深海魚めき万緑にぬれゐたり 服部きみ子 「滝」8月号〈滝集〉 2011-08-26 05:13:38 | 日記 緑滴る樹々の間をゆったり歩く。しっとりと緑に染まるわ たしの体。いつかわたしは泳ぐように踊るように、まるで深 海魚。いつまでこうしていられるのだろう。どこまで緑は深 いのだろう。(小林邦子)
不如帰書架をはみ出す写真集 堀籠益子 「滝」8月号〈滝集〉 2011-08-25 05:20:49 | 日記 「不如帰」が読めなかった。「時鳥」には何と異名の多い ことか。そんな事から本はかなりの数であるらしいと思っ た。東日本大震災に遭い、やっと本が本棚に収まり、整然 と並んだ中にはみ出している写真集。思えば一度片付け、 4月7日の余震でまた片付けはふりだしに戻ってしまった。 片付ける気が失せ、しばらく放っておいたのかもしれない。 五月中旬に渡って来て「てっぺんかけたか」と鳴く声が、 あの日からの空間を演出する重要な小道具として配された かと思う。季語の熟知が成した句。(H)
穏やかに一日終りぬ夕牡丹 三品知司 「滝」8月号〈滝集〉 2011-08-24 20:20:11 | 日記 穏やかに過ぎた一日。まだ充分に明るい庭に豊麗な牡丹が 咲いている。花の王者ともいわれる牡丹が「家が一番」と言 っているようである。何事もなく過ぎる一日のありがたさを 震災によって思い知ったばかりだ。(H)
すべりひゆ過去へつながる鉄路かな 加藤信子 「滝」8月号〈滝集〉 2011-08-23 21:23:08 | 日記 線路は前に進むためのものと思っていたが、3月のあの日、 たくさんの人達があっという間に前進を阻まれた。そしてし ばらくは思い出という過去につながる鉄路を必死のおもいで 探していた。乾いた土を這うすべりひゆにはなりたくない。 本当に探したいのは前進するための線路なのだから。(小林邦子)
篝火や卑弥呼の里の青蛙 今野紀美子 「滝」8月号<滝集> 2011-08-22 21:22:19 | 日記 古代史の中でも最大のヒロインの里の青蛙。灯に集まる虫 の捕食に来ているのだろう。濡れた青蛙がオレンジ色の灯に 水掻きを透かしている。篝火がその時代にマッチして、静謐 を感じる。(H)