しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

「奥の細道」名月や北国日和定なき (福井県敦賀)

2024年09月13日 | 旅と文学(奥の細道)

名月の日に、まんまるい♪お盆のような月を・・・
見ることができれば、美しさや、大きな月に感動される。
薄さえ名画のように見える。

でも、中秋の名月は雨の夜が多い。
今でも、観月会の会場は雨を前提に設営していることが多い。

 

・・・

「超訳芭蕉百句」 嵐山光三郎  筑摩書房 2022年発行

「中秋の名月」なのに雨が降ってきた。
雨が降ろうが、見えない「名月」を見てしまうのが芭蕉の目玉である。

名月や北国日和定なき

(中秋の名月の夜だというのに、雨となり、北国の天候は、変わりやすいなあ。)

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旅の場所・福井県敦賀市   
旅の日・2015年8月4日                 
書名・奥の細道
原作者・松尾芭蕉

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「わたしの芭蕉」 加賀乙彦 講談社 2020年発行

名月や北国日和定なき
今夜は中秋名月の日である。
宿に泊まっても前夜は晴れて満天の星に満月が輝いていた。ところが雨が降っている。
やれやれである。
北国の天気は変わりやすいと気がつき、苦笑しつつ、雨音を聴いている芭蕉の姿が目に見えるようだ。
ところで、見ることができなかったのは名月だけではなかった。

「月のみか雨に相撲もなかりけり」

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「芭蕉物語」  麻生磯次 新潮社 昭和50年発行


十五日は、宿の主人の言葉の通り雨であった。

名月や北国日和定き

今夜こそは仲秋の名月である。
ところがあいにく雨だ。
昨晩宿の亭主が、北国日和はあてにならないといったが、なるほどその通りだ。
妙なものであると、がっかりしながらも、亭主の言葉に狂いがなかったのを興じているのである。
期待はずれを必ずしも悲観しているのではない。
当然のことのように、さりげなく即興的によみだしたところに、一種のユーモラスな気持が託されている。


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「日本の古典11松尾芭蕉」 山本健吉 世界文化社 1975年発行


十五日の名月の日は、亭主の言葉にたがわず雨が降った。


名月や北国日和定なき

(今こそ名月と、楽しみにしていた期待が外され、雨となった。なるほど北国日和は変りやすいことよ。)

十五夜の月見は敦賀でと、芭蕉は心づもりにしていたのである。
明晩もお天気だろうかと、あるじにきくと、越路のことだから、明日のことはわからないという答えであった。
あるじは玄流という俳人であった。 
あるじに酒をすすめられ、その夜は気比の明神に参詣し、句を作った。
翌日は、亭主の言葉にたがわず雨が降った。
そしてよんだの が「名月や」の句である。雨名月の旬である。
しごくあっさりとよんでいるから、句意についてはかくべついうことはない。
とくに名句というわけではないが、いやみはない。

このあたりで芭蕉が作った句は、ほとんど月の句ばかりである。
月が見えたら見えたで、なかったらなかったで、月の句を作っている。
名月の前後には、やはり月の句をよむことが、
その土地のたちに対する旅人の挨拶だったのである。


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