探偵事務所。若い女がたたずんでいる。そこへ男が入って来る。
明菜「(驚いて)あっ、ごめんなさい。勝手に入ってしまって」
神崎「だれ? あっ、もしかして山岡の…。そうだよね! いつだったか、写真を…」
明菜「はい、妹の山岡明菜です。あなたは?」
神崎「俺は神崎。ここで一緒に働いてたんだ。あいつも、こんな可愛い妹を残して…」
明菜「生前は、兄がお世話になりました。今日は、私物を引き取りに来ました」
神崎「そうか。そこだよ。(机を指差す)几帳面だったから、きれいに片付いてるだろ」
明菜は兄が使っていた机にふれる。ドアがノックされて男が入って来る。
稲垣「仕事を頼みたいんだが」
神崎「そうですか、どうぞ」
古びたソファーに座るようにすすめる。座るやいなや、
稲垣「実は、ブラックパンサーの警備をお願いしたい」
神崎「(一瞬、驚くが平静をよそおって)ブラックパンサー?」
稲垣「ダイヤです。いま日本に来ていまして、明日のパーティでお披露目するんです」
明菜「それって、盗まれたんじゃ…」
稲垣が鋭い眼差しを明菜に向ける。
明菜「あ、すいません。以前、兄から聞いたことがあるんです。怪盗に盗まれたって」
稲垣「盗まれたのはイミテーションです。本物じゃありません」
神崎「それで、どうしてここに。警備会社に頼めばいいじゃありませんか」
稲垣「予告状が届いたんです。怪盗ドラゴンからね」
神崎「そんなばかな、彼なら…。いや、ドラゴンは死んだと聞いていますが」
稲垣「それは噂です。死んだという証拠はどこにもない」
稲垣はレトロな封筒を出す。受け取った神崎は封筒から予告状を取り出して読む。
稲垣「この探偵事務所は、ドラゴンと対決したことがあるとか。ぜひ、お願いした」
神崎「(しばらく考えて)わかりました。お引き受けしましょう」
賑やかなパーティ会場。一角には、ガラスケースに入れられたダイヤが展示してある。
明菜「あの、どうして私まで…」
神崎「ごめんね。人手がなくてね。猫の手も借りたいっていうか…」
明菜「私は猫じゃありません。それに…」
神崎「(時計を見て)そろそろ予告の時間だ。君は、何があってもダイヤから離れるな」
明菜「わかりました。ここにいますけど…」
神崎が離れると、突然停電になる。動揺する人々。しばらくすると灯りが戻る。
ケースのそばにいた人がダイヤが消えているのに気づき騒ぎ出す。
神崎が駆け込んでくる。ケースの横で茫然と立っている明菜を見て、
神崎「どうした。何があった?」
明菜「そんな…。(ゆっくり神崎を見て)兄が…、兄がいたんです。そこに(指差す)」
神崎「あいつが…」
<つぶやき>ダイヤはどこへ。そして、怪盗の正体とは。謎が謎を呼んで次回へ続く。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます