ねむたいむ

演劇・朗読 ゆるやかで懐かしい時間 

秋の蝶

2005-11-30 | Weblog
嵯峨野に行ってきた。宝厳院、落柿舎と辿る。紅葉が美しかった。見上げれば青空をバックに赤黄朱のグラデーション。寺のそばを流れる小川にも無数の落ち葉。葉は重なり漂いながらひらひらと光の川を流れて行く。川底に影が写る。影は円い。いくつもの影がくっつきあって流れる様は、舞う蝶のようだ。
ふと、自分の心のなかにもこんな川があるような気がしてくる。落ち葉を運び、光を映し、何もかもを留めようもなく、ゆらゆらと流していく小さな川。
葉は秋に落ち、春に芽吹く。木は毎年新しい命を生みだしている。人の身体の細胞も、また生まれては死んでいく。落葉や芽吹きに自らの命を重ね、だからこその愛しさで、人は自然をみつめるのだろうか。
お寺のパンフレットの最後に「山水ニハ得失ナシ、得失ハ人ノ心ニアリ」とあった。
視界から人が消える。誰もいない。お堂にしんと座って、私はただ庭を見つめる。心の中を流れる紅葉を、ただ見つめる。