旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

北京五輪の内と外 その弐百壱拾伍

2008-05-10 15:34:37 | チベットもの
■「外交の福田」の看板がぼろぼろになってしまった顛末は、既に多くのメディアが手を変え品を変えて報道しておりますが、『週刊文春』の最新号(5月15日号)には、更に突っ込んだ裏話が掲載されています。以下に抜粋。

……敗北の原因は、日本の外交当局が中国の「焦らし戦術」にハマったことだ。外務省の藪中三十二事務次官が官邸に「胡錦濤主席が5月6日から訪日で確定」と最終的に伝えたのは、わずか半月前の4月18日……。昨年12月の福田訪中時に「桜の咲く頃の訪日」に合意しておきながら、中国側はなかなか日程を出して来なかった。万が一、訪日が延期になれば福田内閣への影響も計り知れないと焦った外務省は、4月14日にわざわざ藪中時間が訪日の約束を取り付けに北京まで出向く始末……。

■福田内閣の「延命」のために外務省が張り切って暴走したようですなあ。藪中次官は、既にさっさと転職して澄ましている田中均さんと同じく、北朝鮮外交で失点を重ねていたのを官房長官だった福田さんに庇ってもらった恩義が有りますから、ここぞとばかりに「恩返し」をしようと奔走したのでしょうが、これは一国の外交とは言えませんぞ!福田内閣は「解散総選挙となったら歴史的な大敗北!」という自民党内に広がる集団恐怖症という薄気味悪い病気という「保険」が懸けられているのですから、外務省の役人がスタンド・プレーなどする必要はまったく無いはずです。

■福田内閣の支持率は、間も無く「消費税」を割り込み、公定歩合を下回っても、議席を失いたくないという妄念が凝り固まって身動きが出来ず、潔く退陣するのも許されないまま、全国民から「今の首相は誰だっけ?」と忘れられた頃にひっそりと政権を投げ出すのでしょう。それが洞爺湖サミット直後だったりすると、外務官僚が必死で走り回った「外交の福田」の見せ場作りは、すべて水泡に帰すというわけですなあ。これも税金の無駄遣いの一つです。

■『週刊文春』には、松本楼でのカリフォルニア・ワイン事件についても裏話が紹介されていました。旅限無が想像した通り、「前日になって突然、総理から直々に『ワイン、違うのにしようか』と」電話が入ったのだそうですなあ。松本楼のキッチンではメニューの変更に大変な苦労を強いられたとか……。こんな馬鹿馬鹿しいことに「きめ細かな目配り」をしている暇が、今の福田内閣に有るのでしょうか?


来日中の胡錦濤・中国国家主席は8日、都内の早稲田大学で日中青少年との交流活動に参加、北京五輪日本代表の福原愛選手と卓球を楽しみ、「ピンポン外交」を繰り広げた。胡主席は、上着を脱ぎ、眼鏡を外して臨み、強烈なスマッシュを披露。観戦した福田首相は「戦略的な卓球でなかなか油断できない。一緒にプレーしないでよかった」と話していた。
5月8日 読売新聞

■テレビでも報道された「ピンポン外交」の間抜けな映像に、多くの国民が呆れ返ったのではないでしょうか?ワインの銘柄を変更するくらいしか「政治指導力」を発揮できない福田ホイホイ首相は、縋り付く思いで胡錦濤主席の訪日を待ち望んでいた「カワイソウ」な心根が画面から噴出しておりましたなあ。以前、ロシアのエリツィン大統領と川奈会談を行った橋本首相は、海釣りを企画して相手に花を持たせようと自衛隊の潜水部隊を駆り出して大物を釣らせたと噂されたものですが、今回の「ピンポン外交」はヤラセの気配は無かったようです。

■それもそのはずで、一説には昨年末の福田訪中で仕掛けた「キャッチボール外交」が予想外の波紋を呼んでいたとか……。温家宝首相がお手玉や落球をしてしまったのが大いに不評で、そんな馬鹿馬鹿しい事でさえも政権が動揺するほど胡錦濤体制はまだまだ不安定なのだそうです。ホイホイ首相としては母校の早稲田大学で交流イベントを仕掛けたい!胡錦濤主席としては、温家宝首相の醜態を逆転するために得意の卓球で中華の名誉を挽回したい!両者のサモシイ願いを適える材料になったのが「AO入試」に合格した福原愛さんという図式らしいですなあ。

