旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

北京五輪の内と外 その弐百壱拾八

2008-05-12 11:19:38 | チベットもの
■旅限無が何度か指摘している「和歌山県には佃煮にするほどパンダがいる」話が取り上げた記事がありました。

「引き続き楽しんでもらえるよう、上野動物園にパンダのつがいを提供することにしました」7日皇居に招かれた中国の胡錦濤国家主席は“置き土産”を天皇にまでアピールしていたが、日本には上野以外にも計8頭のパンダがいるのをご存じか。うち6頭を飼育しているのが、和歌山・白浜町にある「アドベンチャーワールド」。白浜のパンダ独占は、地元(3区)選出で、自民党きっての“媚中派”といわれる二階俊博総務会長の“功績”ともっぱらだ。

■もしも「上野のパンダ」がボイコットされたら、その時こそ、道路族のドンになるのが悲願の二階議員は、地元の和歌山に高規格の「パンダ道路」を建設するように国交省だけでなく外務省にも圧力を掛ける公算が大かも?


「白浜にパンダが来たのは94年。中国と共同繁殖研究を始め、10年間の予定でオスとメスのつがいを借り受けたのです。ところが、3年後にメスが病気で亡くなり、残されたオスも体調を崩しがち。繁殖計画が頓挫し、10年間のレンタル費用、計13億円が泡と消えかねませんでした」(日本動物園協会関係者)

■第二次天安門事件の後、先進国が挙(こぞ)って経済制裁を加えていた時、「民主化を期待する」という今回の北京五輪大会開催を決めるのにIOCが使った屁理屈と同じ理由付けをして抜け駆け的に経済制裁を解いたのが日本政府で、それから数年後に「パンダを借り受け」るとは、何だか火事場泥棒の談合みたいな話ですなあ。でも、日中友好とパンダのセットなら何も文句を言わないのが和歌山県民であり日本国民なのだと、誰かさんはお見通しなのでしょう。

■せっかく高い金を出して借り受けたパンダを死なせてしまったところを見ると、受け入れて飼育する現場の実情を無視して誰かさんが話を強引にまとめ上げた可能性が高そうですなあ。まさか、損害賠償など払わされていないでしょうな?!


そんな危機的状況を救ったのが、二階総務会長というのである。
「二階氏が中国との関係を深めたのは、00年5月。親中派のドン、故・竹下登氏でも成し得なかった大訪中団を送り込んでからです。『日中文化交流使節団』なる訪中団の規模はナント、5200人。これに、当時の江沢民・国家主席はいたく感激し、二階氏の手腕を高く評価したそうです」(地元政界関係者)白浜に中国から“後妻”のメイメイが貸与されたのは、使節団の訪中から2カ月後の00年7月のこと。この“二階パンダ”は、よっぽどの美女だったらしく、病気がちのオス、エイメイは息を吹き返したように猛ハッスル。メイメイとの間に双子3組を含む計7頭の子(1頭は死去)をもうけ、うち3頭を中国に“再輸出”するまでに至ったのだ。

■この「大訪中団」が北京に入った時、ちょうど旅限無は青海省に留学しておりましたので、妙に着飾った日本人ばかりが大ホールを埋めて江沢民主席の御高説に聞き入り、拍手喝采している間抜けな光景を何度も何度もテレビ報道で見せられたものです。後々、北京政府と静かな大喧嘩をする小泉さんが首相になる直前の猿芝居だったと記憶していますが、あの大規模なドサ廻り劇団の企画と運営を担当したのが二階さんだったのですなあ。


もっとも中国にベッタリ過ぎる二階には、中国人の政商に地元・那智勝浦町の年金施設「グリーンピア南紀」の払い下げを斡旋したと週刊誌に書かれるなど、さまざまな疑惑もくすぶっている。そのせいか、地元関係者はいずれも、「パンダと二階先生? さあ知りません」と口が堅いというか、そっけない。
5月11日 日刊ゲンダイ

■「グリーンピア南紀」に関しては、冗談みたいに交通の便が最悪の立地条件から誘致・建設の裏側で誰が暗躍したのか?という大問題も未解決ですし、「土地転がし」「口利き料」「政治献金」「選挙協力」「官製談合」などなど古い自民党政治のエッセンスみたいな疑惑が目白押し!その上、小泉内閣が打ち出した「行財政改革」路線で浮かび上がった全国13箇所に年金保険料を注ぎ込んで建設され赤字経営を続けていた開店休業の「グリーンピア」の群でした。莫大な建設費の上にやる気の無い赤字経営の穴埋め資金まで年金保険料から流し込まれていた!という詐欺・横領・背任に等しい犯罪行為が暴露されても、誰も逮捕されず弁償もせず……。次々と二束三文で売り飛ばされる廃墟も同然の「グリーンピア」群の中で、怪しげなチャイニーズ商人に払い下げられそうになったのが二階さんの地元の物件でしたなあ。

■二階さんのチャイナ贔屓は相当なものだそうで、地元のこれまた交通の便の悪い名もない丘の上に中華風味丸出しの建物を作り、江沢民主席の筆になる書を筆頭に、あれこれと石に刻んで建て並べ、ちょうと西安の「碑林」みたいなモニュメント公園を作ろうとしているとの噂もあるようです。いっそのこと、白浜一帯に中華街やらディズニーランドもどき遊園地やら、好き放題に建設してパンダを目玉に日本随一のチャイナ風観光地にしたらどうでしょう?
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北京五輪の内と外 その弐百壱拾七

