「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

揺り椅子に残るぬくみや多佳子の忌 鈴木幸子

2021-09-24 03:19:26 | 日記
誰かが掛けていた揺り椅子に触れている。その「ぬくみ」と橋本多佳子の忌日の組合せ。忌日季語は季重ねで詠まれることが多いが、ドキリとするような多佳子自身の「をんな」を詠んだ句を前面に据えた詠みかと思う。「ぬくみ」の肌感覚に男性の存在を思ってもいいのだろう。揺り椅子だからこそ、膝まづく体制で少し前まで一緒に過ごした嬉しい時間と、帰ってしまったという事実の余韻が切ない。会ったばかりなのにもう淋しいのだ。「そんな頃もあったなぁ」と多佳子の忌日に振り返る作者の恋かと思ってみた。
「雪はげし抱かれて息のつまりしこと 橋本多佳子」
「雄鹿の前吾もあらあらしき息す 橋本多佳子」
そんな多佳子を
「骨までもをんなのかたち多佳子の忌 阿部知代」
と詠んだ句もある。(博子)

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