■何が何でも「卓球をやる!」と胡錦濤主席が熱望していたそうで、上着を脱ぐのももどかしく、側近の手が間に合わない手早さで老眼鏡を外してラケットを握る姿は、鬼気迫るものがありました。「温泉ピンポン」のレベルに手加減している福原・王組に対し、必死の形相でライジング・ショットを連発する胡錦濤主席は、自らの政治生命を懸けていたことになります。それを観戦しているホイホイ首相は学生たちと一緒に拍手喝采の図でしたが、御本人がラケットを握らなかったのは、一重に「支持率低下」を怖れたからだとか……。今更、下手くそなピンポンをへらへらと楽しんだくらいで支持率に影響が出るはずもなく、小泉改革の後始末の失敗、政治ビジョンを欠いた「他人事政治」が治らぬ限り、ピンポンをやろうとやるまいと、ワインの銘柄が何であろうと、支持率はじりじりと下がり続けるでしょう。

■ホイホイ首相が「いっしょにやらなくてよかった」のは、決して子供騙しのピンポン遊びではなくて、「日中首脳会談」そのものだったのかも知れませんぞ!

北京五輪の内と外 その弐百壱拾四

2008-05-10 11:16:58 | チベットもの
■チャイナには、大昔から「天人感応(相関)説」という思想があります。こうした考え方は世界各地にあって、狩猟採集の獲物や収穫が減ったり農業生産が壊滅したりするのは、時の支配者に「徳」が無い証拠だ!という究極の民主主義システムとも呼べる王様殺しの理論です。日本でも記憶に新しい阪神淡路大震災が起きたのは、戦後55年体制の裏側が恥も外聞もなく露呈した村山内閣の時代でしたなあ。

■今回の胡錦濤国家主席の「10年ぶりの訪日」も、単なる偶然なのでしょうが、出発間際にチャイナと異様に仲の良いミャンマーを想像を絶する規模のサイクロンが襲いましたなあ。まるで日本に向けて飛び立つ特別機の「追い風」のように……。そして、訪日三日目を迎える5月8日に日付が変わる頃、茨城県沖で巨大な地震が発生!チャイナの君主を日本の神々が御不快に思っているのか?などとあらぬ空想をしてしまったのは、日本最古の神社に数えられる鹿島・香取の両神社が鎮める鹿島灘が震源地だったからです。ミャンマーのサイクロンと日本の地震に挟まれた訪日というのは、なかなか意味深でありますなあ。勿論、そわそわと出迎えたホイホイ首相の「徳」も、支持率が2割を切っているほど低下しているのも、「天他人感応」を思う理由の半分ではあります。

■胡錦濤主席の来日が間近になって、初めて長野市での聖火リレーが相当に危険なものだったことを示す証拠がぽつぽつと出て来るのには、それなりの理由が有るわけで、最もリレーの「大成功」を望んでいたが、国民からの支持を失い、自民党内でも冷たい「福田おろし」の風が吹き始めたホイホイ首相だったというのは、何とも寂しい限りであります。


警察官3000人を動員する厳戒態勢の中で行われた長野市の聖火リレーは大きな混乱を避けることはできたが、組織化されていたとみられる中国人応援団が約4000人も集結したことは警察当局にとっても想定外だった。巨大な国旗は凶器へと変わりかねず「一歩間違えれば暴動が起きかねなかった」(政府高官)との声も上がる。……7日に中国の胡錦濤国家主席との首脳会談を控える福田康夫首相にとって聖火リレーの成功は必須条件だった。長野県や県警には、官邸サイドから「万全を期すように」と強い意向が伝えられていたという。

