旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

パンダ大震災 其の七

2008-05-21 22:42:34 | 外交・情勢(アジア)
■5月21日、日本の救助隊の皆さんが無事に帰国しました。本当にお疲れ様でした。余震と感染症と高温多湿の困難に耐え抜いた英雄たちに、敬礼!であります。それにしても、報道によるとロシア隊だけが1人の救出に成功していて、韓国と日本から駆けつけた救助隊は遺体を掘り出す作業に徹しなければならなかったのには、何や良からぬ裏が有りそうな……。

■「ヤラセ」という概念を持たない国のマスコミ陣は、外国の救助隊にもあれこれと注文をつけて好き勝手な取材をしていたそうですなあ。「正しい宣伝」ばかりが溢れている中で、正確な情報を見つけるのは大変です。デマが驚くほど早く広く伝染して行くのは仕方がないのでしょうなあ。「正しくないデマ」を消して回るのには、「正しい宣伝」に使う労力の何倍も投入しなければならないでしょう。

■人命を救うよりもパンダに対する気遣いの方が目立つような気がするのも、「正しい宣伝」の影響なのか?それとも、多過ぎる人口に対して外交的な価値の高い希少動物の方が政府にとっては大切だ!という恐ろしい本音が透けて見えているのでしょうか?


2008年5月15日、武装警察四川森林総隊は14日、大地震の被害が大きかったブン川県にある臥龍自然保護区ジャイアントパンダ保護研究センターに到着。パンダ40頭を救出した。中国中央電視台(CCTV)の番組「央視国際」が報じた。臥竜自然保護区では道路のいたるところでガケ崩れが発生、家屋の90%以上が崩壊した。同森林総隊は、大地震の発生に驚いて保護区の森林内に逃げ込んだパンダや木々の下敷きになったパンダ40頭を救出したが、4頭がいまだに行方不明のまま。現在兵士多数を動員して大規模な捜索活動を行っている。臥竜自然保護区には100頭以上のジャイアントパンダが生息しているが、その中には台湾に贈られる予定の団団(トゥアントゥアン)と圓圓(ユエンユエン)もいる。この2頭はすでに無事が確認された。……
5月16日 Record China

■人間の被災者1000万人とも言われているのに、そちらの方の救助状態を示す数値が不正確で、予測値にしても幅が有り過ぎます。その一方で、パンダの救出に関する報道の決め細やかさは、一体、どう理解したら良いのでしょうなあ。家族や親戚の消息が分からず、夜も眠らない人達が数百万人もいるというのに、日本のパンダ好きも激減するかも知れませんぞ。ひょうきんな顔と愛らしい動きが人気のパンダですが、それは平和な時の話で、こうした緊急事態に救出されたパンダの姿を目にすると、単純に可愛い!などとは言ってられませんからなあ。


……同保護区のパンダ保護研究センターには外国人研究者50数人が長期滞在していたが、全員無事とのこと。

■との情報も添えられていますが、オカラ工事で建てられた可能性が最も低いはずの研究センターでも、大きな被害が出ているのは気になるところであります。


……中国の四川大地震。同省にゆかりがある阪神間の人たちの不安も高まっている。芦屋市……の……Kさんは、同省に生息するパンダ保護のため養育費を送るなど交流してきたが、現地関係者と連絡が取れないまま。祈る気持ちでメールを送っている。……一般の人が養育費を送って成長を見守る制度がある。動物保護活動に関心があったKさんは99年から6回、現地を訪ね、メスのパンダ「イエイエ」に養育費を送ってきた。イエイエは昨年双子を産んだといい、吉良さんは年内に訪問する予定だった。……Kさんは「現地は悲惨な状況だろうが、無事でいてくれることを信じている。日本からどんな形で力になれるのか考えたい」と話した。
5月15日 毎日新聞〔阪神版〕

