ねむたいむ

演劇・朗読 ゆるやかで懐かしい時間 

古道具屋さん

2012-04-30 | Weblog
初めて古道具屋さんに興味を持ったのは高校生のときだ。
高校で一番勉強の出来なかった男の子に誘われて、京都の古道具屋さんめぐりをした。
とても暑い日だった。彼は、テストの成績はいつもビリだったけど、頭が悪かったというのではない。美術部と文芸部を掛け持ちしていて、不思議な絵や詩を書いていた。
あとでわかったことだけど、それは状況劇場のチラシや台本によく似ていた。
古いものといっても骨董品ではなく、時代ズレしていて不思議なもの。そういうものに彼は興味を持っていた。ランプシェード、キセル、福助の人形、ガラス瓶、誰が描いたかわからない絵、何かの部品…。
彼はまた不思議なパフォーマンスもしていた。誰のアパートの部屋だったか知らないけど、そこを一日借りて、自分の描いた絵を張り巡らし、ぶつぶつと低い声で詩を朗読したりしていた。その時の観客は、わたしだけだったと思う。
当時の私は子供で、そういう彼をよく理解できていなかった。
変わった人、あまり付き合わないほうがいいよ、というクラスメートの言葉を聞いて、本当はちょっと怖かったりした。怖かったけど、誘われるとついて行った。
彼は、私がそれまで知らなかったことを、たくさん教えてくれた。
サド侯爵や澁澤龍彦やロートレアモンや四谷シモン。
高校を卒業して、大学など見向きもせず、彼は九州に行った。
看板屋になるんだと言っていた。
その後何十年かたって、彼はりっぱな版画集を出すような画家になった。
でも、そうなった彼は、もう私の知らない人だ。

川上弘美の「古道具 中野商店」の古道具屋さんを読むと、そのころのことをちょっと思い出す。とても好きな作品で、川上弘美のなかでは一番好きかも知れない。
でも最終章は余計な付け足しで、私はいらないと思う。
なんだ、そうなるのねと、思ってしまった。

ところで、私ごとですが、昨日、古道具屋さんを舞台にした作品を書き上げました。
まずは一人で「乾杯!」です。








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