているのかを、孝行?息子たちが外国で宣伝してくれております。
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北京五輪の内と外 その壱百九拾六

2008-05-01 04:34:23 | チベットもの
■傍迷惑な聖火は、いよいよ香港に入った由。カンフー映画のジャッキー・チェンが張り切っているそうです。聖火リレーを妨害する者には「カンフーをお見舞い」するとか……。人権問題とは無関係に、世界中のマスコミが注目する中でジャッキー・チェンを倒そうと果し合いを試み猛者は出現するのでしょうか?カンフー映画の俳優が何を言おうと大した問題ではありませんが、大量の人員を動員して力づくで強行されている聖火リレーに関しての軽口は不愉快な響きを持っていますなあ。

■香港の前がヴェトナム、その前が平壌で、そのまた前が韓国を通過した聖火ですが、その韓国では凄まじい「激闘」が繰り広げられたそうで、その後も韓国側は公式ルートで北京政府を責め立てている模様です。


……韓国の警察当局は暴力をふるった中国人留学生を逮捕するため捜査班を設置、逮捕後は国外退去処分とする方針だ。4月27日に行われた聖火リレーには約8000人の中国人留学生らが集結。チベット弾圧や中国の脱北者強制送還に抗議する脱北者や市民らと衝突騒ぎを起こし、負傷者や逮捕者4人を出した。なかでもゴールのソウル市庁舎前のホテルで起きた騒ぎが韓国の若者らの怒りに火を付けた。数人のチベット支援者がホテルに逃げ込んだところ、大勢の中国人留学生に取り囲まれ、これを止めに入った警察官が棒で殴られ負傷。集団暴行の画像がネットに流れて騒ぎが広がった。

■この画像は動かぬ証拠となりますから、非常に珍しいことに北京政府は呆気ないほど素早く「遺憾の意」を表明!よほど酷い事件だったのでしょうなあ。チャイナが少しでも頭を下げたのですから……。警察官をボコボコにするというのは、その国の主権をまったく認めていないことを意味しますから、韓国としては怒りを爆発させるのも当然!


在韓中国人留学生協会のサイトには「外国の首都でわがもの顔で暴力を振るう蛮行」との非難が集中。画像でとらえられた容疑者の中国人留学生の実名や連絡先が流され、反中感情は日増しに高まっている。韓国政府は中国政府に対し再三、遺憾の意を伝えたほか、29日の閣議では韓昇珠首相が「今回のことはわが国民の自尊心を相当に傷つけた面がある。これを回復する法的、外交的措置が伴うべきだ」と述べ、事態を重視する姿勢を強調した。

■チャイナ国内では、馬鹿馬鹿しい根も葉もない噂話が発端となったフランスに対する不買運動が大問題になっていますが、韓国がチャイナ製品をボイコット!するのは道理に適っていると思われます。日本ではイチコロ餃子殺人未遂事件が発端となって、実質的なチャイナ産の食品類が嫌われていますが……。


一方で、警備が違法デモに集中し、中国人留学生に甘かったとして「聖火リレーを守るのか、市民を守るのか」と政府批判が上がっているほか、29日付中央日報は「中国政府や中国人が韓国に行った無礼は昨日や今日のことではない。韓国の高句麗史を自分たちの歴史に編入させようとした」と、中国に対する不信を訴える社説を掲載した。韓国の北朝鮮人権支援団体のメンバーは30日、中国の寧賦魁駐韓大使に対する告訴状を警察に提出。ネット上ではチャイナ・タウンの建設阻止運動まで始まっている。……来月に予定される李明博大統領の訪中にも影響が出るおそれがある。
4月30日 産経ニュース

■「高句麗」の歴史問題は、以前にも拙ブログで取り上げました。隋が滅んだのは高句麗への3次にわたる遠征が原因でしたし、唐の太宗も苦労したのが高句麗でした。チャイナとしては、モンゴル人が開いた元朝の歴史を取り込むことで、チベット領有を正当化したのと同じ理屈で高句麗の歴史も取り込む必然性が有ったのでしょうが、韓国側が怒のは当然の話。本来なら、高句麗直系を自認する北朝鮮の将軍様が、この件に関しては最も激しい怒りを表明しなければならないのですが、第二次朝鮮戦争を予定している立場上、北京政府との喧嘩は百害あって一利なし、と計算しているのでしょうなあ。

■長野市での聖火リレーの前には自民党のエライ政治家が北京に行き、リレー後には中曽根大勲位がシンポジウム参加を名目に北京に入っております。日本はホイホイ首相を担いで洞爺湖サミットを「大成功」させねばなりませんから、北京五輪の成功とバーター取引に必死なのでしょう。長野市内が五星紅旗で埋め尽くされても、大した反チャイナ気運は盛り上がらなかったようですから、親中派の政治家センセー方も動き易いようです。