■既に、胡錦濤主席の来日直前、計ったように上野動物園のリンリンが死亡!というタイミングの良さに、一部では「殺害説」まで取り沙汰されているとか……。高齢で体調を崩していたリンリンは、ずっと公開されずに病気療養中だったのですから、動物愛護精神に反する「殺害」のような乱暴な事をしなくても、延命治療を「中止」すれば計画的に落命させることは可能だったはずですなあ。福田ホイホイ首相が公言する「相手の嫌がることはしない」政治姿勢とは、要するに「チャイナの嫌がることはしない」という意味だというのは「後期高齢者」の皆さんも、ガソリン価格の高騰に苦しんでいる運送業に携わる人達も、よくよく分かっていることでしょう。

■それに加えて長野市の住民に対して、どんな迷惑が掛かろうと無関心でいられるホイホイ首相ならば、パンダの一匹や二匹……という無気味な想像も出来そうです。


公安筋では、留学生組織「学友会」の呼びかけなどにより中国人留学生約2000人が長野に押しかけるという情報をつかみ、これを元に警備計画を練った。ところが、実際に集まった中国人留学生は予想を超える約4000人。学友会が用意したTシャツは2000枚不足したという。巨大な五星紅旗が沿道を埋め尽くした。

■「北京五輪を支持しないならパンダは貸さんぞ!」などという語るに落ちるような横断幕は無かったようですが、大量の巨大な旗は何処で作られ、どうやって長野市まで運びこまれたのやら……。『週刊新潮』の最新号(5月15日号)には、「愛国動員デモ」の内幕が書かれています。


……応援ツアーを企画したのは「全日本中国留学生学友会」……共産党中央宣伝部などの指示のもと、中国大使館が具体的計画を立案、留学生会が音頭をとって実行……。

■資金は華僑・華人組織から出ているという話がありますから、あの巨大な五星紅旗は大急ぎでチャイナ本国から大量に空輸されていた可能性もありそうですなあ。『週刊新潮』の同記事には、長野市で愛国的に応援活動をした留学生は「四月青年」と呼ばれていて、特に「活躍」した者には北京政府から勲章が贈られたとの噂がネット掲示板で飛び交っているとか……。また、日本に滞在しているチャイナからの留学生は「7万1000人余」で、その中には最初から学業に勤しむ気持ちを持たず、最終的には不法滞在者になるつもりの「便宜留学生」やら、一応は真面目に通学していてもカンニングなどの不正行為を繰り返す困った学生が増え続けている実態も、同記事には書かれています。

■少子化の影響に直撃される地方の無名大学などは、文科相の助成金を貰うための員数合わせだけの目的で、相当に怪しい留学生を掻き集めているのは有名な話ですからなあ。山形県の酒田短期大学とか、千葉県の城西国際大学とか……。長野市で大活躍した留学生の中には、帰国後の出世に希望をつなぐために、日本での不祥事を帳消しにして貰って北京政府の覚え目出度きを得ようと、必要以上に張り切った学生も居たかも知れませんなあ。


現地では、チベット人支援者や警察官が中国人から暴行を受けていたという証言が多数出ているが、威力業務妨害容疑などで逮捕されたのは日本人5人、台湾籍のチベット人1人で中国人はゼロ。多くの暴行に使用された中国国旗のアルミ製旗ざおは一本も押収されていない。中国人による暴行が事実上黙認されたことについて、警察関係筋は「聖火リレーを無事にゴールさせることに警備の主眼を置いたため、小競り合いを許してしまったことは否めない。中国人を刺激して暴徒化することだけは避けなければならなかった」と打ち明ける。警察官への暴行については、「うわさはあるが、公傷を申請した警察官は1人もいない」(長野県警幹部)としている。
2008年5月4日 産経ニュース

■こうした報道が公に流れたのが「5月4日」だというのが、すべてを物語っているのでしょうなあ。長野市の沿道でにらみ合う「加油!チョンコー!」と「フリーチベット!」の怒号に挟まれながらチャイナからの留学生から1人の逮捕者も出さない匙加減を要求された警備の皆さんには、心より同情と慰労の言葉を送りたいと思います。ご苦労様でした。同時に、そんな国内法を捻じ曲げるような無茶苦茶な指示を出した誰かさんには、大いに腹が立ちますぞ!パンダ2頭ぐらいで内閣支持率が上がるなどと、国民を舐めきった妄想に縋り付くのは、もう止めた方が良いでしょうなあ。パンダも福田内閣も、両方要らない!という声が徐々に増えているとか……。