煮凝りがプルンと揺れた。それは火球が落ちた振動によるものだ。そう言い切る発想の柔軟さ、飛躍の大きさもさることながら、残る余韻に痺れた。火球は流星が隕石となって地表に落下したものを言い。どこかで起きているかもしれない稀な現象。煮凝りの揺れの描写は、家庭の冬の台所から、火球の落下した所まで地続きの地球という星に暮らしていることの再認識と、地球も宇宙の中の星の一つだという大きな景を広げて、煮凝りを見ている作者に戻ってくる。手元を書いたら、遠くを書いて景を広げる俳句の手法は、感性こそがその広がりを拡大させるのだと思い知った。一句一章で一気に詠まれた発見の句は、「か行」の韻も又、功を奏している。(博子)