ソウルで27日に行われた北京五輪聖火リレーの際に中国人留学生らから暴力を受けた韓国の北朝鮮人権支援団体メンバーらが30日、中国の寧賦魁駐韓大使に対する告訴状を警察に提出した。中国大使館が留学生らを動員し、騒動の原因をつくったと主張している。……警察当局も監視カメラや報道映像などを通して、当時暴行に関与した中国人留学生の特定に力を注いでいる。
4月30日 時事通信

■暴力は犯罪として捜査対象になるのは当然で、「愛国精神」などは情状酌量の材料にもなりません。もしも、そんな事が通ったらテロを容認することになりますから、韓国側の対応は正当なものです。北京政府は対応に苦慮している模様で、暴れた留学生の「愛国精神」を認めるコメントを発表しているようですが、これこそ「加油(がんばれ)」ではなく、火に油を注ぎこむことになるでしょうなあ。
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北京五輪の内と外 その壱百九拾伍

2008-05-01 04:32:46 | チベットもの
■さてさて、世界最大の拉致犯罪の被害を受け、毒入り食品を売りつけられている日本ですが、巡り巡って日中友好の切り札は、今も昔もパンダのようです。北京五輪の可愛くないマスコットにパンダも含まれている事など、誰も覚えていないのでしょうが、日本の外務省と自民党の政治家はしっかり記憶しているのでしょうなあ。でも、パンダはチベットの動物です。悔しかったら、何でも喰ってしまうチャイナの伝統の中から「パンダ料理」の偽造ではないレシピを探し出してみろ!とチベットを支援する人達は言っているとか……。

10年ぶりとなる中国国家主席の来日を控え、日本側がパンダ2頭の借り受けを申し入れ、中国も応じる方向で調整していることが28日、分かった。5月7日に予定される福田康夫首相と胡錦濤主席の首脳会談での合意を目指している。中国製ギョーザ中毒事件や東シナ海ガス田開発問題など日中間に懸案が山積する中、両政府はパンダを「親善大使」として友好ムードを盛り上げたい考えのようだ。
 政府筋によると、東京・上野動物園が雄、雌一頭ずつを受け入れることを想定している。同動物園で現在飼育されている雄パンダのリンリンは22歳7カ月と高齢のため、29日から一般公開が中止される。
4月29日 時事通信

■「安全な食糧」も「領土内の地下資源」も求めず、パンダ2頭で手を打とうと言うのなら、これはトンデモない話です。自民党内でも最も日中友好に熱心と言われる二階議員の地元選挙区・和歌山県には、佃煮にするほどパンダが居るとか……。噂によりますと、保護活動の援助資金やら何やらを含めると、パンダ1頭のレンタル料金は年間で1億円になるそうですなあ。パンダが絶滅危惧種になってしまったのは、チベットが「解放」されて数十年も経ってからでした。日本のパンダ・ファンの皆さんも、そんな事実を知った上で「パンダは可愛いなあ」と言って頂きたいものです。

■4月末日、上野動物園のリンリンが死亡。北京五輪大会が開催される年に、初めて上野公園からパンダの姿が消えるというのも、因縁めいた話ではあります。報道によりますと、リンリンの年齢は22歳7ヶ月で、これは人間に換算すると70歳半ばくらいだそうですなあ。何だか「後(末)期高齢者保険」を思い出させるような、気になる年齢でもあります。小泉政権が作って福田政権が実施してしまった高齢者イジメの保険制度は、露骨に「75歳」で線引きして生命に格差を設けようとしているようにしか見えません。パンダのリンリンは世界で5番目の高齢だったそうですが、もしも日本人として生まれていたら、「後期高齢者保険証」を送り付けられる直前にミマカッタことになります。日本の厚労省は、リンリンを高齢者の模範として表彰でもしたら如何でしょう?

■日中友好を担当する外務省としては、パンダは単なる珍獣ではありません。ランランとカンカンが37年前に来日した時、その肩書きは「親善大使」でありました。大使ですから、受け入れ側は大変な気の使いようだったわけですなあ。担当した飼育係は不自然なほど盛り上がっていた日中友好ムードの中で、「図鑑でしか見た事がない」動物を扱わねばならなかったのですから、大変なご苦労をしたそうです。確かに色も姿形も愛らしい興味深いチベット土着の野生動物ではあります。とは言え、聖火トーチほどではないにせよ、些か傍迷惑な大使様でもあったのかも知れませんなあ。

■何が何でも首都東京にパンダが居なければならないわけでもなく、暫定税率で支えられている道路特定財源を死守する自民党の二階さんの地元では、悲願だった高速道路が着工とか……。「紀伊半島一周道路」の完成を求める大規模なデモ行進が終了したばかりの和歌山県。その白浜町のアドベンチャーワールドにはチャイナから高額でレンタルされているパンダがごろごろおります。「パンダを見たければ白浜へ!」と宣伝すれば地元の人達も大喜びでしょうし、「日中友好のため!パンダのため!」とパンダを錦の御旗にすれば道路行政にも弾みがつくかも知れませんなあ。でも、野生動物のパンダを外交であれ、内政であれ、政治に利用するのは考え物でしょう。