四川大地震の震源地周辺を含む、同省アバチベット族・チャン族自治州には救援活動の一方で警戒のために大量の軍部隊が投入されているもようだ。被災地での救済と復興をめぐり社会が不安定化した場合、チベット人社会にも影響が及びかねないことに中国当局が警戒感を見せる中、成都市内のチベット族居住区では、政治的な話には誰もが口を閉ざしている。
■ずかずかと報道陣が急に入り込んで来たら、いつでも本音など語る人はいません。どうして、こういう物騒な取材をするのでしょう?
「知らない。そんなこと知らない」。成都市内のチベット族居住区。一帯には50軒ほどのチベット系店舗がある。多くが仏教関係の品物を商う。ここでは地震による直接的な損害はあまり目につかないだが、周辺はチベット騒乱の際、当局が数百人を動員し騒乱の波及を警戒した区域だ。「漢族とチベット族の緊張が解けたかにみえる」。仏像などを扱うラムさん(36)は地震発生後、民族間の対立感情が元に戻ったと語る。しかしラムさんは、3月のチベット騒乱で大量の軍が取り巻いた甘孜チベット族自治州甘孜の出身。「故郷の家が、震の影響をさほどは受けていないと思う」と話すが、チベット騒乱に話を向けると、「政治的なことはよくわからない」と繰り返すだけだ。
■公安警察は大震災より怖いという現実が伝わる話ですが、あまり無茶な取材は止めて欲しいですなあ。たとえ天災の話でも、チベットの故郷を話題にするのも危ない、危ない。ただ、「分からない」という答えの中に、北京政府が押し付ける「正しい歴史認識」に対する一種の拒否が含まれている点は押さえておきましょう。
「民族対立? 緊張してないよ。地震の影響もない。政治的なことはわからない」。アバ・チベット族チャン族自治州紅原県出身のダーさん(36)もほぼ同様。10人ほどに話を聞いたが、誰もが民族や政治の話になると途端に表情を変えた。治安関係の当局者によると、紅原県では部隊が今も駐留を続け警戒態勢がとられている。あるチベット族女性は「今も電話で連絡がとれない」と緊張の様子を示唆するのが精一杯だ。
2008年5月20日 産経ニュース
■紅原県という地名は、勿論、チベット人にも羌族にも何の関係も無いものです。有名な毛沢東の「長征」で、大渡河の激戦と並ぶ苦難の行軍をした大湿原が広がる場所に、後から付けたのが「紅原」だそうですから、決して赤い色の草原ではありません。
被災地各地に展開する救援部隊の中には、自動小銃をトラックに積んだ部隊があった。不測の事態への対処だけでなく、チベット人社会の動揺を警戒しているかのようだ。成都では「漢族がチベット族に襲撃された」という未確認の情報もあった。
■一度もチベット文化圏に含まれたことがない成都で、チベット人が漢族を襲う可能性は限りなく小さいでしょう。もしも暴力事件が起こったのなら、それは止むに止まれぬ反撃行為かも知れません。昔から、成都は茶・絹・塩などの交易でチベットと縁が深い場所でありましたから、結構、仲良く暮らしていられたようです。
四川省は、チベット自治区に次ぎ、チベット族が最も多い省で、チャン族なども住む。今後、地震の焦点が「救助」から「救済と復興事業」に移るなか、学校や病院、マンションなど簡単に倒壊した建造物をめぐって、訴訟が続発することが予想される。また、地震発生直後の政府の初期対応や財産を失った被災者への対応をにからみ、今後、政府批判も噴き出しかねない。また、社会が不安定化した場合、少数民族問題に影響することもあり得る。しかし、不安材料が微妙に絡み合う現状に直面しつつも、中国当局筋は「警戒は解けない」と断言している。
5月20日 産経ニュース
■ダライ・ラマ法王が世界に訴えている「人権問題」とは別に、生存権や財産権の問題が噴出するのは避けられないでしょう。でも、そこに少数民族に対する蔑視や疑念が混入すると、問題がややこしくなりそうですなあ。長期化するのが分かっている海外からの支援活動にしても、中には少数民族限定で行われる活動も出て来ることも想定されます。何せ、現段階でも「パンダを救え」運動が始まっているのですから……。-------------------------------------------
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■ずかずかと報道陣が急に入り込んで来たら、いつでも本音など語る人はいません。どうして、こういう物騒な取材をするのでしょう?
