ねむたいむ

演劇・朗読 ゆるやかで懐かしい時間 

ジェントル・ゴースト

2011-04-20 | Weblog
ポプコーンの降る街に出演してくれていた女優さんから、通じるものがあるのでは?と聞かされて、それまで知らなかった朱川湊人の作品を読んでみた。

「かたみ歌」は、昭和の香りのする商店街を舞台に、地味に生きている人々のなかに、ふと紛れ込んでくる特別な出来事を描いた短編集だ。中の「栞の恋」は、古い本に挟まれた手紙をきっかけに、特攻隊で死んだ青年と時空を超えて文通する女の子の話。
あ、ジャック・フィニィの「愛の手紙」だ、と思った(打ち明けると、私はジャック・フィニィがかなり好き)。

何作か読んだ朱川湊人の作品では、「赤々煉恋」の<いつか、静かの海に>と、「かたみ歌」の<夏の落とし文>、そして「いっぺんさん」の<いっぺんさん>がよかった。どの作品にも、孤独で幸薄い少年が出てくる。ちっぽけな男の子が、一生懸命大切なものを守ろうとしている。私はそういう男の子にめっぽう弱いのだ(笑)。
「いっぺんさん」では、話の半ば頃でもう仕掛けも結末もわかってしまうのだけど、やっぱりうるうるしてしまった。

朱川湊人の作品に登場する人物は、卑小だったり、あくどかったり、残酷だったりもするのだが、そういう人たちを、作者は愛しくあたたかい目で描いている。
そして、ジェントル・ゴースト(やさしいゆうれい)の存在。
考えてみたら私の書くものもジェントル・ゴーストだらけだ。
そういう点も、通じるところなのかも、と思ったりした。

ジェントル・ゴーストは、やってきて欲しい人の前にやってくる。
それは愛であり、願いであり、救いであり、祈りだ。
スーパーマンやスパイダーマンみたいなものだ。
...ちょっと違うか。








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花のもとにて

2011-04-16 | Weblog
毎年、桜の季節になると、出不精な私を花見に誘ってくれる友人がいて、今年は、京都の西山にある勝持寺というお寺に行った。近くには、大原野神社もある。
一時間に一本のバス。バス停から歩いて約一キロ。
その日、花の寺の100本の桜は満開だった。
花びらは風にはらはらと舞い、髪や肩に降りかかる。人出は少ない。

「花のもとにて、春死なん」と、西行。
「桜の樹の下には、屍体が埋まっている」と、梶井基次郎。
儚く美しいものには、憧れと不安と恐れと祈りが、入り混じっている。

お寺や神社に行くと、信仰心のない私は、いつも参拝する友人を後ろのほうで見ているだけなのだが、今年は初めて掌を合わせた。
福島・双葉町の中野さん、劇団の方たち、どうかどうか、ご無事で。

昔読んだ「ひろしのしょうばい」という童話。
ひろしという小さな男の子が、桜の季節に亡くなり、ひろしは、天国で商売をすることになる。ひろしが選んだ仕事は、大きな扇風機のようなものを一生懸命回して、桜を散らせること。ひろしは、自分が死んだことを悲しんでいるお父さんやお母さんお姉さんに、自分が散らせている桜吹雪をみせて、「きれいねえ!」と言ってもらいたいのだ。
今、手元に本がないからはっきりと思い出せないのだが、たしか、そんな話だった。読み終わった時、号泣してしまった記憶がある。

家の近くの公園の桜も大半は散って、今はもう葉桜だ。
桜が散った後には、薄緑色のつやつやとした葉っぱが勢いよくでてきている。
葉は茂り、硬く緑を濃くし、次に色を変え、あたりを赤く美しく染めて、やがて枯れて散っていく。
次の年の花は、前の年の花と決して同じものではないのに、また、当たり前のように春が巡ってくると、思ってしまう。

今年の桜は、今年だけ。
大病から回復した友人は、どんな思いで100本の桜をみていたのだろうか?




















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「モクレンの探偵」、始動です。

2011-04-07 | Weblog
マンションの敷地内にある白モクレンの花が、今、満開だ。
白モクレンはマグノリアとも呼ばれている。ぽってりとした乳白色の花びらに隠された花芯はほの紅い。つぼみの頃はさらに幻想的で、夜みると、暗闇に灯された幾本ものロウソクにも、飛び立つ前の白い鳩の群にもみえた。

「モクレンの探偵」という作品を書いた。
ダンサーで俳優のヤザキタケシさんと、公演を企画してから1年。
先日、キャスト・スタッフが集まって、顔合わせを行った。
7月16日・17日の本番まで、このメンバーで、苦しい時や楽しい時を共有する。
準備段階が長くて、本当に始まるんだろうか、なんて思っていたけれど、やっと実感がわいてきた感じだ。

自分がひとつの公演をプロデュースする。なんだか信じられない。
子供の頃から人と関わるのが大の苦手だった。
一人でもくもくと「書く」ことだけが、自己表現の手段だった。
演劇に関わるようになってからも、ずっと台本を書くことだけに目を向けていた。
その「書く」ことから一歩踏み出して、「読む」ことをはじめて、三年がたつ。
リーディングユニットの「星みずく」を立ち上げたのも、ひとつには、人前で読むことが恐怖だった小学校の教室の悪夢を追い払いたいためだった。
それがいつしか読むことが楽しくなっている。
人と話したり、企画したり、を、曲がりなりにもやっている。

演じることはまだまだ未熟だが、今回、ベテランや若い人たちに混じって、厳しく楽しく挑んでいきたいと思っている。

「モクレンの探偵」HP製作中です(4月下旬公開予定)。
チラシも、もうすぐ出来上がります。
稽古状況も、追々、アップしていきますね。
お楽しみに!










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