旅限無(りょげむ)

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北京五輪の内と外 その弐百弐拾四

2008-05-14 23:28:02 | チベットもの
中国産冷凍ギョーザ問題については一日も早い真相解明が日中双方にとって必要であります。中国側としても一層捜査を強化するとのことであり、日中双方で捜査と協力をさらに強化していくことで一致しました。

■「一日も早い真相解明」とは何でしょう?事件が発生したのは今年1月の末ですぞ!もっと詳しく言えば福田ホイホイ訪中の1ヵ月後!あれから3ヶ月以上も経過しているのに、「真相解明」どころか基本的な事実確認さえ日中両国の捜査当局の間には成立していません。『週刊文春』5月15日号には、真っ当な捜査を続けている日本の警察に対して外務省が愚かしい圧力を掛けて胡錦濤訪日を実現するために口封じをした!という驚くべき暴露話が掲載されております。今頃から「一層捜査を強化」して、一体、何を調べるのでしょうなあ?「日中双方で捜査と協力」が出来ないからこそ、真相解明が進まないのですが、この道理が福田ホイホイ外交では認められないようです。嗚呼。


なおチベット問題については、胡主席より4日にダライ・ラマ氏側との接触、話し合いを行った旨の説明がありました。これに対し、私からは主席の決断と今回の話し合いは本格的対話に向けた第一歩として評価する旨申し上げるとともに、対話の継続を通じ、状況が改善し、国際社会の懸念を解消するように要請しました。

■「なお」とは何ですか?「なお」とは!?文字通りに理解すれば、大して重要ではない話を付け足す時の接続詞と思われる「なお」ならば、念のために補っておく話という事になります。世界中が大騒ぎしている大問題が、福田ホイホイ外交になると「なお」に続く程度の小さな問題になるようですなあ。この件で歴史的な訪中が台無しになっては一大事!と考えた北京政府が、来日直前になって打ち上げたアドバルーンに過ぎない「対話再開」を、ここまで手放しで絶賛されては、さすがの北京政府も面映ゆいかも?外交辞令も程度問題ですぞ。ホイホイ首相が「要請」するのは勝手ですが、問題はそれに対して胡錦濤主席が何と「応答」したか?でしょう。生返事しか聞かれなかったのでしょうなあ。福田首相はさっさと別の話題に移ってしまいます。


本年は日中平和友好条約締結30周年にあたりますが、この大きな節目の年が将来にわたり、末永く明記される日中関係発展の年にしていきたいと思います。胡主席は今回の訪日で東京のほか横浜、大阪、奈良を訪問され、各地で日本の文化、歴史、産業などにも触れるとともに、日本の国民各層と交流される機会を持たれますが、ぜひとも実りある滞在となりますよう心よりお祈りを申し上げます。以上です」

■異例の長期滞在となった今回の訪日なのに、肝腎の首脳会談は実質的に1回だけの2時間だったようです。穴ぼこだらけで懸案事項は残らず先送りになっている『共同声明』に署名するだけなら、半日の滞在で十分だったでしょう。やっぱり、パンダとピンポンで国民を愚弄して支持率を上げようと思っただけだったようですなあ。

■以下は記者との質疑応答です。


--新華社通信です。……北京では五輪がいよいよ開催される。アジアにおける20年振りの五輪でもある。私たちは、多くのアジアの国々から大きな支持をいただいている。この五輪に対してどのような期待を持っておられるか。……

■「大きな支持」とは何処の国からの話なのか不明です。核疑惑の北朝鮮やサイクロン被害を無視して変な国民投票を強行するミャンマーの事でしょうか?それともチベット人を虐めて点数稼ぎに熱心なネパール政府のことでしょうか?こんな乱暴な枕詞を聞き流していたら、大変なことになると福田首相は思っていないようです。北京五輪に「期待」する事は山ほどありますが、残念ながらそのほとんどは実現不可能な事ばかりですなあ。

北京五輪の内と外 その弐百弐拾参

2008-05-14 12:11:48 | チベットもの
■第四の文書とも呼ばれる『共同声明』は、福田外交の特色を余すところ無く表す「充実しない」ホイホイぶりですから、「責任」「信念」「責務」などとそらぞらしい熟語が並んでいるのは切ないですなあ。福田ホイホイ首相の口から「よき未来」などという大仰な言葉を聞きますと、逆に暗澹たる未来を想像してしまうのは旅限無だけでしょうか?

……会談では青少年交流の重要性について認識を共有したほか、安全保障を含め、政策の透明性を高めることなどで一致し、そのために対話と交流を強化するなど、さまざまな方策について検討を深めることで一致しました。

■胡錦濤主席の露払い役として「青少年交流」を目的とする団体が来日しているのですから、今更、「認識を共有」などと言うのは変です。昨年末のホイホイ訪中の段階で、そのシナリオは日中両国の外交官が書き上げていたのですから、要するに新しい展開は何一つ無かったと冒頭から白状しているのも同然!「さまざまな方策」などと、いかみの盛りだくさんの成果があったような表現ですが、これも具体的な事は何も決まらなかった事を誤魔化そうとしているだけのような印象が強い!


