ねむたいむ

演劇・朗読 ゆるやかで懐かしい時間 

ジェントル・ゴースト

2011-04-20 | Weblog
ポプコーンの降る街に出演してくれていた女優さんから、通じるものがあるのでは?と聞かされて、それまで知らなかった朱川湊人の作品を読んでみた。

「かたみ歌」は、昭和の香りのする商店街を舞台に、地味に生きている人々のなかに、ふと紛れ込んでくる特別な出来事を描いた短編集だ。中の「栞の恋」は、古い本に挟まれた手紙をきっかけに、特攻隊で死んだ青年と時空を超えて文通する女の子の話。
あ、ジャック・フィニィの「愛の手紙」だ、と思った(打ち明けると、私はジャック・フィニィがかなり好き)。

何作か読んだ朱川湊人の作品では、「赤々煉恋」の<いつか、静かの海に>と、「かたみ歌」の<夏の落とし文>、そして「いっぺんさん」の<いっぺんさん>がよかった。どの作品にも、孤独で幸薄い少年が出てくる。ちっぽけな男の子が、一生懸命大切なものを守ろうとしている。私はそういう男の子にめっぽう弱いのだ(笑)。
「いっぺんさん」では、話の半ば頃でもう仕掛けも結末もわかってしまうのだけど、やっぱりうるうるしてしまった。

朱川湊人の作品に登場する人物は、卑小だったり、あくどかったり、残酷だったりもするのだが、そういう人たちを、作者は愛しくあたたかい目で描いている。
そして、ジェントル・ゴースト(やさしいゆうれい)の存在。
考えてみたら私の書くものもジェントル・ゴーストだらけだ。
そういう点も、通じるところなのかも、と思ったりした。

ジェントル・ゴーストは、やってきて欲しい人の前にやってくる。
それは愛であり、願いであり、救いであり、祈りだ。
スーパーマンやスパイダーマンみたいなものだ。
...ちょっと違うか。








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