「知らない。そんなこと知らない」。成都市内のチベット族居住区。一帯には50軒ほどのチベット系店舗がある。多くが仏教関係の品物を商う。ここでは地震による直接的な損害はあまり目につかないだが、周辺はチベット騒乱の際、当局が数百人を動員し騒乱の波及を警戒した区域だ。「漢族とチベット族の緊張が解けたかにみえる」。仏像などを扱うラムさん(36)は地震発生後、民族間の対立感情が元に戻ったと語る。しかしラムさんは、3月のチベット騒乱で大量の軍が取り巻いた甘孜チベット族自治州甘孜の出身。「故郷の家が、震の影響をさほどは受けていないと思う」と話すが、チベット騒乱に話を向けると、「政治的なことはよくわからない」と繰り返すだけだ。
■公安警察は大震災より怖いという現実が伝わる話ですが、あまり無茶な取材は止めて欲しいですなあ。たとえ天災の話でも、チベットの故郷を話題にするのも危ない、危ない。ただ、「分からない」という答えの中に、北京政府が押し付ける「正しい歴史認識」に対する一種の拒否が含まれている点は押さえておきましょう。
「民族対立? 緊張してないよ。地震の影響もない。政治的なことはわからない」。アバ・チベット族チャン族自治州紅原県出身のダーさん(36)もほぼ同様。10人ほどに話を聞いたが、誰もが民族や政治の話になると途端に表情を変えた。治安関係の当局者によると、紅原県では部隊が今も駐留を続け警戒態勢がとられている。あるチベット族女性は「今も電話で連絡がとれない」と緊張の様子を示唆するのが精一杯だ。
2008年5月20日 産経ニュース
■紅原県という地名は、勿論、チベット人にも羌族にも何の関係も無いものです。有名な毛沢東の「長征」で、大渡河の激戦と並ぶ苦難の行軍をした大湿原が広がる場所に、後から付けたのが「紅原」だそうですから、決して赤い色の草原ではありません。
被災地各地に展開する救援部隊の中には、自動小銃をトラックに積んだ部隊があった。不測の事態への対処だけでなく、チベット人社会の動揺を警戒しているかのようだ。成都では「漢族がチベット族に襲撃された」という未確認の情報もあった。
■一度もチベット文化圏に含まれたことがない成都で、チベット人が漢族を襲う可能性は限りなく小さいでしょう。もしも暴力事件が起こったのなら、それは止むに止まれぬ反撃行為かも知れません。昔から、成都は茶・絹・塩などの交易でチベットと縁が深い場所でありましたから、結構、仲良く暮らしていられたようです。
四川省は、チベット自治区に次ぎ、チベット族が最も多い省で、チャン族なども住む。今後、地震の焦点が「救助」から「救済と復興事業」に移るなか、学校や病院、マンションなど簡単に倒壊した建造物をめぐって、訴訟が続発することが予想される。また、地震発生直後の政府の初期対応や財産を失った被災者への対応をにからみ、今後、政府批判も噴き出しかねない。また、社会が不安定化した場合、少数民族問題に影響することもあり得る。しかし、不安材料が微妙に絡み合う現状に直面しつつも、中国当局筋は「警戒は解けない」と断言している。
5月20日 産経ニュース
■ダライ・ラマ法王が世界に訴えている「人権問題」とは別に、生存権や財産権の問題が噴出するのは避けられないでしょう。でも、そこに少数民族に対する蔑視や疑念が混入すると、問題がややこしくなりそうですなあ。長期化するのが分かっている海外からの支援活動にしても、中には少数民族限定で行われる活動も出て来ることも想定されます。何せ、現段階でも「パンダを救え」運動が始まっているのですから……。-------------------------------------------
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