……気候変動問題に関して、2013年以降の実効的な枠組み構築に向けた協力や、セクター別アプローチを前向きに評価する内容を盛り込んだ共同声明を発表いたしました。

■冒頭に「北京五輪の成功」を置いて、ここでは「洞爺湖サミット」の具体名を伏せていますが、要するに五輪大会とサミットとのバーター外交が再確認されたという意味でしょう。わざわざ「セクター別アプローチ」の文言をネジ込んだのは福田首相の意地の見せ所だったのかも?先の『京都議定書』において、北京政府はちゃっかり「発展途上国枠」の中に踏み留まっているのですから、日本が編み出した「セクター別」のアイデアがどうなろうと、大勢に影響は無いはずです。この一言を入れるために、「環境対策」を名目とする新たな経済援助がどのように決められたのやら……。

■実に象徴的だったのが、この首脳会談が行われる前後に、旧満州で進められている誰が埋めたか分かったものじゃない毒ガス弾の処理作業で、それを請け負った怪しげな企業が巨額の横領犯罪を起こしていた事実が発覚したことでした。福田ホイホイ首相はこの件に関してはまったく触れようともしません。


……ハイレベル経済対話を本年秋にわが国で行うことで一致したほか、日本産の米を恒常的に輸出できるようになりました。胡主席より日中友好のシンボルとして新たにパンダの貸与していただくとの申し出をいただきました。私からはありがたいお話であり、日本国民も喜ぶものと思うと、感謝と歓迎の意を表明しました。このほか主席との間では、北朝鮮問題、国連安保理改革など、多岐にわたる議論を行うことができました」
5月7日 産経ニュース

■「ハイレベル経済対話」などよりも、毒入り餃子事件を早急に解決するのが先でしょう。北京五輪・洞爺湖サミットだけでは飽き足らず、ますます自分の内閣が存在している可能性が低い「本年秋」の会議にまで言及するのは、いかにも前のめりに過ぎる外交姿勢で、非常に心配なことであります。ホイホイ首相は自分が開催を決めたイベントだから、何が何でも自分が参加するんだ!と言い張るつもりでしょうか?


「東シナ海資源開発問題については、これまで日中間で有益な議論を積み重ねられ、大きな進展があり、長年の懸案に解決のめどが立ったことを確認いたしました。今後さらに細目をつめてできるだけ早期に合意することで一致しました。

■「長年の懸案」というのは正しい表現です。何せ道路特定財源の「暫定税率」に匹敵するほどの「長年」ですからなあ。今回の胡錦濤主席の訪日スケジュールの中に、故園田直さんの御子息、熊本県第4区選出の園田博之議員との接触が含まれていたのには驚きましたなあ。勘違い真紀子さんを舞い上がらせるのは御愛嬌でしょうが、小平にすっかり騙された園田元外相の二世議員を引っ張り出すとは畏れ入ります。ホイホイと呼ばれるままに接触した園田議員も大したもの?御本人は尖閣諸島のガス田問題をどう考えているのかは存じませんが、「北京オリンピックを支援する議員の会」に所属しているところから見れば、父親の政治姿勢をきっちりと受け継いでいるのでしょうなあ。心配なことです。

■「解決のめど」とは気の長い話です。「今後さらに細目をつめて」という話なら、とてもじゃないが「大きな進展」などと言えないでしょうに?!道路特定財源に関して「来年度から一般財源化」と言いながら「10年間は据え置き」法案を通してしまう福田ホイホイ矛盾政策と共通するメチャクチャさが際立っておりますなあ。御本人は矛盾を矛盾と考えない御様子で、どうやら「そのうち何とかなるだろう」と植木等さんのような事を本気で考えているようです。困ったものですなあ。

北京五輪の内と外 その弐百弐拾弐

2008-05-14 12:11:11 | チベットもの
■朝食会の空気を凍りつかせたという安部元首相の発言を詳しく紹介する記事がありました。でも、在任中に言うべき事を言わなかった理由がまだ判然とはしておりません。先日のダライ・ラマ猊下来日の際には、何の肩書きも無い奥様を使者に立てて変な会見を行ったのですが、辞任した時の鬱状態と辞任後の躁状態との差が大き過ぎるような気もしますが、安倍晋三さんは本当に大丈夫なのでしょうか?安部発言から抜粋します。

……私が小学生のころに日本で東京五輪があった。そのときの高揚感、世界に認められたという達成感は日本に対する誇りにつながった。中国も今、そういうムードにあるのだろう。その中で、チベットの人権問題について憂慮している。ダライ・ラマ側との対話再開は評価するが、同時に、五輪開催によってチベットの人権状況がよくなったという結果を生み出さなければならない。そうなることを強く望んでいる。

■首脳でもない身分で、「強く望んでいる」などと力んでみても、外交官が動くわけでもありませんし、世論に訴える力にもならないのですから、虚しいばかりです。安倍政権の時代には、既に北京五輪の開催が決まっていたのですから、首相の地位に就いている間にこの種の発言をして欲しかった!政権を投げ出した後でしか、自分の意見が言えないのならば誰が首相になっても日中外交は何も変わらないという事なのでしょうなあ。安倍元首相としては、細々とした事例にも通暁していることを誇示したかったのか、ウイグル人留学生の個人名を出しております。