■毎日新聞の地方版に掲載された記事ですが、拙ブログで取り上げるべきか悩みましたが、日中友好とパンダとの関係を象徴する、一つのエピソードとして人名を伏せて引用しました。記事に出ている吉良さんの個人的な思いや趣味に関して、他人がとやかく言うべきではありませんが、こうした記事を15日の段階で書こうと思う記者と、掲載を決定したデスクの考え方には大いに違和感を覚える次第です。動物愛護を謳い上げるには、実に悪いタイミングだったのではないでしょうか?このような記事が誤解を生んで「人命軽視」の濡れ衣を着せられないことを祈るばかりであります。パンダに異様な愛情を持っていることで有名な黒柳徹子さんでさえ、マスコミに下手なコメントを出していないようですなあ。勿論、パンダ効果を課題に期待したホイホイ首相もパンダ・レンタルに関してはまったく語っていないようです。

北京五輪の内と外 その弐百四拾

2008-05-21 16:33:21 | チベットもの
……76年以降、四川での大地震はなく、今年2月に康定県でM4・7の地震が発生したときは、大地震の予兆ではないかという声も出た。今回の震源地となったブン川県はチベット高原と四川盆地の境界をなす約300キロの竜門山断層の上にある。……建物の8割が倒壊したという北川県のがれきの映像をみると、ブロックを積み上げて薄っぺらいコンクリートでくっつけただけの壁や、細い針金程度の芯を入れたコンクリート塊が見えている。重慶市梁平県や都江堰市では学校校舎や病院といった公共施設まで崩れた。原因の一つは建物の老朽化とも報じられているが、専門家はそれだけではないという。

■「諸行無常」の仏教を信仰するチベット人にとって、大きな地震で寺院や家屋が崩れても、生き残った人達がせっせと建て直して再び信仰生活に戻るだけですが、ラサやシガツェなど密集型の都市は少ないし、寺院や裕福な家は案外と太い木材をふんだんに使って頑丈な造りになっていたりします。豊かでない農民の家はほとんどが平屋なので、オカラ造りの床が抜けて瓦礫の下敷きになるようなことも無いと思われます。草原でテント暮らしをしている牧民ともなれば、家畜が先に騒ぎ出し、落石や地割れに注意すれば何とか難は避けられそうです。

■従って、巨大な断層の上にオカラ造りの高層建築を建て並べたのはチベット人ではないのであります。商売や教育のために、こうした急造の町に出て来ているチベット人も居るのでしょうが、数は少なそうです。


中国では唐山地震以降、建築物の耐震強度が規定され、一般住宅でも強度7や強度8が求められている。……しかし13日、不動産サイトのオンライン座談会に出席した北京市建築工程研究院副総工程師の劉航氏は「北京や上海の建築のような計画から設計、施行まで厳しく安全にこだわって造られた建築物はまだいいが、地方には正規の規格に従わずに建てられる建物がある」と指摘。貧しい地方都市の開発は規格を無視した安普請が多いことを示唆した。……

■「北京や上海の建築」が、すべて安全基準を守って施工されているのかどうか、それは本物の大地震が来てみないと誰にも分からないのではないでしょうか?特に長江の河口デルタ地帯に位置する上海の場合、仮に内部構造がしっかりしていても、地盤が液状化したらどうなるのでしょう?既に超高層建築の足元では、地盤沈下が進んでいるとか……。


ブン川県を知る在青海省の日本人学者によると、地域の少数民族家屋は急峻な谷にレンガをつんで泥で固めたような簡単な家屋が一般的で、それが30、40戸ずつ集落をなしている状況という。「今回の大地震ではひとたまりもないはず」とみている。

■唯一の救いは、地震の発生が午後2時半ごろだった点です。日本人学者先生が御指摘の、レンガ造りの小さな集落は、半農半牧の人達が多いので、この時間帯に家屋に居た人は少ないのではないでしょうか?ただ、震災後に生き残っても、備蓄した食糧が瓦礫の下になってしまうと、深刻な飢餓が心配になります。さらに、レンガと泥で造られた家屋は、高くても2階か3階建てなので、倒壊前に外に飛び出せる望みもありそうです。


