……87年以降の10年間に延べ1000機以上の民間機によるチベットへの兵力輸送が実施され、軍隊と民間、平時と戦時を結合した国防空輸緊急支援体制が形成されている。91年には中国民航の旅客機を使用して、新疆のカシュガルからタクラマカン砂漠を越えて西安に近い陝西省咸陽までの西部大空輸作戦が実施された。この空輸作戦にはチベットの阿里高原、新疆のカラコルム高原、パミール高原などに駐屯する辺境防衛部隊が参加した。……『中国の軍事力』平松茂雄著
■空挺部隊に関しては、専用の大型輸送機から救援物資を投下し、隊員が次々と降下する「雄姿」の報道は、どうも宣伝用のパフォーマンスらしいぞ、という疑惑が『週刊文春』5月29日号に出ております。映像を見た自衛隊関係者によりますと、「高度5000メートルからの降下」ならば専用のパラシュートで「自由降下」しなければならないのに、低空から敵陣の背後を強襲するための「空挺降下」をしているのは解せない。「自動索降下」なのに降下間隔が開き過ぎているから着地地点が広がって集合するのに時間が掛かり過ぎる、疑惑の極め付きは、隊員が携行する荷物の少なさを見れば、数日間の真面目な救援活動など想定していないのは明らかだ!という内容です。
■同誌には、「ヘリコプターの姿が見えない!」という重大な指摘も出ていました。濃霧が発生していないのに、本来なら大活躍するはずのヘリコプターが出動していないのは何故だろう?という専門家からの疑問です。この疑問に関連した重要な情報が、『正論』6月号に掲載された前掲書の著者である平松氏の「中国軍はいかにしてチベットを支配したか」という論文に出ています。
……86年9月、チベット・アリ高原で、ヘリコプターの飛行に成功……高原部隊に緊急即応機動能力を与えるばかりか、物資の輸送、救難などに使用できる。インド東部国境マクマホン・ラインに近く、チベット地区で唯一道路のない墨脱県の駐屯部隊へは、ヘリコプターにより物資を輸送できるようになったばかりか、緊急事態に迅速に対処できるようになった……チベットでは、ヘリコプターによる国境地帯のパトロールが恒常化している。『解放軍画報』に真っ白い雪を冠って長々と連なる山岳地帯をヘリコプターが飛ぶ写真が掲載されたことがある。当時、チベットで中国軍がヘリコプターを使用していることをある軍事関係者の会合で話したところ、軍事専門家や自衛官OBたちは言下に否定したことがある。……
■標高5000メートルを越える山岳地帯で軍用ヘリコプターが自由に飛び回るというのは、技術的にも操縦技能の面でも大変な困難があるという事なのでしょうなあ。それを人民解放軍は何とか克服した!というのは、まだまだ軍事機密に含まれる重要な事なのかも知れません。V字谷が崩落して道路が随所で寸断されて孤立した山間の小さな町を、自由自在に飛び回って救命救援活動をする雄姿を公開するわけには行かないのは、万が一、トラブルが発生して緊急着陸やら最悪の場合は墜落!などという恥ずかしい事が起こったら困るからかも?でも、そんな事を言っている場合ではないでしょうなあ。
■同論文は前掲書と同様に、いろいろと貴重な情報が詰まっているのですが、今もさかんに救援募金や寄付を募る動きが官民の区別無く盛り上がっている時だからこそ、知っておくべき話があります。
……96年6月から、青蔵公路に沿ってラサから青海省の西寧を経て甘粛省の蘭州を結ぶ全長1300余キロメートルの光ファイバー・ケーブルが中国軍によって敷設され、98年に開通した。こうして青蔵公路は、交通、エネルギー、通信が一体となった大動脈に発展している。因みに広州~昆明~成都を結ぶ光ファイバー・ケーブルの敷設は、わが国のODA援助により実現された。軍事目的で敷設され、工事を担当した組織は中国軍にもかかわらず、著者を除いてわが国では誰もこの点を指摘した者はいなかった。……
■指摘されている青蔵公路が整備された98年から、偶々、青海省に留学した経験を持つ者としましては、その後も青蔵鉄道の高規格複線化工事、それに沿って高規格軍用弾丸道路が建設される様子を「通学」する度に見せ付けられた事を思い出しますなあ。北朝鮮という変な国に善意の援助を送ると、最初に軍隊が巻き上げ、残った物の大部分は横流しされて闇取り引きされるという話を何度も聞かされている日本人が、チャイナと北朝鮮とは別の国だから、などと呑気な事を考えていたらトンデモないことになるかも知れませんぞ。