これはチベットではなくウイグルの件だが、日本の東大に留学していたトフティ・テュニヤズさんが、研究のため中国に一時帰国した際に逮捕され、11年が経過している。彼の奥さん、家族は日本にいる。無事釈放され、日本に帰ってくることを希望する。
5月8日 産経新聞

■チャイナが得意とする「内政干渉だ!」の叫びで応じなかったのは、五輪大会以外にも多くの問題を抱え込んでいる胡錦濤政権の苦しい立場の故でしょうが、自分の国に帰っていた「留学生」を国内法に従って拘束した場合、これを他国の政治家が「釈放しろ!」と要求するのは、立派な内政干渉になるはずです。チャイナには日本には存在しない変わった法律が有りますからなあ。もしも、『五輪憲章』に相応しくない内容の法律が存在している事を世界に訴えられれば、それなりの効果も期待できるでしょうが、大会まで100日を切った時点では遅すぎますなあ。

■日本のマスコミ、特に政治記者の皆さんは複雑な外交問題などよりも、政局絡みの猿芝居の方が扱い易いようで、道路特定財源の問題を発端にして自民党内も民主党内も分裂含みでがたがたしている話ばかりを熱心に取り上げているようです。道路利権で何度も当選して来た地方選出の議員たちが国会で多数を占めている限り、「聖域なき改革」などは絵に描いた餅に過ぎますまい。世界が注目する首脳会談を終えたというのに、さっぱり重みを増さない福田内閣の存在感は、大きな地震も起こっていないのに激しく動揺中であります。「総選挙をやったら負けるから」などという前代未聞の情けない理由で内閣が存続しているなど、まさに「後期」ならぬ「末期」的症状と申せませましょうなあ。

■チャイナで「パンダ大震災」が起こって世界中が大騒ぎしている時期に、福田内閣は三度目の「再可決」を強行して参議院不要論に勢いを与えております。これは安倍政権が残した参議院選挙での歴史的大敗と、小泉(劇場)政権が引き起こした素人受けするお祭り騒ぎ選挙でバカ勝ちした衆議院の総選挙という両極端な選挙結果が原因ですから、福田政権を待ち構える運命は、小泉政権が残した衆議院での圧倒多数という遺産を食い潰し、最終的には自民党が公明党を抱き合い心中で政権を失うことになりそうです。福田ホイホイ首相に残された起死回生?の唯一の策としては、次期総裁の実力を際立たせる間抜けなピエロ役に徹して耐え続け、「福田よりマシ」という逆説的な効果を狙って自民党政権を存続させる、という一手がありそうです。では、あの日中首脳会談は何だったんだ?と実に情けない思いで選挙民は今回の胡錦濤主席の訪日を思い出すことになりそうですなあ。

■その時のために、日中首脳会談の内容を確認して記憶に留める努力をしたいと思います。


……福田康夫首相は7日、首相官邸で中国の胡錦濤国家主席とともに共同記者会見を行った。会見の詳細は以下の通り。
 福田首相「このたび中国から胡錦濤国家主席を国賓として、わが国にお迎えいたしました。日本政府を代表し、心から歓迎いたします。先ほど、胡主席との間で非常に充実した有意義な会談を行うことができました。……
 
■「非常に充実した有意義な会談」と断じる神経と紋きり型の面白くも可笑しくもない文章表現にはなかなか馴れないものですなあ。自信なさそうに視線を下げる悪い癖は一向に治らず、原稿の読み方も上達しないようで、句読点を無視して変なところで息継ぎをするし、不自然に早口になるのも耳障りです。さてさて、その「充実した有意義な会談」の内容を吟味してみましょう。

 
まず、北京オリンピックはアジアにおいて3度目となる平和の祭典であり、わが国としては北京オリンピックが大いに成功することを心から祈っており、また、協力したい旨、胡主席に申し上げました。また会談に引き続き行った署名式では、胡主席とともに今後の日中関係の方向性を示す指針ともなる共同声明に署名をいたしました。日中両国が国際社会における責任を認識し、絶えず相互理解と相互信頼を深め、互恵協力を拡大しながらアジアと世界のよき未来をともに作り上げていかなければなりません。こうした日中両国の進むべき道、日中関係の大局に対する信念を共有し、そして問題の解決に最大限進めていくことこそ、私たち指導者に課せられた責務であると思います。会談でもこの基本的考えで一致いたしました。

■出だしから、あれこれと決まり文句を並べる欲張り作文は相変わらずです。北京五輪の成功を祈る主語が「わが国」になっていますが、何かの間違いではないでしょうか?明確に「ボイコット!」の論陣を張っている人も多く、長野市での乱闘騒ぎ、そして「パンダ不要論」へと続く北京五輪に反対する世論を軽々に無視してしまうのは如何なものでしょう?後に言及される毒入りイチコロ餃子殺人未遂事件以来、徒党を組むわけでもなく、深く静かに「チャイナ・フリー」の消費行動が定着している現状も無視しては行けませんぞ!