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蝶になりたい

いくつになっても、モラトリアム人生。
迷っているうちに、枯れる時期を過ぎてもまだ夢を見る・・・。

透明人間になった宇宙人

2013-01-18 | 思い出

さて、今日も真っ白な半紙に、太い筆に墨をたっぷりつけて・・・
どんな文字を書こう・・・

教官は、今日も甲斐甲斐しく、老夫の世話を焼き、今は、ま隣で、教官の妹の世話を焼いている。
二人が出勤したあとは、ちょっとした時間の後に、わたしが出る番が来る。

この墨つけタイムでは、まだ、外は、真っ暗。
しばらくすると、しらじらと空が白み始め明けてくる。
ああ、この風景、光景。
パリのアパルトマンの窓から、毎日、見た色の移り変わり、グラデーション。

夜中に起き出し、明け方まで、ごそごそ、・・・さらに、ブログを書いたり、当日の出歩き予定を考えたり。
結局、部屋を出るのは、午前11時ぐらいになってしまい、また、一旦、引き返す。
さらに、ぐずぐずして、やっと出るのは、お昼の12時。

こんなに遅く出るのに、帰ってくるのは、異常に早い。
夕方には帰ってくる。
早い時には、4時ぐらい。
ちょこっと外に出ただけだ。
帰ってくると、スーパーや総菜屋で買ってきた食品をもそもそ食べ、
これではいかん、翌日のスケジュールは、その前日には考えておこうとガイドブックを開いたまんま、目は、とろん。
とりあえず・・・調べ物の続きは明日にしようっ、と、ばたん、早々に寝てしまう。


何しに、わざわざ遠路パリくんだりまで行っているんだろう?
若い、感受性のピリピリしている時期ならともかく、こんな年になって。

しかも、日本にいる間は、延々、長々と、ぼーっと分厚いガイドブックの上っ面だけを見て、イメージしているだけで、
アタマになんか全然まったく入っていない。
文字は、一字も脳内に浸透していない。
で、現地でガイドブックを必死で読んで、当日、出かける真際に、行き先、行き方を考える。
覚えた内容は、アタマのなかで4時間ぐらいしかもたないので、すぐに帰ってくる。
わたしの脳の記憶装置の電池切れ、バッテリー切れ、気合切れだ。
記憶装置の電池が切れると、思考装置も連動して止まる。
お人形さんになってしまい、ピノキオみたいに、両手両足が、突っ張るように、ピコピコ不自然な動きをし、
疲れて一目散に部屋に帰ってきてしまう。

せめて、いっしょに夕食をとってくれる人がいるといいなあ、と思った。
現地で、ケータイ電話を借りるときにお世話になった、
劇団員の夫(フランス人)と暮らしている、フリーライターの日本人女性と接する機会があった。
わたしは、自分の、活動的でない引きこもり滞在の雑感を述べ、
次の滞在では、彼女に、カンタンなお店の案内を頼もうかと、ちょっと予告めいたことをほのめかしておいた。

わたしは、フランス語は、絶対に出来ることはないと、強く確信したし、
現地で溶け込むことは、ありえないし、
お遊び以外では、
企業駐在員の妻として、日本人グループに入るなりして、現地で居場所、ポジションを得ることもあるだろうが、
わたしの場合は、それもありえない。
自由自在な、旅人、異邦人として、縦横・斜めに飛び回ることも、不可能。
(読めない、話せない、聞こえない、理解できない、ハンデキャップを背負う)
だとすると、現地に、実際は居るけれど、実体は、網の目から零れ落ちている、
誰の目にも見えない、透明人間、異邦人としての、わたし。

だが、言葉以外は、聞こえる。
文字以外は、見える。
人々の様子も、見ることができる。
最悪の場合、なんらかの手段で、人の助けを借りることもできる。
双方向でコミュニケーションを取ることは、できないが、
一方的に見たり、考えたり、予想したりすることはできる。
宇宙人が、恐る恐る、地球人の暮らしに、そおっと入り込んでいるようなかんじ。
見かけは、地球人と同じの、宇宙人。
コミュニケーションさえ取らなければ、自分は、なにも出来ない、わからない人だとは、バレない。

ある意味、これは、日本でも同じようなことが言えるような気がしてきた。

自分が無能だということがバレていない、と思っているのは自分だけで、
じつは、皆、そんなこと、とっくに知っていて、今さらながら、口に出さないだけかも知れない。
しかも、口に出したところで、なんの進展も、効果も、役にも立たないとすると、
無益なことにかける時間が惜しいことだろう。

しかしながら、今まで、わたしは、不思議なことに、
外国で、現地の人に、現地語で、道を聞かれたり、話しかけられたりすることが、けっこう、あった。
馴染み過ぎているのか、息を殺しすぎているのか。
おとなしすぎ、主張しなさすぎ。風景に溶け込みすぎ。

わたしは、宇宙人の立場で、地球を楽しんでいたのだろう。
自分の世界と、目の前にある、別の世界が、同じ空間にあり、同時進行し、
テーマパークの劇場型シュミレーションを体感するよりも、もっともっと、現実に近いものを、
リアルタイムに同じ温度で感じることができて、

わたしの全五感が、とても喜んでいたように思う。

 

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だが・・・
ほんの一年前のことなのに、なんだか遠いような、そうでもないような・・・。
記憶装置自体、劣化の進行が激しい。