哀しい記事

どんな死も哀しい。
地震や事故や戦争や政権争いに巻き込まれた人たち。
記事を読みながら、それぞれの犠牲者たちのその時の気持ちや生きてきた道を思うと、たまらなくなる。
２月２５日の朝日新聞の夕刊にあったこの記事を読んで、私は、あまりの哀しさに泣いてしまった。

早朝、大阪の宗右衛門町の路上で、ゴミを掃除していた女性(60～70代)が、ごみ収集車の回転ローラーに上半身を巻き込まれて死亡した。
ごみを捨てたいという女性に、収集車の作業員(24)は了解し、いったんローラーを止めた。そして女性がごみを投入し再び掃除に戻ったのを確認してから、再びローラーを動かした後、しばらくして女性が挟まれているのに気がついたのだという。
捨て忘れたゴミをまた捨てようとしたのだろうか。何か間違って捨ててしまって慌てて取り戻そうとしたのだろうか。
宗右衛門町は大阪の歓楽街だ。女性は、毎朝のように路上に捨てられた煙草の吸殻を掃除していたという。飲食店のゴミを回収する収集車の青年とは、顔見知りだったのかもしれない。笑顔で挨拶した後の事故だったのかもしれない。60～70代だと想像される年齢しかわかっていないのなら、近くに知り合いのいない一人暮らしの女性だったのかもしれない。
連絡を受けた警察官と近くにいた飲食店の従業員が駆けつけると、女性は収集車のローラーに挟まれ、ほうきがそばに落ちていたそうだ。
そばにほおきが落ちていた、というところで私は泣いた。
この記事を書いた記者も、きっと、そのほうきに強く感情を揺さぶられたのに違いないと思う。記事は三面ではなく、一面に掲載されていた。

５００字ほどの記事の行間に、この事故に関わった人たちのそれぞれの哀しい思いを、見たような気がした。