ねむたいむ

演劇・朗読 ゆるやかで懐かしい時間 

sistersを観て

2008-08-22 | Weblog
以前から気になっていたのだけど、迷っていて、でも、やっぱり観たいと思い、急きょチケットを買った。残席が少なかったせいか、S席なのになんだか後ろのほうで舞台から遠い。それでも2時間20分休憩なしの舞台があっという間だった。はじめから終わりまで目を逸らすことがなかった。自殺や近親相姦や児童虐待と、暗くて重いストーリーだ。にもかかわらず美しく静謐な舞台だった。
ホテルのひとつの部屋が、ドアの開け閉めによってそのまま別の部屋になり、別の時間・空間になる。場転、暗転がほとんどなく、息を継ぐ間もない。登場人物は複数であっても、会話は常に1対1なので、二人芝居を重ねてストーリーを構成していくような不思議な感じだった。美しく幻想的だったのは、突然透けて見えるバスルーム。そして終盤の、舞台に溢れる水。そのなかを、流れてくる夥しい数の真っ赤な彼岸花。水のなかに横たわる二人は、死を象徴しているのかもしれないと思った時、私は一枚の絵を思い出した。ラファエル前派の画家ミレイの、「オフィーリア」という絵だ。花に埋もれて川の流れに横たわっている死せるオフィーリアは、幻想の世界を求めて目に見える世界を捨てたラファエル前派の象徴のように描かれている。
松たか子の演技も美しく静謐だった。静かな狂気。危うくてうわの空で不安定。不自然になる一歩手前のような間のとり方も、すべて計算されたような演技だった。
私は前日に偶然宮部みゆきの「チョコレートコスモス」という本を読んでいて、それは二人の天才的な若い女優の物語なのだけど、そのうちの一人を松たか子と重ねていたので、ますます彼女から目が離せなくなってしまった。
暗くて重い芝居は苦手だ。でも、暗くても重くても、こんなにすばらしくて美しければ話は別だ(画像は、ミレイの「オフィーリア」です)。