
海洋の話が好きでDVDをみたし、ドキュメンター作品の本も読んだ。
海洋物が好きだからと別のDVDを借りたら、この前読んだ「狂人たちの世界一周」の無寄港世界一周のレース、ゴールデン・グローヴ・レースを題材にした映画だった。
サンデータイムズ社が企画した1968年に開催されえたこのレース、9人が参加し8人が脱落した。
映画は優勝したイギリスのロビン・ノックス=ジョンストンが主人公ではなく、レースに参加したドナルド・クロスハーストという人が主人公。このクロスハーストを演じたのが「英国王のスピーチ」のフリン・ファースト。監督は「博士と彼女のセオリー」のジェームズ・マーシュ、スタッフは素晴らしいけれど、題材としては重くなるだろう。
というのもレースでは、完走者がロビン・ノックス=ジョンストンただ一人で、この映画の主人公ドナルド・クロスハーストは一番の悲劇人になるからだ。
エレクトロにクスの会社を営むドナルド・クロスハーストは、非常にポジティヴな性格で、自分の開発品の機材の販売に、このレースが利用できると考える。会社はかたむいていて、家族を養ううえでも大きな賭けにでる。ヨットに素人なのに前向きに挑戦をはじめ子供3人のいる家庭を納得させレースに参加する。
そして長い不慣れな航海に変調をきたしていき、悲劇に繋がっていく。
本の方はメンバーがたくさんだったけど、こちらはその一人が対象だからわかりやすい。ただ相手は悲劇の人と解っているのでそちらはつらい。本では読み取りずらい主人公の苦悩が伝わる。前向きな人間が、すべて壊されていくことが描かれる。
この映画単に悲劇をえがいているわけではなく、壊れていく主人公が最後にたどり着く心境を描いたもの。
公開された映画の間違ているところは、その邦題。「喜望峰の風にのせて」これじゃ伝わらない。
原題は「THE MERCY」 慈悲という意味。邦題を付けた人はこのタイトルがついた理由を知っていたのだろうか。
ピーター・ニコルスの書いた「狂人たちの世界一周」のさいごのページ最後の文章はこうである。それは亡くなったクロスハーストが船に残したログブックに残した最期の言葉。
「これは慈悲である。」
この映画で知ったことでうれしいことが、エンディング・ロールでながれた。
優勝したロビン、ノック=ジョンストンは優勝賞金をクロスハーストの遺族に贈った。
ツタヤ 採点 3.15 採点 3.2