……北京では唐山地震以来ほとんど地震はなく、地震に慣れていない。このため都市部のビル街の地震はガラスが落下してくることもあるという危険性を考える余裕がない人も多く、デマに踊らされる場面もあった。中国で地震に対する防災意識を訴えるようになったのは、国家防震減災法が制定された1998年以降と歴史が浅い。
5月14日 産経新聞

■繁華街の違法看板が当たり前の風景になっている日本の都市も、他人事ではありませんなあ。ビルの各階から突き出すように、電飾付きの商売用看板が歩道の上にびっしりと並んで居るのですから、最寄のビルに飛び込んで恐ろしい落下物を避けねばなりません。飛び込んだ先のビルが姉歯物件だったら万事休す!だから、違法な看板をさっさと片付けるのが先決問題ということになりますなあ。消防法を無視して営業している雑居ビル内の店に入っていたら、これまた逃げ道は無いわけですから、入店時には覚悟を決めるしかないでしょうなあ。-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

このアイテムの詳細を見る

------------------------------------------


北京五輪の内と外 その弐百参拾九

2008-05-21 11:25:42 | チベットもの
ダライ・ラマは19日夕には、ドイツのチベット支援団体がベルリンで開催した2万5000人(主催者発表)の大集会に参加。ブランデンブルク門前の大通りを埋め尽くした支援者に非暴力によるチベット平和の実現を訴えた。
5月20日 毎日新聞

■2万人!とは凄いですなあ。それも東西にベルリン市を分けていたブランデンブルク門という場所も意味深であります。ダライ・ラマ法王は何度も日本を訪れているのですが、足並みを揃えてマスコミが意図的に無視するか小さく扱うので、こんなに大規模な集会が開かれたことはありません。北京五輪の開催が決まった時には、「人権」や「平和」が重要な条件になっていたのに、日本では単純に開催決定だけが報道されていたからではないでしょうか?

■チベット騒乱の後だけに、今回の外遊は世界中の注目を集めて行われるはずでした。しかし、単なる偶然なのでしょうが、インドの亡命政府を出発した直後に、パンダ大震災が発生!さすがにチャイナのネット上に飛び交う無責任な流言でさえ、ダライ・ラマ法王が念力で地震を起こした!などという話は出ていないようですなあ。不殺生を説くダライ・ラマ法王が、チベット人を含めた多数の生命が失われるような禁断の呪殺法を使うはずもないですから……。


チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世は13日から約10日間、ドイツと英国を訪問する。チベット仏教ナンバー3のカルマパ17世も近く、米国を訪問する予定。……3月の中国チベット自治区などでの暴動後、ダライ・ラマが亡命政府のあるインドを離れるのは、4月の米国訪問に次いで2回目。ドイツのメルケル首相は昨年9月、中国が反発する中で、ダライ・ラマとベルリンで非公式会談をしている。今回は首相は会談せず、独連邦議会議長が面会する予定。
5月12日 毎日新聞

■こうしたスクープ!が報道されようとしていた矢先に、大震災が発生したのでした。4月の訪米時、せっかく成田空港を経由したというのに、東京都内にお招きもせず、厄介者か危険物でも扱うように成田市内のホテルに「軟禁」同然に足止めしたのは、実に勿体無いことでした。


中国・四川大地震の被害が拡大するなか、中国人の地震に対する意識に警鐘が鳴らされている。世界の3分の1の直下型地震は、地球の陸地面積の14分の1を占める中国に集中。しかも四川省や雲南省はヒマラヤ造山帯近くの「地震の巣」にあたる。今回の地震では8割の建築物が倒壊する街も出るなど、建物のもろさが被害を拡大させた。上海や北京では地震発生と同時に高層ビルから飛び出すなど“危険な避難”が目につき、地震に不慣れな中国人の姿が浮き彫りとなった。

■高層ビルから飛び出すのが、本当に「危険な避難」なのかどうか?オカラ工事の実態を知っている人達が、外面だけ立派な高層ビルの中で、揺れが収まるまでじっとして居られるでしょうか?「地震に不慣れ」なのではなく、自分たちの目の前に建っているビルの本性をよく知っているからかも?


