しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

占守島 「8月17日、ソ連軍上陸す」① 

2018年03月01日 | 占守島の戦い
8月17日、ソ連軍上陸す 大野芳著・新潮社・平成20年発刊 より転記

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8月9日払暁、ソ連軍は、国境を越えて北満州、朝鮮北部、南樺太へ攻めてきた。
そして同日、大本営は、第5方面軍司令官・樋口中将に対して、国境方面所在の兵力をもって対ソ作戦の発動を準備するよう命じる。
第5方面軍は第91師団に戦闘準備を発令する。師団から旅団へ、旅団から大隊へという連携をみれば、北千島にソ連軍が絶対に来ないと断言できる保証は、どこにもなかったといえる。


8月14日夕刻、師団司令部は,隷下の大隊長に命令した。
「明日正午、重大な放送があるからもれなく聴くように」


終戦の聖断という大きな衝撃の中で、堤師団長がとくに考慮したことは次の二点である。
「第一は北千島の将来はどうなるかという問題である。これまでのいきさつから考えて、北千島は疑いもなく、一応米軍の領有するところとなろう。
したがって、遠からず米軍接収員がやってくると思われる。その際は世界に還たる精強なる大陸軍の最後を飾るにふさわしい堂々たる態度に出よう」


17日午前10時、
堤師団長以下40数名の部隊長は、師団作戦室に集まった。室内は異様な雰囲気につつまれた。
師団長は、終戦の将兵の心がまえ、終戦処理全般、一切の築城作業の中止を命令した。
「万一、ソ連が上陸する可能性がないでもないが、その場合は戦闘を行わず、以後の命令指示にしたがって行動せよ」と指示した。
席上、「対岸から砲撃を受けた」という報告もあったが、威嚇または演習とみなされた。
堤は言葉をつぎ、
「国端地域の村上大隊は、武装解除の軍使が来る可能性が高い。ごたごたが起こらないよう注意せよ。軍使が到着したならば即刻、連絡するよう配下に徹底させておけ」命じた。
この時、
「自衛のための戦闘を妨げず」と方面軍からの指示が伝えられた。

8月17日夕刻、
戦車第二中隊のの駐屯地は平穏、静謐に包まれていた。
ひさしぶりに飛行機の音がした。
「・・・?」
やがて、消えた。
歩兵第282大隊本部では、この機影を見ていた。
爆弾を一発落として行った。
「終戦だというのに何だろう。それにしても米軍機とは音が違うな」と話していた。



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