常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

なごり雪

2020年02月11日 | 日記
きのうの午後から雪である。一晩、冷え込んで家々の屋根に雪が積もった。予報では明日から気温が上がって、2月としては春のような陽気になるらしい。なごり雪がふと頭をかすめた。こんな雪景色は、今年は見納めかもしれない。いつもの年であれば、こんな気になるのは3月の彼岸のころである。歳時記にあたってみると、名残りの雪には、雪の果と同じで、もうおしまいの雪という意味になっていた。

踏みやすき雪も名残りや野辺の供 去来

なごり雪にはもう一つの思いがある。今かから40年以上も前に唄われていた、イルカのフォークソング「なごり雪」である。「今春が来て君はきれいになった、去年よりずっときれいになった」というフレイズが、何故か心に響いてきた。春に降る雪は、冬が去っていくとともに、淡い恋心を抱いた少女との別れでもある。

この歌は伊勢正三が作曲したフォークソングで、かぐや姫のアルバムに入る昭和の名曲である。1973年にリリースされ、以後、数々の歌手によってカバーされてきた。昭和の時代が、平成を越えて、今につないでくれる歌である。この年、新聞の連載マンガの「サザエさん」が作者の病気で、打ち切りになった年だ。小野田少尉がルバング島から帰還し、磯村尚徳の「ニュースセンター9時」が始まった年でもある。平塚では、ピアノがうるさいということで殺人事件が起こり、コンビニの1号店が開店した。色んな意味で、戦後を抜け出した日本の新しい時代を感じさせる年であった。

季節の区切りに降る雪。同じ雪でも、何かしら記憶に働きかけてくるのは、かつて口ずさんでいた歌を通している場合が多い。40数年前、多分聞いたのは、春の雪が降るなか、車から流れてくるラジオからこの歌を聞いたのであろう。自分の仕事の意味も余り分からないまま、街の中を走り回った日々。この歌は、孤独な心に響いてくるものがあった。
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