国家地震局の専門家らの解説では、四川省は南北地震帯とよばれる地震多発帯の上にあり、1973年に2200人の死者を出したマグニチュード7・4の炉霍地震(甘孜(カンゼ)チベット族自治州)のほか76年もM7・2の松潘地震が発生している。M7以上の地震が3年から19年の間隔で発生していた。

■「炉霍(ルーフォ)」はチベット語ではダンゴと呼ばれる町ですから、しっかりチベット領内!です。「松潘」は成都の西を流れるミン江の上流にある古い町です。さらにミン江を遡って白河渓谷を抜ければ有名な九寨溝に到ります。昔、唐の時代には松州という名前でしたが、古代チベット王国を建てたソンツェン・ガンポという王様が、息子のために文成公主という唐のお姫様を娶った話に登場する町であります。天を衝く勢いがあった仏教導入前のチベットは、手が着けられない暴れん坊?で、大唐帝国も手を焼いていたのでした。和平条約を担保する縁組の話に飛び付いたら、今の青海省にいた鮮卑系の吐谷渾が待ったを掛けて三つ巴の喧嘩になりました。チベット側の記録によりますと、前言を翻して逡巡する唐を脅迫するために、ソンツェン・ガンポ大王は20万という大軍団を編成して襲ったのが、この松州だったのだそうです。つまり、成都の真北に当たるこの辺りが、古代チベットと唐との国境だったというお話です。
-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

このアイテムの詳細を見る

------------------------------------------


北京五輪の内と外 その弐百参拾八

2008-05-21 11:25:17 | チベットもの
■次は医療チームが現地に向かうそうですが、こちらの方は時期よりも規模が問題となりそうです。つまり、レスキュー隊は遅過ぎて残念ながら失敗、医療チームは小規模過ぎて納得の行く救護活動が出来ずに失敗する可能性が高いようです。報道によりますと「20人」規模のチームが送られるとのことですが、相手は数百万人の被災者ですぞ!今の段階なら「3分間の黙祷」で済ませられるのかも知れませんが、五輪大会の本番となれば、参加選手はどんな形でお見舞いと追悼の意を表せば良いのでしょう?

■日本の某高校で、生徒指導に熱心なあまり遅刻した生徒を鉄製門扉に挟み込んで圧死させてしまうという痛ましい事件が起こったことがありました。その時、ちょうど定期テストの期間に当たっていたとかで、その高校の校長先生が、死亡した生徒の分も「よい点数を取りましょう」と全校生徒を集めて訓示したのが大問題になったのを思い出します。北京政府のことですから、五輪大会で「たくさんのメダルを獲得することが、何よりも被災者を元気付ける」ぐらいの事は言いそうですなあ。メダルより水と食糧と医薬品、そして住宅が必要なのですが……。

■槍が降ろうと地面が割れようと、断固として強行される聖火リレーに関して、ちょっと気になる報道がありましたぞ。


中国南部・広東省の地元紙「南方都市報」(電子版)は9日、同省広州市で7日に北京五輪聖火リレーが行われた際、沿道の草木が踏み倒され、ゴミが散乱……。中国国内の聖火リレーは、チベット暴動鎮圧に抗議して妨害行為が相次いだ海外と異なり、管理された「愛国主義」による祝賀ムード一色の中で展開されているが、マナーの悪さまでは完全に統制できないようだ。……観衆の中には、鉄柵を曲げて植え込みに入り、草を踏み倒し、沿道の木に登る者が相次いだ。リレー終了後は、辺り一面に、折れた苗木の小枝や、声援を送る際に使った無数の紙製の中国国旗、ゴミなどが散乱。翌日、わずか100メートルの距離で集めたゴミは車2台分になった。
5月10日 読売新聞