■空挺部隊に関しては、専用の大型輸送機から救援物資を投下し、隊員が次々と降下する「雄姿」の報道は、どうも宣伝用のパフォーマンスらしいぞ、という疑惑が『週刊文春』5月29日号に出ております。映像を見た自衛隊関係者によりますと、「高度5000メートルからの降下」ならば専用のパラシュートで「自由降下」しなければならないのに、低空から敵陣の背後を強襲するための「空挺降下」をしているのは解せない。「自動索降下」なのに降下間隔が開き過ぎているから着地地点が広がって集合するのに時間が掛かり過ぎる、疑惑の極め付きは、隊員が携行する荷物の少なさを見れば、数日間の真面目な救援活動など想定していないのは明らかだ!という内容です。
■同誌には、「ヘリコプターの姿が見えない!」という重大な指摘も出ていました。濃霧が発生していないのに、本来なら大活躍するはずのヘリコプターが出動していないのは何故だろう?という専門家からの疑問です。この疑問に関連した重要な情報が、『正論』6月号に掲載された前掲書の著者である平松氏の「中国軍はいかにしてチベットを支配したか」という論文に出ています。
……86年9月、チベット・アリ高原で、ヘリコプターの飛行に成功……高原部隊に緊急即応機動能力を与えるばかりか、物資の輸送、救難などに使用できる。インド東部国境マクマホン・ラインに近く、チベット地区で唯一道路のない墨脱県の駐屯部隊へは、ヘリコプターにより物資を輸送できるようになったばかりか、緊急事態に迅速に対処できるようになった……チベットでは、ヘリコプターによる国境地帯のパトロールが恒常化している。『解放軍画報』に真っ白い雪を冠って長々と連なる山岳地帯をヘリコプターが飛ぶ写真が掲載されたことがある。当時、チベットで中国軍がヘリコプターを使用していることをある軍事関係者の会合で話したところ、軍事専門家や自衛官OBたちは言下に否定したことがある。……
■標高5000メートルを越える山岳地帯で軍用ヘリコプターが自由に飛び回るというのは、技術的にも操縦技能の面でも大変な困難があるという事なのでしょうなあ。それを人民解放軍は何とか克服した!というのは、まだまだ軍事機密に含まれる重要な事なのかも知れません。V字谷が崩落して道路が随所で寸断されて孤立した山間の小さな町を、自由自在に飛び回って救命救援活動をする雄姿を公開するわけには行かないのは、万が一、トラブルが発生して緊急着陸やら最悪の場合は墜落!などという恥ずかしい事が起こったら困るからかも?でも、そんな事を言っている場合ではないでしょうなあ。
■同論文は前掲書と同様に、いろいろと貴重な情報が詰まっているのですが、今もさかんに救援募金や寄付を募る動きが官民の区別無く盛り上がっている時だからこそ、知っておくべき話があります。
……96年6月から、青蔵公路に沿ってラサから青海省の西寧を経て甘粛省の蘭州を結ぶ全長1300余キロメートルの光ファイバー・ケーブルが中国軍によって敷設され、98年に開通した。こうして青蔵公路は、交通、エネルギー、通信が一体となった大動脈に発展している。因みに広州~昆明~成都を結ぶ光ファイバー・ケーブルの敷設は、わが国のODA援助により実現された。軍事目的で敷設され、工事を担当した組織は中国軍にもかかわらず、著者を除いてわが国では誰もこの点を指摘した者はいなかった。……
■指摘されている青蔵公路が整備された98年から、偶々、青海省に留学した経験を持つ者としましては、その後も青蔵鉄道の高規格複線化工事、それに沿って高規格軍用弾丸道路が建設される様子を「通学」する度に見せ付けられた事を思い出しますなあ。北朝鮮という変な国に善意の援助を送ると、最初に軍隊が巻き上げ、残った物の大部分は横流しされて闇取り引きされるという話を何度も聞かされている日本人が、チャイナと北朝鮮とは別の国だから、などと呑気な事を考えていたらトンデモないことになるかも知れませんぞ。
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