旅限無(りょげむ)

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パンダ大震災 其の七

2008-05-21 22:42:34 | 外交・情勢(アジア)
■5月21日、日本の救助隊の皆さんが無事に帰国しました。本当にお疲れ様でした。余震と感染症と高温多湿の困難に耐え抜いた英雄たちに、敬礼!であります。それにしても、報道によるとロシア隊だけが1人の救出に成功していて、韓国と日本から駆けつけた救助隊は遺体を掘り出す作業に徹しなければならなかったのには、何や良からぬ裏が有りそうな……。

■「ヤラセ」という概念を持たない国のマスコミ陣は、外国の救助隊にもあれこれと注文をつけて好き勝手な取材をしていたそうですなあ。「正しい宣伝」ばかりが溢れている中で、正確な情報を見つけるのは大変です。デマが驚くほど早く広く伝染して行くのは仕方がないのでしょうなあ。「正しくないデマ」を消して回るのには、「正しい宣伝」に使う労力の何倍も投入しなければならないでしょう。

■人命を救うよりもパンダに対する気遣いの方が目立つような気がするのも、「正しい宣伝」の影響なのか?それとも、多過ぎる人口に対して外交的な価値の高い希少動物の方が政府にとっては大切だ!という恐ろしい本音が透けて見えているのでしょうか?


2008年5月15日、武装警察四川森林総隊は14日、大地震の被害が大きかったブン川県にある臥龍自然保護区ジャイアントパンダ保護研究センターに到着。パンダ40頭を救出した。中国中央電視台(CCTV)の番組「央視国際」が報じた。臥竜自然保護区では道路のいたるところでガケ崩れが発生、家屋の90%以上が崩壊した。同森林総隊は、大地震の発生に驚いて保護区の森林内に逃げ込んだパンダや木々の下敷きになったパンダ40頭を救出したが、4頭がいまだに行方不明のまま。現在兵士多数を動員して大規模な捜索活動を行っている。臥竜自然保護区には100頭以上のジャイアントパンダが生息しているが、その中には台湾に贈られる予定の団団(トゥアントゥアン)と圓圓(ユエンユエン)もいる。この2頭はすでに無事が確認された。……
5月16日 Record China

■人間の被災者1000万人とも言われているのに、そちらの方の救助状態を示す数値が不正確で、予測値にしても幅が有り過ぎます。その一方で、パンダの救出に関する報道の決め細やかさは、一体、どう理解したら良いのでしょうなあ。家族や親戚の消息が分からず、夜も眠らない人達が数百万人もいるというのに、日本のパンダ好きも激減するかも知れませんぞ。ひょうきんな顔と愛らしい動きが人気のパンダですが、それは平和な時の話で、こうした緊急事態に救出されたパンダの姿を目にすると、単純に可愛い!などとは言ってられませんからなあ。


……同保護区のパンダ保護研究センターには外国人研究者50数人が長期滞在していたが、全員無事とのこと。

■との情報も添えられていますが、オカラ工事で建てられた可能性が最も低いはずの研究センターでも、大きな被害が出ているのは気になるところであります。


……中国の四川大地震。同省にゆかりがある阪神間の人たちの不安も高まっている。芦屋市……の……Kさんは、同省に生息するパンダ保護のため養育費を送るなど交流してきたが、現地関係者と連絡が取れないまま。祈る気持ちでメールを送っている。……一般の人が養育費を送って成長を見守る制度がある。動物保護活動に関心があったKさんは99年から6回、現地を訪ね、メスのパンダ「イエイエ」に養育費を送ってきた。イエイエは昨年双子を産んだといい、吉良さんは年内に訪問する予定だった。……Kさんは「現地は悲惨な状況だろうが、無事でいてくれることを信じている。日本からどんな形で力になれるのか考えたい」と話した。
5月15日 毎日新聞〔阪神版〕

■毎日新聞の地方版に掲載された記事ですが、拙ブログで取り上げるべきか悩みましたが、日中友好とパンダとの関係を象徴する、一つのエピソードとして人名を伏せて引用しました。記事に出ている吉良さんの個人的な思いや趣味に関して、他人がとやかく言うべきではありませんが、こうした記事を15日の段階で書こうと思う記者と、掲載を決定したデスクの考え方には大いに違和感を覚える次第です。動物愛護を謳い上げるには、実に悪いタイミングだったのではないでしょうか?このような記事が誤解を生んで「人命軽視」の濡れ衣を着せられないことを祈るばかりであります。パンダに異様な愛情を持っていることで有名な黒柳徹子さんでさえ、マスコミに下手なコメントを出していないようですなあ。勿論、パンダ効果を課題に期待したホイホイ首相もパンダ・レンタルに関してはまったく語っていないようです。

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