■日本で聖火リレーが行われた長野市でも、外の海外諸都市でも、抗議活動の一環として雪山獅子のチベット国旗を振った人達の中で、その場に旗を捨てて帰った人は居なかったのではないでしょうか?日本国内でも、賓客を迎える時に紙製の日の丸を振りますが、歓迎式典が終わったらその辺に放り投げたりせず、記念に持ち帰るか回収の担当者に渡すのではないでしょうか?長野市やソウル市で、立派な武器に変じて大活躍?した巨大な五星紅旗は「配給主」の元に返却されたのかも知れませんが、宣伝用に動員されて沿道で紙製の五星紅旗を振らされる人達の心情が、ゴミとして地面に捨てられ踏みつけられている国旗に如実に現われているようですなあ。

■「加油、中国!」の掛け声も、単なる騒音なのかも知れませんなあ。五輪大会が始まったら、北京市内の競技会場周辺は、同じ様に紙製五星紅旗が大量に投げ捨てられ、せっかく急造した飾りや一見清潔な設備もあっと言う間にぼろぼろになるのでしょうなあ。巨大な設備の群が、全部、大きなゴミにならない事を祈りましょう。

■聖火リレーもチベット問題も、パンダ大震災が発生して以来、すっかり忘れ去られている感がありますが、胡錦濤主席の来日前に始まった「対話」の行方をしっかりと見据えておかねばなりません。まあ、五輪大会前に劇的な展開などは望めないにしても……。


ドイツのウィチョレクツォイル経済協力開発相は19日、欧州歴訪中のチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世とベルリン市内のホテルで会談した。会談には在ベルリン中国大使館が先週、独外務省に遺憾の意を伝えていたが、反対をあえて押し切った。中国政府にチベット問題で軟化を求める狙いとみられる。……会談後、「私は政府の代表としてダライ・ラマと会談した。人権問題の当事者と対話することは、ドイツ開発政策の本来的な課題だ」と語った。中国政府に配慮する慎重派の批判には「策をろうすることは、チベットの人々やダライ・ラマに失礼だ」と反論した。

■何処かの政治家やマスコミ関係者に聞いて欲しい発言ですなあ。何度も来日しているのに首相も大臣も会わないし、今回のチベット騒乱が始まっていた時期に来日されても成田空港に缶詰にして、忘れられたようま前総理の奥さんしか会見しないなんて、本当に「失礼!」です。


会談実現は、昨年9月に首相府にダライ・ラマを迎え、中国の反発を買ったメルケル首相の意向とみられる。昨秋以降、中国政府は中独の閣僚級会談を繰り返し拒否する事実上の報復措置を取ったが、メルケル首相はダライ・ラマとの対話を将来も続けると明言していた。

■日本の歴代内閣は「対話を将来も行わない」ことを暗黙のうちに決定しているようなものですが、この奇妙な暗黙の外交方針を、いつまで継続して行こうと思っているのか?変更する可能性の有無さえ分からないというのは情けない話です。そもそも、日中国交正常化の交渉を始めた田中内閣が、北京政府も驚くほどあっさりと台湾との国交を断絶して「一つのチャイナ」を手放しで承認してしまってから、日本のアジア外交は急旋回して失速?したようなものです。田中角栄さんが訪中したのは、チベット亡命政府が置かれてから10年以上が経過していたのに人権問題には一切触れず、福田パパ首相が条約を結んだ時にも交渉は北京政府のペースで進められたのでしたなあ。
-------------------------------------------
■こちらのブログもよろしく
雲来末・風来末(うんらいまつふうらいまつ) テツガク的旅行記
五劫の切れ端(ごこうのきれはし)仏教の支流と源流のつまみ食い

チベット語になった『坊っちゃん』―中国・青海省 草原に播かれた日本語の種

山と溪谷社

このアイテムの詳細を見る

------------------------------------------

パンダ大震災 其の伍

2008-05-21 05:28:45 | 外交・情勢(アジア)
中国中央テレビの女性記者が、実際には四川大地震の被災地に行かなかったのに現場リポートをでっち上げたのではないかとの疑惑が16日までに浮上、インターネットの書き込みなどで「職業道徳に欠ける」「首にしろ」などと非難を浴びている。……女性記者は地震発生翌日の13日夜の番組で、四川省成都から震源地に近い都江堰の倒壊した中学校の状況を報告。現場にいると思ったキャスターが「なぜ成都にいるのか」と尋ねると、しどろもどろになりながら「携帯電話の電波の調子が悪かった」などと釈明した。さらに記者が「救援活動は終わりに近づいている」と語ったため、キャスターが理由を聞いたが、明確な説明はなく、ネット上で非難が集中する結果となった。
2008年5月16日 産経ニュース