2008-05-12 11:18:17 | チベットもの
■上野動物園には、トラの森やゴリラの林など立派な施設も有りますし、多くの鳥や動物、爬虫類や魚類も豊富に集められているのですから、何もパンダに拘らなくても良さそうなものです。日本中の話題を攫(さら)った旭山動物園には取り立てて珍しい動物など居ないのですから、外交問題のテーマにしてまで借り出す必要は無いと思われます。パンダ以外に目玉となる外交事案が無い「カワイソウ」な内閣なればこそのパンダ外交なのでしょうが……。

……動物園の小宮輝之園長は5月7日、「ふたたびパンダを飼育できるとすれば大変ありがたい」とのコメントを発表している。教育普及係では、「多くの人はパンダの借り受けを歓迎していると思います」と話す。「そういう人はわざわざ電話をかけてきません。かけてくるのは、クレームの場合です。もっとも、パンダのリンリンが死んだときは、お悔やみの電話がいっぱい来て、花を贈りたいという人もいました」。

■感情移入が激しい人も多いようですが、リンリンの死を悼むのなら、中国共産党が山を荒らして絶滅に瀕している野性のパンダの事にも思いを致して頂きたいですし、動物よりも酷い目に遭っているチベット人がたくさん居ることも認識して欲しいものです。苦しい時には動物を主人公にした映画が制作されるものですが、1980年代末に『パンダ物語』という映画が公開されました。当時のアイドルだった八木さおり主演で四川省奥地でのロケを敢行した力作?でしたが、単なるアイドル・動物合作映画かと思ったら、共演がチベット人少年という設定になっていて「現地」に乗り込んだ主人公の周辺にはチベット人がぞろぞろと集まっているという映画だったのでした。

■主人公は二代目の動物園飼育係で未知の動物だったパンダを飼育することになり、研修目的で四川省の山奥(チベット側から見れば東の入り口)に入って行くというストーリーなので、当時の日本ではちょっとした冒険映画と受け取られたことでしょうなあ。まあ、一見の価値はあると思います。さてさて、お話は現実の上野動物園に戻ります。


費用対効果については、「おそらく黒字の動物園はないでしょう。公立は入場料が安く設定されていますし。もともと採算を取るためにやっていません。パンダが来れば、好きな方は多いのでたくさんお見えになると思いますが、だからといって黒字になることはないと思います」としている。ただ、リンリンが4月30日に死んで初めてパンダがゼロになったものの、入園者数に今のところ急激な変化はないという。これはパンダがいなくても影響がないということかと聞くと、教育普及係では、「それはなんとも言えません」と答えた。
5月9日 J-CASTニュース

■通常の動物園にはニュースにする価値を見出せないマスコミに問題があるようで、上野動物園を取り上げる時は、日中友好のパンダか戦時中に毒殺された象の悲劇に執着するのは、そろそろ卒業した方が良さそうですなあ。
パンダ物語

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■胡錦濤主席が無事に帰国しまして、チャイナ国内では「大成功」を祝して大々的に報道されている一方で、日本国内では福田外交の功罪が厳しく評価されつつあります。誰にでも分かり易い評価の尺度が「パンダ」ということになりそうです。


「パンダは嫌いではないけれど、パンダでごまかされては困る」。堂本暁子知事は8日の定例会見で、中国の胡錦濤国家主席による「パンダ貸し出し」が大きく取り上げられている現状をそう憂慮し、日中両国が懸案を置き去りにしないよう強く求めた。……石原慎太郎知事を引き合いに出し、「パンダはもらうわけではなく、(貸し出しの)値段も高いようだ」と言って苦笑い。「そんなに高いパンダを借りる是非はともかく…」と前置きした上で、中国製ギョーザ中毒事件や東シナ海のガス田問題、地球温暖化問題といった両国間の懸案を列挙。「アジアのリーダーシップを持つ国として方向性を出していくことが求められる」と、両国の話し合いの進展に期待した。……ギョーザ事件で県内の7人が中毒被害を受けたことを念頭に「パンダに惑わされないようにしたほうがいい」と強調し、再びくぎを刺すのを忘れなかった。
5月11日 産経新聞

■地方自治体の首長としては、負担ばかり押し付けられる「地方分権」に腹が立っているところに道路特定財源をめぐる大混乱で予算も決められないのですから、福田ホイホイ内閣には言いたい事が山ほどあるでしょう。更に制度自体に欠陥がある「後(末)期高齢者保険制度」の尻拭いまでさせられているのですから、「外交の福田」にケチを付けたくなるのも分かりますなあ。千葉県知事として、県民の「生命」に責任を持たねばならないのですから、堂本知事の発言は正しいでしょう。つまり、どうも役人の名誉と財産を熱心に守る割には、国民の生命や国益には大した関心も無いように見える「外交の福田」に地方からも逆風が吹き始めたという事ですなあ。そんな馬鹿馬鹿しい空騒ぎに利用されるパンダの方が迷惑でしょう。