常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

冴え返る

2020年02月10日 | 日記
人の感覚は不思議なものだ。あれほど続いた暖冬が、ここ一週間、ほんの一週間ほど続いた寒気に、あの暖冬の感覚が薄れてきている。今週は、いよいよ本格的な暖気が列島を覆うらしい。その時分には、いま感じている寒気は何処かへ失われていくのだろう。それだけに、来る春を想像して楽しむことができるのは、人間が持っている稀有な力かも知れない。

あづさゆみ春になりなば草の庵をとく訪ひてませあひたきものを 良寛

良寛の晩年は病との闘いであった。眼病に加え、下痢と腹痛が襲ってきた。今日でいえば癌を患ったのであろう。晩年になって親しくなった貞信尼に、秋の萩のころ別れ、病が重くなって送った歌である。文政12年12月末、ついに良寛は重体になった。伝え聞いた貞信尼は、良寛の庵に駆け付け、そこに泊り込んで看病を続けた。

かゝれば、ひる夜る御かたはらに有りて、御ありさま見奉りぬるに、たゞ日にそへてよはりによはりゆき給ひぬれば、いかんせん、とてもかくても遠からずかくるれさせ給ふらめと思ふにいとかなしうて

いきしにのさかひはなれてすむみにもさらぬわかれのあるぞかなしき 貞信尼
 御かへし
うらを見せおもてを見せてちるもみぢ 良寛

草庵の死の褥で、師弟はこんな歌のやりとりをするのであった。年明けて1月6日、良寛は帰らぬ人となった。
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