旅限無(りょげむ)

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アフリカという宿題 其の弐

2006-12-09 19:49:09 | 外交・世界情勢全般

映画は04年にベネチア国際映画祭でワールドプレミアされ、欧州の映画祭を中心に数々の賞を受賞。今年のオスカーの有力候補になった。ナイルパーチは欧州でも人気で、日本にも切り身が年間約3000トン輸入されている白身魚。欧州では、映画の影響でナイルパーチのボイコット運動が起こり、タンザニア大統領が映画に批判声明も出している。

■ナイルバーチという魚は聞いた事がないのですが、回転寿司のネタにでもなっているのでしょうか?それとも「白身魚」の冷凍食品にもでも加工されているのでしょうか?タンザニアから運び込んででも食べたい美味なのでしょうか?


関係者によれば、E・E・E・ムタンゴ大使は先月28日、配給会社のビターズ・エンドを訪れ、同社の定井勇二社長と面談。大使は「公開を差し止めることができないのは分かるが、見解を理解してほしい」と主張。「映画はうわさを事実に見せかけたもの。魚貿易は重要で成功しているビジネス。それがなければ、医薬品などが買えなくなってしまう。欧州では収益が減り、非常に困っている。日本の映画会社にはアフリカのよい面をもっと見せてほしい」などと訴えた。定井社長は「この映画はアフリカの悪いイメージを流布するための作品ではなく、グローバリゼーション(地球規模化)の問題点を描いたもの」と説明した。世界を動かしたドキュメンタリーは日本で、さらなる論議を呼びそうだ。……
スポーツ報知 12月6日

■確かに、この作品を観て「ナイルバーチ」を食べたくなる人は居ないでしょうから、親切なマスコミがどんな場所で購入できるのか、或いはどんな加工食品に使われているのかを詳報してくれるでしょうから、不人気商品となるでしょうなあ。もう一つ、アフリカ関連のニュースが気に懸かりましたぞ。


アフリカ中西部のコンゴ共和国で、エボラ出血熱のためゴリラ(ニシローランドゴリラ)が大量死したことが独マックスプランク研究所などの調査で判明、8日付の米科学誌サイエンスに発表された。感染が広がった同国のロッシ保護区西部(2700平方キロ)では、5000頭以上が最近5年間でほぼ全滅したと推定。アフリカ中西部は最大のゴリラ生息地で、同研究所は「絶滅の恐れが急激に高まっている」と指摘している。

■エボラ出血熱は、米国東部に侵入したと言うので大騒ぎとなって、本の『ホット・ゾーン』や映画の『アウトブレイク』でもその恐ろしさが描かれましたが、何となく忘れ去られてしまっておりました。もともと、野生動物の生息地帯に人間が勝手に侵略したのが原因だと言われている新種のウィルスですから、巨大な魚を養殖するのと同じ構造から生まれた問題なのであります。単純に密林の開発を止めろ!と言うのは、貧困を我慢しろ、と言うのと同じ事になってしまうので根強い南北格差の解決策が見つからないと問題は解消しそうにありません。


エボラ出血熱はエボラウイルスが原因の感染症。頭痛や筋肉痛の後に体内で大量出血し、致死率が高いことで知られる。アフリカのサハラ砂漠より南で流行している。研究チームは、同国とガボンの国境付近の住民にエボラが流行した01年以降、人だけでなく周辺の森でゴリラも相次いで死んだことに注目。流行地に近いロッシ保護区やその周辺でゴリラの感染や生息状況を調べた。その結果、同保護区西部では、エボラ流行前に1平方キロ当たり約2頭生息していたゴリラが、ほとんど観察できなくなった。また、02年10月から4カ月間に個体識別できた143頭中、130頭がエボラのため死んだとみられ、致死率は90%を超えた。

■予防策が無いと言われる恐ろしい感染症ですから、その凄まじい症状ゆえに国際的な監視網が布かれているわけですが、アフリカでゴリラを宿主とする感染爆発が起こったとなると、日本の熊問題とは比較にならない大問題ですぞ。ゴリラは生息条件がなかなか厳しく、その条件が崩れると個体数が激減する弱い生き物とされています。これに関しては『愛は霧のかなたに』という、ゴリラとは何の関係も無いような邦題が付いた映画が有りましたなあ。


ゴリラは森林伐採や農業などの影響で生息地を奪われ、国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧(きぐ)種に登録されている。世界自然保護基金(WWF)ジャパンによると、3種類の亜種の合計で数万頭しかいないとの推計もある。ロッシ保護区は他の生息域より生息密度が数倍高い地域だった。同研究所のピーター・ワルシュ博士は「狩猟で追い打ちがかかると、絶滅の恐れがさらに高まる」と警告する。

■種の絶滅は悲しいことですが、人間と肉体構造が酷似しているゴリラがエボラで絶滅となると、それこそ他人事ではなくなります。
【田中泰義】

▽アフリカの感染症に詳しい山本太郎・外務省多国間協力課課長補佐(医療生態学)の話 ゴリラやチンパンジーなどの霊長類が絶滅に向かうと、ウイルスは自らの生き残りをかけ、新たな宿主を求めることがある。その時、人類が新たな宿主になる可能性が高い。
毎日新聞  12月8日

■グローバル化は金と人とが世界中を自由に動き回る現象ですから、様々な感染症の「宿主」さんも自由に移動する可能性が高いわけです。日本の隣にも、どうやら感染症の爆発が起こると危惧されている大きな国が有りますが、最初にアフリカで問題の解決策を見つけておかないと、それに続く他の地域でも打つ手が無くなって爆弾の誘爆みたいなことになりそうです。21世紀はテロの世紀であると同時に、「アフリカの世紀」になるのでしょうなあ。

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