ねむたいむ

演劇・朗読 ゆるやかで懐かしい時間 

やわらかな紲(きずな)

2007-06-09 | Weblog
漢字って、おもしろい。たとえば「忘」は心を亡くすと書くし、「忙」も心を亡くすと書いている。忘れてしまうことも、忙しすぎることも、心を亡くしてしまうことなんだなと、納得したりする。
「きずな」は絆と書くが、紲とも書く。糸偏にこの世とかあの世の世。人と人を結び付けている赤い糸のようなものを思い浮かべる。
人と人の結びつきはいろいろある。血のつながりははじめから決められているもので、変えようもない。結婚も法律によって守られている結びつきだ。でも、そうじゃない場合、恋愛だったり友情だったり尊敬だったり説明がつかないものだって多い。人と人だけじゃない。人と動植物、人ともの。すべてにおいて、紲はなりたつ。
私は作品によく、他人同士の小さな共同体を登場させる。アパートだったり下宿屋だったり喫茶店だったり。登場人物はそれぞれが一人のさみしい人間で、それぞれの結びつきも、ほっておけはほどけてしまうようなはかない結びつきだ。でも、はかないからこそ、その結びつきにはやさしさが介在しているように、私には思える。ほっておけば風化してしまう関係は、それぞれが相手を思いやることで細々と続いていく。花にお水をあげるように、言葉を手紙を笑顔を送る。
好きな人は忘れない。大切に思えば、相手もきっと思ってくれている。紲はやわらかくても結び目はなかなかほどけない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする