ねむたいむ

演劇・朗読 ゆるやかで懐かしい時間 

ストレスもスパイス

2008-09-04 | Weblog
二ヶ月に一度、栗林先生の外来を予約している。30分間、先生を独占できる。患者の特権だ。今回は、緊張や恐怖を和らげるにはどうすればいいかという話をしてきた(ちなみに栗林先生は精神科ではなく内科のお医者さんです)。
ここでちょっとおさらい。交感神経は、人が興奮状態にあるときに働く。たとえば闘ったり、あるいは逃げたりする時なんかに。闘ったり逃げたりというのがおかしい。まるで反対のことなのに。どっちも「とうそう」と、先生が言う。
とうそう(闘争)ととうそう(逃走)、英語の綴りもFight&Flightと似ている。で、その時、身体は緊張状態にある。心拍数は増えて、血圧は上がっている。アドレナリン出まくり。そういう状態は能動的でいい状態なのだけど、つねにそうでは身体に支障をきたす。走り続けた人には休憩が必要。緊張と緩和。それを上手にコントロールできるようになれば、「ストレスも人生のスパイス」と、先生は言う。
ふーん、心配してドキドキ、期待してドキドキ、興奮してドキドキ、不安でドキドキ、うれしくてドキドキ、怖くてドキドキ。人って、よくても悪くても、極まればドキドキするのだ。不思議。

先生と私の間で、このところこんがらかってしまっていた、二人のシモーヌ・ヴェイユ(SimoneweilとSimoneveil)の、人違い話の糸を解いてすっきりし、「闘争と逃走」の、こちらは違うようで同じ、不思議なドキドキの話に納得し、「ストレスも人生のスパイス」で、私も緊張をコントロールできそうな気になって、気がつけば30分。何も書かれていないカルテに、先生はあわてて「変化なし」の一言を書き、診察時間が終了する。
私は哲学気分の実り多き時間に大満足。「今日はうまくまとまりましたね、先生」と、うきうきと診察室を後にする。残された先生は、困ったような、諦め顔で、「まあ、あの人はげいじゅつ家だから」と、ひとりごちているかもしれない。
ところで先生、私の病名は何になっているんでしょう?
(池の奥に建っているのが病院です)。