労働せずに、
大学生が小銭を手にしようと思ったら、普通三つの方法があった。
質屋へ腕時計等を預ける。
本を古本屋に売る。
パチンコに行って儲ける。
このうち、
質屋は、学生は夏休み前の帰省旅費に当てるため。で頻度は少ない。
パチンコ店は、儲けるつもりで店に行き、損して出る。
そういう訳で、一般的には古本屋となる。
古本屋は、二通りの利用法があり、二通りともよく利用していた。
本を安く買いに行き、本を高く売りに行くところだった。
窮屈な店内は、本棚が天井まで届き、お店に使用人はなく店主さん一人で賄っていた。
古本屋には本屋で味わえないアカデミックな雰囲気があった。
店内には、なんともいえない古本の臭いがしていた。
本を探す楽しみは、本屋とは違っていて、見つけた本に興奮することもあった。
記憶をたどれば、社会人になってからは、
本屋には行くが、
古本屋には一度も入ったことがないような気がする。
給料を手にして贅沢になったのだろう。
今は、読むのはすべて図書館の本で、再び貧しい生活をしている。
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「ラジオ深夜便」 NHK 2023年7月号
本を友とし、孤独を癒やす 五木寛之
書店巡りもよくします。
昔は日に一度、今は二、三日に一度といったところでしょうか。
さまざまなジャンルの本を眺めながら歩くのは観光地を巡っているようで、
とてもおもしろい。
早稲田大学の学生時代は極貧の生活をしていましたが、
それでも本は読んでいました。
図書館にも行きましたし、友人から借りたりもしたものです。
「高いなあ」と思いつつ買うことも多かった。
買った本はカバーをかけて帯を外さずになるべく丁寧に読み、
読んだあとは古本屋に持っていきました。
昔の古本屋は今と比べて、とても良心的な値段で買い取ってくれたので、
本は買うのも高いが、売るのも高く売れる時代でした。
古本屋で値段の査定をしてもらうとき、
「このくらいにならないかな」
とこちらが予想している値段とぴったり同じ価格で買い取ってもらえると、
やった!
などと大喜びしたものです。
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