■これが地方政府か北京政府からの支持に従ったものならば、あの国の「職業道徳」には反していないのではないでしょうか?『人民日報』風に都合の悪い事は極力小さく、宣伝に使えるネタなら極限まで大きくして伝えるのが「宣伝」というものでしょう。でも、こういう話を聞きますと、チョモランマ登頂に成功した!という例のニュースも、ちょっと怪しい気がして来ませんかな?胡錦濤主席の訪日にぴたりと合わせて天候が急に回復したそうなのですが……。
 
 
……大地震の被害が拡大する中、先の日中首脳会談で「解決のめどが立った」(福田康夫首相)とされた東シナ海ガス田共同開発問題の決着が遅れるのではないかとの懸念が政府内に出始めた。中国政府が震災対応に追われているためだ。胡錦濤国家主席が表明したパンダ2頭の貸与も、ずれ込むのは避けられない見通しだ。 
5月16日 時事通信

■まさかとは思いますが、これから支持率が10%を割り込むようなことになった場合、「原因はパンダが来ないからだ!」などと福田首相は大きな勘違いをしないでしょうな?!ガス田問題が先の首脳会談で決まったらしい危ないシナリオ通りに進まなくなるのは、大いに結構なことではないでしょうか?道路特定財源の「一般財源化」の閣議決定と一緒くたにして葬り去ってしまおうと策謀が動いているかも知れませんぞ。でも、道路族の親分の1人がパンダ大王みたいな人なので、ガス田は北京政府の言いなりで、日本の道路は国交省の役人の言う通りに作り続けるような事になったら最悪ですなあ。


神戸市立王子動物園は15日、四川大地震の被災地にあるパンダ繁殖センターを支援するため募金を始めた。王子動物園のパンダ、雄のコウコウと雌のタンタンは今回の地震の震源地に近い四川省臥龍の繁殖センターからやって来た。同園によると、センターの職員やパンダは無事だったものの、センターが何らかの被害を受けた模様という。募金は入園ゲートを入ってすぐの花壇前に設けた募金箱で受け付ける。奥乃弘一郎副園長は「恩返しのつもりで協力できれば」と話している。
5月16日 毎日新聞

■何の「恩返し」なのかが、さっぱり分かりませんが、決して人命救助を後回しにしようという錯乱した募金活動ではないと信じますが、パンダ・センターのパンダと職員が無事だったのなら、救済募金はパンダに限定しない方が宜しいでしょう。動物園の園長さんとしては、動物に強い愛情を感じているのは分かるのですが……。


……61回目を迎えたカンヌ国際映画祭では15日、アニメ映画「カンフー・パンダ」がメディアの注目を集めた。声優を務めた豪華な俳優陣は、自分を信じることで誰もがヒーローになれるという作品のメッセージを伝えた。ダスティン・ホフマンは記者会見で「スーパーヒーローは必要ない。スーパーヒーローは自分の中にいる」などと語った。この作品では、食べることが大好きな太ったパンダのポーが主人公となり、カンフーの達人を目指して奮闘する姿が描かれる。……
5月16日 ロイター

■ハリウッド映画はネタが尽きて困っているという話が有りますが、どうして「カンフー・パンダ」なのでしょう?北京五輪を当て込んで、チャイナ市場で荒稼ぎ!ついでにパンダ好きが多い日本でも二度稼ぎ!との皮算用でしょうか?それにしましても、大食いのパンダが戦闘能力を高めてスーパーヒーローになるというストーリーは、世界中の食糧資源を食い尽くしながら、米国と対抗できる軍事大国を目指しているチャイナの姿と無気味に重なりませんかな?

