「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

折鶴の翔び立つかたち初時雨 小林邦子

2020-01-16 05:01:19 | 日記
 「初時雨」は、立冬を迎えて、今年最初に出会う「時雨」のことだが、単に時期を思わせるのではなく、「初」の一字の華やぎのようなものに「時雨」の閑寂を纏う季語。「折鶴の翔び立つかたち」に、静かな躍動感のようなものが巧みに呼応を成している。外の景を詠まれることの多い季語だが、少し寒いと感じて暖かな飲み物が欲しくなりコーヒーの沸くのを待ちながら、一人、自室に手慰みに鶴を折る。嘴を作り、翼を広げて、何だか華やぐテーブル、そして心、寒さに向かう元気も出てきて出掛けてみようかと思ったところにザーと音をさせて初時雨。誰かを思い、何かを願って折った鶴だとしても、暗く侘しい感じのしない前向が思われる句だった。(博子)

コメントを投稿