技量とか、集中力とか、創出力とか大切だと思う。しかしそれですべてが決まるわけではないことをこのアルバムは教えてくれる。
収録時間3時間内という条件で、テクニカルにもしくは程度を上げるという選択行為ができないところで生まれたアルバム、だから最高の出来栄えではないと思う。デュオの研ぎ澄まされた、もしくは選び抜かれた演奏ではないと思う。
しかし縁があってその演奏を聴くことは、批評的な高みに自分をおくこともなく、軽井沢のスタジオにいるようなぬくもりで、このアルバムに接することができた。
「and we met」というとても気持ちのこもったタイトルのアルバムを私たちはきちんと受け止めなければいけないと思います。
1曲目、ピアノの独走から始まるプロローグがその気持ちすべてを伝えます。ピアノに向かいそこからメロディを紡ぎだすピアニストが、ピアノの前に座っているのが目に浮かびます。ですからそのプロローグをあえて入れてベースが入ってくるインリズムを作ったのも納得できてベースの入った“emily”がこれ最初というほどうまく二人が並走することに驚きます。
2曲目このピアニストがスィンギーな4ビートも持っている位置にいることをがわかりますし、それに森さんが気落ちのよいフォローをしているのが、きっと山口さん気持ちよく弾いているだろうと思います。
実はこのアルバム、ピアニストの山口さんからめぐってきたもので、お手紙の写しもいただいて、とてもこのアルバムが出来上がった喜びが伝わります。
3曲目“someday my prince will come”特徴なのでしょうあくが少ない(これは批判ではない)ピアノに始まって、ですから森さんのベースがとてもいい感じで特徴が表現で来て素敵な演奏です。
4曲目ですからなんだか人を押しのけてピアノを出す人とは思えないのですが、とてもそれを感じると、フレーズがやさしい、とても丁寧にメロディを説明してくれるような感じです。
5曲目はこのアルバムのためのオリジナル、“and we met”はいかにも作者の気持ちがこもっった曲、ピアノの出だしなど思わずビル・エバンスとジム・ホールのデュオ・アルバムの出だしみたいに感じます。
森さんのベースについても書いておかなければいけないでしょうね。実は彼のベースパターンがあまり得意ではありませんでしたが(このアルバム森さんつながりでいただいたのに)今回はとても気持ちいい、この曲のソロいいです。
6曲目はブルーベックの“in your own sweet way”この曲をこう始めて、ですからこのピアニストの気持ちが伝わるというか、ですからそのあと森さんのベースソロが毅然と表現をだしてなかなかでした。ただしフェードアウト、ここら辺んが3時間ではのところなのでしょうがよいところがアルバムになったというところでしょう。
7曲目“ stella by starlight”も人柄が出ているのだろうと思う演奏、もうちょっと激しくないと印象を焼き付けないのではなどと思う面もあるけれど、そこがピアノ個性のよいところでしょうか。
最後は“what a wonderful world”でこれも人柄でしょうか、大石さんも弾いていますが均衡のとれた感覚の方だと感じます。
いただいたアルバムには山口氏のお手紙が添えられていましたので、こちらからもこの感想をお送りしたいと思います。
山口氏も森氏もこのアルバムを録音した時が還暦になった時だそうで、ジャケにも還暦祝いを兼ねた録音と書いてありました。
そうこの録音後すぐに、私もそうなったわけで、このアルバムの日本タイトル~出会い~ ということを、もう一度そうですが嬉しく思うのです。
and we met / Yasuichiro Yamaguchi & Yasuhito Mori
山口泰一郎 (p)
森泰人 (b)
1. emily
2. sweet and lovely
3. someday my prince will come
4. someone loves me in somewhere
5. and we met
6. in your own sweet way
7. stella by starlight
8. what a wonderful world