パンダ大震災 其の四

2008-05-21 05:28:29 | 外交・情勢(アジア)
中国当局が地震発生を予知していながら、北京五輪前に市民が混乱状態に陥ることを恐れて情報を隠蔽したとの批判もネット上に流され、地震予測研究所の研究員が、中国国営新華社通信に「どこの国も専門家も正確な地震予知は不可能」と否定する一幕もあった。

■世界一の地震大国の日本でも、実際には地震予知などは不可能だと言われていますなあ。莫大な予算を投じてあれこれと調査をして集めたデータから、巨大地震の発生を推論したとしても、専門家と政治家が集まる連絡会での話し合いで、本当に予知情報を発表できるかどうか?誰にも分からないそうですなあ。大外れになった場合の責任問題を怖れる総理大臣などが座長になっていたら目も当てられませんぞ。チャイナでは、各種の占い術が考案されていて、それに風水術を合わせれば天変地異を予測できると言い張っている商売人も多いようです。

■既に、チャイナでも日本でも、「予言が的中した!」と騒ぎ出している商売熱心な人も居るようですが、まだまだ地球物理学が扱うタイム・スケールは、政治家や官僚が扱えるほど短くはなっていないのですから、誰かさんの占いなどに熱中するよりも、せいぜい住宅の耐震工事に努めつつ、家族との連絡方法やら3日か1週間分の飲料水を用意して、いざっという時の心構えをしておく方が賢いでしょうなあ。


中国公安当局はネット上で発見した40件以上の地震に関する“デマ”をもとに捜査を進め、16日までに扇情的な発言を広め、政府に対する国民の信頼を損なったなどとして、関与した2人を拘留、2人に謝罪文の提出を求めたほか、13人に警告処分を下した。強硬姿勢の背景には、国内外の反応をにらみながら震災への対応にあたっている最中、パニックが政府批判へ向かうことを防ぐ意図がうかがえる。
2008年5月16日 産経ニュース

■有名な『三国志』も、大戦乱の切っ掛けを作ったのは、陰陽五行説を曲解して「蒼天已死 黄天當立 歳在甲子 天下大吉」と占ってみせた大賢良師やら天公将軍を自称した張角という男が作ったカルト集団による暴動でしたし、元朝を北に追いやって明朝を開いた朱元璋も、元を質せばカルト教団の使い走りから出世した男でした。前のが黄巾族で、後のが紅巾族でしたが、今の北京政府が最も怖れているのが仏教と道教と太極拳を突き混ぜた法輪功という新興宗教集団というのも、長い歴史の影響なのでしょう。大地震のパニック心理からデマが広がって、理由も分からない大量殺人事件が起こることもありますから、早めに安全な水と十分な食事と睡眠が取れる体制を作るべきでしょうなあ。間違っても「チベット人が水源に毒を入れた!」などという悪質なデマは流れて欲しくないものです。


中国紙、南方都市報は16日までに、四川大地震で救援部隊の被災中心地入りが1976年に河北省で起きた唐山地震より遅かったとする評論を掲載した。四川大地震は山岳部で発生、交通が遮断されるなどして救援に遅れが出ていたが、中国紙が指摘するのは異例。筆者は、ドキュメンタリー「唐山大地震」を執筆した銭鋼氏。早急に被災地入りして救援活動に当たることが第一だとし、救援隊員を「唐山地震時のような徒手空拳」で現地入りさせてはならないと指摘した。
2008年5月16日 産経ニュース

■有名な唐山地震での被害者は24万人と多くの本に書かれているようですが、一説には70万人以上とか、100万人に近い、などの異説が今でも消えないようです。何せ、大本営発表に負けない共産党発表の数値ですからなあ。それに人命軽視の伝統も禍して丹念に犠牲者の数を確かめたとも思えません。かなりの政治的バイアスが掛かった数値を発表していたと考えた方が良さそうです。今回も被災地の地方政府は被害を相当に小さく見積もって発表したとて、被害者は激怒しているようですからなあ。